PHASE-850【語尾に『にゃ』をつけるな!】

 ベルの可愛い声をもっと聞きたいという欲も芽生えるけど、こいつを倒してベルの好感度を上げるほうがいいな。

 

 ベルは黒光りしてカサカサと動く昆虫も苦手だけど、ヌルヌルでニュルニュルウネウネもダメな乙女だからな。

 ――――うん。クラーケンの時は扇情的だったな~。

 この戦いが終わって一人の時間が出来た時にでも録画を楽しませてもらおう。

 

 浄化の炎を津波のように出せる状態だったら、ヌルウネ系を目にしなくていいから対処も問題なかっただろうが――、


「これはやっぱり俺が戦わないとな」

 巨大な木箱から全体を見せたのは、以前に湿地帯で出会った巨大なワーム。確か――ウォーターサイドだったかな? それと同様のワーム。

 違うのは環形動物のようなヌラヌラの体表ではない。

 でもテカテカウネウネとはしている。


「シャルナ」


「ごめん分からない。初めて見る」

 ほうほう。

 二千年近くの時を過ごすハイエルフのシャルナが分からないという。

 となれば――、


「やはりチコ同様に合成獣か」


「驚いたか勇者! ギガースワームとタイタンミリピードの合成獣。ギガースワーム・エクソアーマーだ」


「シャルナ」


「お手軽に呼ばないでよ……。その両方は知ってるよ」


「サンキュー生き字引」

 ミリピードの名前がなくなってて可哀想というのが真っ先に浮かんだ感想だな。

 ワーム特有の筋肉質な体表に頑強な外骨格を取り付けたってところか。

 

「ギガースワーム・エクソアーマーの外骨格は鋼よりも硬い。貴様に倒せるかな」

 気分がとてもいいようでなにより。


「もう一つも開けろよ」


「言われなくても分かっている! フェザーアントを出せ」

 羽蟻かな?

 と思えば、出てきたのは巨大な蟻。その胸部には羽が生えている。

 翅ではなく羽。鳥の翼が生えていた。


「地上と空からの攻撃に苦しむがいい! 勇者を殺せ!」


「ギュゥゥ」に「キィ!」と鳴いて返事をしている。

 なるほどね。人語を理解して主の命令には従うようになっているんだな。

 中々の生物兵器じゃないか。

 こういったのは基本、人の命令を聞き入れないで暴走したりするもんだけどな。

 バイオハザードをおこさずにコントロール出来ているのは感心する。

 これらを生産すれば、魔王軍との戦いにおいて戦力として投入できるってもんだ。


「ま――いりませんけど!」

 生物に対する冒涜ですよ合成なんて。

 息の合った地面と空からの同時攻撃。

 ワームの動きは外骨格を纏っていても素早く、羽つきの蟻の機動性も高い。

 地面を揺らしつつ口から唾液を垂らし、筒状の口を大きく開いて迫ってくるワーム。

 肩越しに見ればベルの顔は青い。

 絶賛、乙女モードだ。

 まったくうちの美人さんを怖がらせやがって。


「ごめんな」

 残火を鞘から抜きながらそのまま抜刀術の要領でワームを断ち切り、そのままワームの体を踏み台にして跳躍し、迫ってくる蟻も胸部の部分からしっかりと断ち切ってやった。

 俺の周囲に沢山の羽根が舞う。

 流石の生命力なのか、斬られてもバタバタと地面で暴れるだけの力を持っていたけど、それもわずかだった、しばらくすると動かなくなる。


「ば、ばきゃにゃ……」


「おっさんが語尾にニャをつけるな気持ち悪い! 全くもって嬉しくない。全世界の紳士にあやまれ! ぶち殺すぞ!」

 ついつい口が悪くなってしまった。

 気持ち悪かったからね。仕方ないね。最たる理由は、無益な殺生をさせられたことだけどな。

 ベルに良いところは見せたいけど、やはり殺生ってのは嫌なもんだ。

 

 自慢であり自分にとっての切り札だったんだろうが、それが俺に容易く討ち取られる。

 デカい体のによる質量攻撃は確かに絶大な破壊力だろう。

 でもそれは一般的な目線での話。

 なんだかんだで俺も難敵と戦ってきている。

 如何に良いとこ取りで生み出されたであろう合成獣であろうとも、俺にとってはすでに役不足。


「おい。あわあわしてないで次を出せよど三一さんぴん。お前の力を全て否定してやる。でもそれをすると、お前の為に命を散らさないといけない生物が生まれるっていうのが悲しいけどな!」

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