PHASE-934【冒険者とは仲良く】

「爺様そんなに滅入らなくてもいいですよ」


「うぬ。我が孫の力が偉大すぎて……な。神にも等しいとは正にこの事だろう」


「その神に等しいとされる四大聖龍リゾーマタドラゴンの力を借り受けている事も忘れないでくださいね」


「そうであったな。だからこそこういった力を扱えるのも当然と思わないとな。偉大なる孫にはそれ相応に接せねばならんか」


「いえいえ、今まで通り普通でいいです」


「その通りです」

 すっとベルが俺達の話に割って入る。

 継いで、


「あまり恭しく接すれば調子づかせます。手厳しいくらいが丁度良いのです」


「酷くね。普通に接するでいいじゃないか」


「お前が力や権力に溺れないうちは普通に接してやる」


「溺れませんよ」

 時折こうやって俺に対して釘を刺すのがいれば調子にも乗れないさ。


「よき仲間だな。美姫は言わばトールの鞘であるな」


「そうそう。ベルは鞘です」

 そして俺がその鞘に収まる刀です――とまでは言いきれない。


「その刃が暴を振るわぬようにしっかりと収めましょう」


「「え!?」」

 予想とは違った返しが来たので俺と爺様が驚く。

 でもってその側では俺のパーティーメンバーも目を丸くしていた。

 まさかの返しだ。

 これはつまり俺という一人の男を受け入れるという事なのか!?

 ここに来てベルは俺を一人の男として見てくれるということなのか!?


「私の監視下の元で保管し、凶刃と変わりそうならば、しっかりと叩いて打ち直します」

 ――……ああ……。分かってたけどね。

 分かってたけど、このガッカリ感はどうだろうか……。

 俺も爺様もそういった言葉が欲しかったわけじゃない。

 そしてもしかしたらという淡い期待の反動が淡いのとは釣り合いが取れないくらいに大きい。

 等価交換なんて嘘じゃん! ってくらいに精神的に大きなダメージを俺は被ってるよ。

 でもってパーティーメンバーはクスクスと笑っているしね!

 なんでこんなにもダメージを被らないといけなかったのだろう……。

 俺はただ諸侯たちが平静になるのを待っているだけだったのに……。




 ――――。


「公爵様」


「はい……」


「お加減がよろしくないのでしょうか?」


「いやいや、ただ落ち込んでいただけですよ」


「お、落ち込み? ……ああ、ええっとですね、お話よろしいですか?」


「ええ」

 チヌークに搭乗する時と同じで、範を示すように冒険者ギルドの面々が最初に俺の元へとやってくる。

 まずは俺に対する称賛から始まった。

 迎賓館でも同様の事があったけど、今回はしっかりと俺の力を見た後だから声の張り方が違った。


 諸侯に比べると恐怖に呑まれた状態からの回復も早く、今では恐怖以上に、俺達が先ほど見せた力を行使し魔王軍を倒したと分かれば、この世界に一筋の光明が見えたと喜びの表情にてそう言い、自分たちも可能な限りの協力をしたいと申し出てくれた。


 ミルド領内で公爵様が依頼を出したならば、自分たちのギルドが率先してそのクエストを受けると約束してくれる。

 俺との繋がりを大事にしたいという事からか、依頼料は格安でも受けてくれるという。

 でもそこはすっぱりと断って、見合った額を出すと約束。

 公爵よりギルド会頭としての方が過ごした時間は長いからね。見合っただけの報酬をもらわないと、冒険者としての楽しみがないというのは分かっている。


 領内以外でも戦闘――、特に魔王軍討伐クエストの依頼を出した時には参加してほしいと願い出れば、二つ返事で了承してくれる。


 快諾に感謝し俺が頭を下げれば、この行為に大層驚いていた。

 公爵が冒険者ギルドの人間に頭を下げるなんて考えられない事だからだそうだ。

 しかも冒険者としても勇者の称号を有している者がするのだから、驚きは更に大きい。

 

 俺が頭を下げるだけで強者たちからの協力を得られるなら安いものだよ。

 素直にそう言えば、最近よく言われる人誑しの才があると返ってきた。

 俺は本当にそう思っているから口にしているだけなんだけどな。


【白狼の宴】

【オグンの金床】

【アーモリー・パライゾ】

 この三つのギルドはミルドにて三本柱と呼ばれる大手のギルドであり、その代表者たちと関係を持つことが出来たのは大きい。


 ドヌクトスでもシークランナーのギルマスと懇意になれたし、各地の冒険者ギルドとの連携をもっと取れるようにしていきたい。

 大小に関わらず平等に友好を深めていこう。

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