PHASE-843【禁忌と決めつけるから成長できない】
俺の左が当たれば爆ぜるも――、俺の左腕に衝撃はこなかった。
「ぐぅ!?」
代わりに苦悶の声が相対する方から上がり、俺は拳を振り抜く事に成功。
「て! なに!?」
成功はした……が、ガリオンの右目がギロリと俺を睨む。
「流石だな。勇者ぁぁぁぁ!」
手応え有りだったが、ダメージはそこまでなかったようだ。
爆発でガリオンの前髪がかき上げられ、隠された左目をしっかりと目にした次には、
「アンリッシュ・ワンショット」
「ぶぅぅ……」
腹部に直撃。
くの字になって膝をつきそうになるのを気力で耐えて後退。
判断が遅かったら、オーラを纏った鎌を彷彿させる蹴撃で、首が持っていかれるところだった。
「チッ、仕損じたか」
「ぅうぅぅ……。そりゃこっちの台詞だ……」
「いやはや本当に危なかったぞ。まさかニージュを使用する俺に、ここまで攻撃を繰り出してくるとは」
くそ! あと少しだと思ったのに打たれ強いな。
何かしらのカラクリがあるんだろうけど、十中八九――、
「そのゲゲゲ仕様の髪の下に隠された左目がタネみたいだな」
「げげげとは何のことかまったく分からんが、その通りだ」
「部下であるガーズもそうだったけど、トリッキーさはお前ゆずりってことなんだろうな」
「フッ」
不敵にほくそ笑むと、左の前髪をかき上げる。
出てくるのは――義眼。
じゃなく――、
「タリスマンを埋め込んでいるのか」
「そうだ」
「そのタリスマンがお前を打たれ強くしているってところだな」
「ああ。このタリスマンにはハイガードの魔法が封じてある」
ハイガードね。
初めて耳にする魔法だ。名前からしてタフネスの上位互換のような魔法か。
ピリアであるタフネスと、ネイコスであるハイガードを重複させて、それにオーラアーマーによる攻防の強化を施しているという。
「ガチガチだな」
「だからこそニージュも使えるのだ」
「何だよ。俺にだけ衝撃が有るわけじゃないんだな」
一応は自分にも衝撃はあるそうだ。
相手に比べれば大したことはなくても、防御力を強化しないかぎりはニージュは自分にとっても禁じ手らしい。
万全を期さないと使えないわけだ。
「ペラペラと喋るのは――」
「貴様に勝てる自信があるからだ」
「だろうな」
正直、尊敬もするよ。
自分が使用するピリアをちゃんと理解して、それに対しての欠点を補うことをやってるんだからな。
対して俺はブーステッドを使用出来るのに、対策を練らないままに禁忌と位置づけて使用しないって決めてんだからな。
こういったところで差が出るんだな。
どういった経路を辿ってでも、高みを目指そうとする意欲ってのを感じ取れる。
「俺はまだまだだな」
「敗北の前にそれを悟れてよかったな」
「負けるつもりはないけどな。ただ覚悟に関しては、敗北したと正直に伝えさせてもらうけど」
「それは殊勝だな」
「でも、この戦いは勝たせてもらう」
「それは無謀だな」
「どうかな」
俺だってな。使えるからな。
使用して、仕損じればアウトだけども。
地龍の時が最後だったかな。
でも現在は地力倍加であるピリア、ストレンクスンを習得している。
短時間だけって制限をすれば、使えそうな気もする。
「――次を最終ラウンドに出来たらいいな」
「それはこちらも同意見だ。まあこの力がある限り、俺の防御は崩せん。そして、それを盤石のものとする!」
おもむろにポケットに手を突っ込む。
「……それは悪手だ。敗着の一手だぞ」
ポケットから出てくる手の形は握った状態。
握られた手に収まっていたのは、ガーズが手にし、口に流し入れた小瓶と同様の物だった。
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