PHASE-844【小出し】
ガリオンは握った小瓶の栓をとり、ゴクリと一気に飲み干す。
「何が敗着の一手かな? そうか。ガーズとアザグンスにも渡したな。その発言からして飲んだのだな。あいつ等だとまだこの力は押さえ込めなかっただろうに」
「それは? ベルセルクルのキノコの上位互換か?」
「そうだ。これはベルセルクルのキノコから抽出し、濃度を高めたエッセンスだ」
なるほど。ガーズの力の向上も頷ける。
ま、単調な動きになって駄目駄目だったけど。
「はぁぁぁぁぁぁあ!」
一気にオーラアーマーの色が濃くなる。
身体能力の向上がオーラのお陰でよく分かった。
威圧するようなシャドウ。
普通の動体視力だと追うのも難しいくらいに、手足の振りのスピードが上がっていた。
――一通り終えると、
「行くぞ勇者」
眼前の相手はエッセンスには呑まれないようだ。言語がしっかりとしているのがその証拠。
「来いよ。そのエッセンスをそれだけ扱えるんだ。しかも副団長。出所をしっかりと吐かせてやる」
「一撃であの世行きだぞ」
言うだけあって両拳に膨大なピリアが練られていく。
ファースンで留めた拳周囲のピリアはスイカサイズ。
あれのワンツーを喰らったら無事じゃすまないな。
まあこっちも練らせてもらうけどな。
「――ハッ! 随分と小さい」
小馬鹿にされつつも、イグニースを顕現してからイメージにより圧縮。
向こうに比べればミカンサイズだ。
「大きさじゃないってことを教えてやる」
さあイメージしろ俺。
一瞬だけだ。いつまでも垂れ流すのではなく、しっかりと出すだけ出して止める。
母ちゃんに水道の水を出しっ放しにして怒られるのは嫌だろう。
「蛇口はしっかりと閉めないとな」
「本当に貴様は訳の分からない事ばかりを口にする」
「こいやゲゲゲの紋次郎」
「本当に――分からん! アクセル!!」
一瞬だけ――だ!
「ブーステッド」
「馬鹿な!? そんなピリアを!?」
「自分――勇者ですから!」
凄いぞブーステッド。
アクセルによるガリオンの動きも捉えることが出来るようになるなんてな。
身体能力向上ピリアの上位は、中位とは大きくかけ離れている。
俺はアクセルを使用しなくてもラピッドだけで動きに対応できるし、ビジョンで捕捉も容易い。
自信満々だった姿が一変して驚きの表情に変わっているガリオンに目がけて、
「烈火ぁ!」
裂帛の気合いによる一撃。
まずいとばかりに攻撃の構えをといてニージュを発動させるも、俺の烈火は爆発に対して爆発で押し切る。
相殺するのではなくかき消して進む。
最大威力であったはずのガリオンの攻撃は不発に終わり、ブーステッドと他のピリアにより強化された烈火は見事に直撃。
吹き飛べば、ガリオンの体は謁見の間の奢侈な柱にベタリと張り付くように叩き付けられた。
――動きがないのを確認したところで、秒で次に移行する。
「解除」
と、声に出してブーステッド使用停止のイメージを強める。
――――でも構えはとかない。
今までならブーステッドを使用した後は、脱力から体がまったく言う事を聞かなくなっていたからな。
この構えはガリオンに対しての備えと、倒れないだろうか? という自分自身が抱く不安に対して身構えるという二つの意味合いがある。
――…………。
――……。
――。
「コクリコ」
「何でしょう?」
傭兵団なんて何するものぞとばかりに大立ち回りをしつつ、俺の呼びかけに応じてくれる。
「俺は――元気か?」
「元気かどうかは分かりませんが、そういった質問をしてくるトールが馬鹿だというのは理解できます」
――…………はっ! ぬかしよる。
でもって馬鹿の部分を強調したその発言にイラッとした感情が芽生えるって事は、俺はしっかりと意識を保っているということだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます