PHASE-929【アクシス&ユニオン】
『美しい』
俺と同じ感想をゲッコーさんも漏らす。
他にもS級さん達の感嘆の声がイヤホンマイクに届いていた。
現実世界に現れた戦艦大和。軍人達が感動するのは当然だろうね。
ミズーリは今も健在だけど、大和は海底で眠っている。
こうやって実物――といってもゲームのデータなんだけども、顕現していることが凄いことなんだよな。
感慨深くなるのもいいが、優先しないといけない事をちゃんと優先しなければ。
湖に現れた二隻の戦艦は諸侯たちにしっかりと見える位置に召喚されている。
次を出すにしても、ミズーリと大和に重なって見えなくなっては意味が無い。
その辺を考慮しつつ、プレイギアを向けるのはミズーリの左船首の隣。
次はコイツ。
「ビスマルク」
発して召喚に成功したのを確認した後、プレイギアの向きを少しずらしてからの――、
「二代目キング・ジョージ5世」
と、立て続けに召喚。
『なんてチョイスだよ……』
「
溜息交じりのゲッコーさんに興奮気味に返答する俺。
凄いよ。二百メートルを超える戦艦が四隻も居並んでいるよ。
勝てるよ。このアクシスとユニオンの共演はこの世界の厄災を全て払いのけてくれそうだよ。
シーゴーレムの艦隊をたったの一隻。しかも短時間で壊滅させたことを荀攸さんが再び諸侯に説明している。
最初はミズーリの姿に呑まれていたけど、再度の説明は熱を帯びたものだったのがイヤホンからでも分かる。
同じような大きさの戦艦が四隻も召喚されればそら興奮もするよな。
逆に諸侯たちはとんでもないのが四隻もいるのかと恐れ戦いていることだろう。
湖畔にいる諸侯たちの表情をビジョンで見たいけども、段取りを進めていかないとな。
四隻目が召喚されたのは合図でもある。
「皆さんど派手にお願いします」
『任せてもらおう!』
と、返ってくる。リトルバードで俺をミズーリまで送り届けてくれたS級さんの声だった。
『そういう事だ。派手にいけ。大音量だ』
『『『『Copy that!』』』』
ゲッコーさんが発せば快活の良い揃った返事。
鼓膜が持って行かれるかと思うくらいにテンションの高い返事だった。
が、そんな返事の音量など大したことないとばかりの大音量が、森の方からど派手に響き渡る。
『な、なんでしょうかこの音楽は!?』
経験のない音楽に荀攸さんの声には戸惑いが混じる。
仕方ない。こんな音はこの世界や後漢、三国時代には存在しないからな。
エレキからなる音は俺やゲッコーさん達を除けば無縁の音と言ってもいいだろう。
エレキとシャウトが織りなす大音量は、森側より現れるヘリのローター音をかき消すほどだった。
どんでもない爆音。立川のシネマシティもビックリなレベルだろう。行ったことないけど。
もはや騒音と言ってもいい。
にしてもこれは何の歌だろうか? 俺は聴いたことがない。
英語だから洋楽だというのは分かるが。
でも普通はさ――、
「こんな時はワルキューレの騎行じゃないんですかね?」
『そんなベタなチョイスはしないさ。1972年リリース。ディープ・パープルのハイウェイ・スターだ。これに乗れなきゃ男――いや漢にはなれないぞ』
なるほど。俺が生まれる約三十年前の音楽か。知らないわけだ。そもそも洋楽なんてほぼ聴かないしな。
というかゲッコーさんノリノリだな。
美しい湖に相反するハードロックな音楽が鳴り響き、木々からはヘリではなく音楽によって驚いた鳥たちが飛び立つ。
ヘリと鳥に遅れて森の木々を縫うようにして現れるのは、ストライカー装甲車。
それに続くのはJLTV。
俺達が普段使用するのとは違い、キャビン上部に7.62㎜のM134ミニガンを装備した仕様。
それを見れば糧秣廠での虐殺と言ってもいい迎撃を思い出す……。
罪深い思い出をかき消してくれる大音量のハードロックは、五月蠅くもあり有り難くもあった。
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