PHASE-861【三つ首のほうが有名だよね】
「おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 何が負けだ! 絶対に許さんぞ! 貴様らなど終わらせてやる」
やる気が出たか? 俺としてもさっさとミランドとの一騎討ちを見たいんだけどな。
ミランドがお前の顔面にきついの入れる一方的な戦いをさ。
「いでよ我が最強にして最高傑作! この愚者共を食い散らかせぇ! 全てがお前の餌だぞ」
なんだよ。結局はそっちかよ。
大音声で叫び、ピィィィィ――と指笛。
真っ先に驚いたことは、コイツが指笛を鳴らせるってこと。
不器用そうなのにそんなこと出来るんだな。
ちなみに俺は指笛はできない……。
コイツに一つでも劣るところがあると、精神的にキツいってのは分かった……。
指笛に呼応するようにグラグラと揺れる地面。
「揺れる大地ってやつか。ランシェル。リン、ミランド」
言えば皆で息を合わせて跳躍し、地面から離れれば、
俺たちが立っていた地面から巨大な爪をもった足が現れ、ガリガリと五本の爪が地面を抉っていく。
「ハハハハッ! いいぞ~。すごいパワーだ」
先ほどまでのヘタレっぷりは何処へやら。
一転して強気になれば、すっくと立ち上がり、手にした緋緋色金の剣先を空中の俺たちに向け、
「焼き払え」
の号令に従い、濛々と立ち上る土埃の中から二本の炎が吹きだしてくる。
「すげい」
大火力である。
リンとランシェルがプロテクションを展開する中、
「トール様!?」
「凄いけど大丈夫」
ランシェルの心配に無用で返し、炎の根源を調べるため頭を地面に向けて、籠手を顔の前でクロスさせた姿勢で落下。
「問題はないな」
炎に体が呑まれているけども火龍装備によってダメージを受けることはなかった。
むしろ心地いいくらいだ。
「よっと」
着地し、炎の中から何事も無く現れる俺の姿に馬鹿が驚く。
驚く馬鹿を無視しつつ、舞い上がる土埃の下にて俺は根源を目にする。
「――こいつか」
それは首が二本ある巨大な犬だった。
「ケルベロスとは違うな。でも二本のやつも聞いたことあるような」
神話知識は並だからな。メジャーなのは知ってんだけども。
こういった時、格好良く腕を動かすだけで土埃を吹き飛ばせる芸当が出来れば、直ぐにシャルナにコイツの正体を聞けるんだけどな。
まあ、プレイギアで調べるのが手っ取り早いんだけど。
「グルルルルル」
「唸ってるね~」
「お、おお恐れ戦け勇者」
「うるさい。俺が炎の中から出てきた時点でコイツの特徴の一つが意味を成さないことをまず自覚しろ馬鹿。あと、お前の声が恐れ戦いてんじゃねえか」
「くぅうぅぅぅぅぅ……」
悔しそうに体を震わせているけどやはり相手にしない。
――中々にデカいな。
マンティコアたちよりも二回りくらいデカい。
こんな大きな犬種がこの世界にはいるのだろうか。
それとも合成獣の技術には、体を大きくすることが可能な改良もあるのかな。
なんにせよ、
「世のために活用できてない時点でな~」
使い方次第だろうが、こんな馬鹿な権力者に提供している時点で、コイツ等をつくりだした造物主きどりの奴――、もしくは奴等はろくな思考を持っていないだろう。
「やれ」
「ウォォォォォン」
狼のような遠吠えだな。
巨大な前足から伸びる鋭い爪が高らかに上がれば、それだけで土埃が晴れる。
振り下ろせば地面が抉れるし、大きく揺れる。
トロールやオーガの一撃なんか目じゃない威力。
「さっきまでの合成獣とは明らかに違うな」
「見たか! 俺の最高傑作であるオルトロスのこの力!」
オルトロス。やっぱりケルベロスじゃないんだな。
何となくだけど聞いたことはある。
「でもケルベロスほどメジャーではないだろう。あと最高傑作だろうとも、ちゃんとモドキってつけろ。本物じゃないんだから」
俺の発言が気に入らなかったようで、オルトロスモドキは完全に俺をロックオン。
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