PHASE-964【必ず捕まえる】
――…………!?
「ってゴロ太ぁ!?」
「まあその答えに行き着くよな」
「ゲッコーさん。ゴロ太を欲したのはカリオネルの馬鹿じゃなくて……」
「このカイメラという組織が欲したんだな」
「――――ほう」
「「「おおぉぉぉ…………」」」
ゲッコーさん、リンと一緒になって声を漏らす。
俺達の背後にいつの間にか立っていたベルの圧が原因。
三人そろって情けない声だった。
ピシリと大気に大きな亀裂が入るかのような凄いプレッシャー……。
ヒビの入った目の前の強化ガラスが、ベルの発するプレッシャーで粉々になるんじゃないかとすら思えたよ……。
――――。
「組織の詳細を得ることが出来たのは大きかったですね。主殿」
「ですね」
屋敷へと戻り、自室にある応接室で荀攸さんに結果報告。
先生は王様達と一緒にセントラルより離れているので、今回は欠席。
「しかしベル殿の怒りは相当でしょうね」
「まあ、ですね……」
「私はゴロ太殿の存在は知りませんが、主殿のその表情からして、ベル殿にとって大事な存在のようで」
ゴロ太を中心とした世界をつくりそうな程に、ゴロ太のことが大好きだからね~。
――――研究施設から出た後、ミルド領で行動するS級さん達をゲッコーさんが招集。
アビゲイルさんにも協力してもらってネポリスの兵達を動員し、都市内での聞き込みが始まった。
結果としては、白装束の連中が王軍と馬鹿との決戦前に、王都にいる人語を喋る白い子グマの情報が入っていないか。という内容を酒場や宿屋の店主達に聞き回っていたという報告が何件か上がった。
白装束で顔は見せない、しかも喋る子グマってなんだ? と、へんてこな内容だったから店主達もよく覚えていたそうだ。
半年ほど前に施設でやらかしてはいたが、その後もカイメラの連中がミルド領に潜伏していたというのは分かった。
公都と魔術学都市に近い町にも調査を広げれば、特務機関の調べで同じような内容の報告が届いた。
こうなるとミルド領全体で連中がゴロ太に関する情報を得ようとしていたのが窺える。
でもこれらの報告は、全て王軍と馬鹿との決戦前のもので、決着後カイメラがミルド領に潜伏しているかの痕跡はたどれていない。
「それでカリオネル殿は何か知っていましたか?」
荀攸さん、わざわざ馬鹿に対して殿をつけるって律儀だな。と、思いつつ首を左右に振って返す。
「あの聴取で知らないと言いきれるんですからね。間違いなく何も知らないでしょうね」
「でしょうね」
ゴロ太がターゲットとなった時点でベルの逆鱗に触れることになるのは必至。
実際、ネポリスから戻って直ぐに屋敷の地下へと足を向かわせたベルは、殺気を放ちながら馬鹿にまくし立てたからな。
周囲が
でもそれも許されない。
失神しようものならベルが炎で消し炭にすると脅しをかけてたほどだ……。
常に監視をしてくれているデュラハンとなったミランドと、悪戯半分で同行したリンがベルの圧に当てられて、そそくさと退室したのは先日のこと。
その間にゲッコーさんはS級さんだけでなく、俺名義でミルド領内の諸侯に号令を出し、兵を動員させ、羊皮紙に記されていたキノコの回収に動いてくれた。
「ベルセルクルのキノコ……よもや公都でも栽培されていたとは……」
短期間で横文字をスラスラと言えるようになっているところは、流石は先生と同じ荀氏なだけはある。
荀攸さんが嘆息を漏らすのも仕方がないが、馬鹿が爺様に取って代わって権勢を振るっていた時点で、この広い公都内で栽培をしていたのは当然といえば当然。
だがそんな肝心な栽培所の場所ですら、馬鹿はおだてられていただけで知ろうともしなかったんだからな。
栽培所を抑える事が出来たのも、地下施設で見つけた羊皮紙があってのもの。
「栽培所を抑える事が出来たのは羊皮紙に書かれた記述が真実だということ。この身が震えてしまいます」
栽培所が真実なら、その他の記述も紛う方なき真実。
狂気の実験を目にしなかった荀攸さんだけど、狂気の一端に触れることは出来たと不快感と共に発した。
「公都と近隣の栽培所を抑える事は出来ましたし、各地でも今後、抑えていくことになるでしょうけど、現状カイメラの所在を掴めていないのが悔しいですね」
「こちらが地下施設を見つける事は出来ないと高を括っていれば、その驕りから尻尾を掴むという事も可能でしたでしょうが、中々に用心深い連中のようで」
堂々と表には出ず、派手に動く馬鹿や傭兵団に目を向けさせてその裏で動く。
影に潜む連中としての常套手段ではあるだろうが、こちらがそれに対応できていなかったのは腹立たしい。
地下であんな実験をしていたんだからな。ミルド領からもし逃げ果せてたとしても、各領地と協力して絶対に捕らえてやる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます