PHASE-930【御殿場市のアレのよう】

 大音量の音楽にノって車両による編隊はまだ続く――。


「やふぅ!」

 素晴らしいね。

 ゲッコーさん達のゲームから召喚した乗り物は迫力の塊。

 その最たる存在であるのが戦車編隊からなる部隊だ。

 ストライカー装甲車とJLTVに続いて大地を揺らしながらの参上。

 戦車編隊の先頭はM1A1エイブラムス。続くのは地龍の時に活躍したT-90A。

 でもって――、


「感動だな10ヒトマル式まで見れるなんて」

 アメリカとロシアの二大超大国の戦車が併走しているのも感動的なのに、そこにヌルヌル機動の10式まで出てくるなんて……。

 ありがとうゲームだからこそ出来る事だよ。

 先を進むストライカーとJLTVが速度を落とし、戦車編隊の後方へとつくようにして走る。

 俯瞰から見れば楔形陣形となっているだろう。


「パンツァーカイルだな」

 楔形の陣形となって湖畔をゆっくりと進み始めると、森から猛追してくるのがこの世界の騎馬隊。

 ヨハンを中心とした征北騎士団と近衛兵による騎馬隊だ。

 演習本番の今日に備えて、この地で必死に混成部隊としての訓練をしてたんだろうな。

 

 混成部隊を眺める中、ミズーリの頭上をヘリが通過する。

 耳が破壊されそうになる……。


 先頭を進むUH-60 ブラックホークがスピーカーを取り付けていたようで、爆音のハードロックが耳朶にダイレクトアタックだった……。


 爆音を流す後方にはこれまた夢の共演。

 AH-64D アパッチ・ロングボウにハインドD。AH-1Z ヴァイパー。Mi-28ハヴォックと、ここでもアメリカとロシアの共演。

 ユニオンとアクシスの共演の次は、西側と東側の共演だ。


富士総合火力演習そうかえんみたいだ」


『Let's jam』

 状況開始を気取った言葉で発する。クサいやダサいより格好いいと思えるのが外国人マジックだよな。

 これを日本人の俺が言えば間違いなくお寒いことだろう。

 気取った台詞の人物はリトルバードの声の人。どうやらあの中のヘリのどれかに乗り換えたようだ。

 

 湖畔の一区画は開けた場所となっている。

 この合同演習のために一帯の木々が切り倒され、木々の代わりに標的となるハリボテの建物や人を模した的が立っている。

 開けた区画上空でブラックホークが停止すれば、即座に後方にいた攻撃ヘリ達が前に出て力を振るう。

 ロケット弾や機銃からの激しい実弾が開けた場所に着弾。

 爆煙と土埃が派手に上がる。


 衝撃は見ている諸侯の面々にも恐怖となって伝わることだろう。

 目を塞ぎたくても、荀攸さんが『公爵様のお力です。刮目願います』と発している以上、見ないといけないという状況に追い込まれているんだろうな。

 公爵の力を見ない。不義に繋がるって感じに追い込んでいるのが、イヤホンからでも十分に伝わってくる。


 巻き上がる煙の後方では高度を下げたブラックホーク。

 巻き上がる爆煙を纏うようにローターを回転させる中で、開かれたドアにはドアガンであるM134ミニガンが装備され、それを構える射手が待機。

 その横で垂れ下がるロープ。

 攻撃ヘリの火力支援からの懸垂降下を現在実行している。

 背中にアサルトライフルを背負った兵士たちが降下していく。


「今回はF2000か」

 俺の好きなアサルトライフルの一つだな。

 地に足をつければロープより離れF2000を膝射にて構える。

 次々と降下してくれば、同様に膝射で構えて周辺警戒。

 最後の一人が降下し終えて走り出せば、膝射から立ち上がって素早く移動を開始。

 手にしたアサルトライフルにて的となるターゲットに銃口を合わせて撃っていく。

 こういったデモンストレーションを遠目で諸侯たちが見ている最中、伝わってくる振動が徐々に強くなっていくことで、体を硬直させているのが俺の方から確認できた。

 側をパンツァーカイルで通過していく混成部隊がその原因。

 鋼鉄の巨象の姿に子供たちは泣きじゃくっている。

 大人達はまだなんとか耐えていたけども、それもわずかな間。

 諸侯たちのいる地点を通過した後、標的となった地点に向かって戦車から砲火が一斉に放たれる。


 ――ハードロックと砲撃による爆音――。


 大気を劈き震わせる轟音に、何とか耐えていた諸侯たちがたまらず腰から砕けるように地面にへたり込む。

 鋼鉄の巨象がその長い鼻から炎を吹き出し、爆炎を巻き起こせば地上を抉る。

 大木を小枝のようになぎ倒していくミニガンなどによる機銃掃射。

 上空では戦闘ヘリによるロケット弾とTOWミサイル。30㎜と12.7㎜によるつるべ撃ち。

 それらが一点に降り注ぎ、大地を大きく変化させていく。

 高火力が生み出す衝撃と音。

 いまだかつて経験の無い光景を諸侯たちはへたり込んだまま目にする。


 車両に続く騎馬隊はこの短期間で素晴らしいくらいに調練されていた。

 諸侯が腰砕けになっている中で、それよりも近い場所で爆音に晒されているにもかかわらず、馬が驚かずに車両を追従しているんだからな。

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