PHASE-845【いつまでも見ているだけでは駄目だぞ】
だがヘタレな俺はちょっと不安になってしまうので、試しにとその場で軽く跳躍をしてみる。
「――ほほう!」
何も起こらない。
着地時に膝から崩れ落ちるということもないので、更に強めに跳躍。
「ほっほう!!」
体は快調そのものだ!
「成功だ!」
「みたいですね。しかしトールはいつもぶっつけ本番ですね」
「本番じゃないと本気が出せないんだ」
「ハイハイ」
呆れるコクリコは、最後の傭兵団をミスリルフライパンでどつく。
よしよしよし!
この謁見の間での勝利とブーステッド成功!
長時間の使用さえしなければ、現状の俺の実力なら使用が可能だ。
先ほど使用した時間は、発動から終えるまでに約五秒だった。
体に負担がかからないのは五秒と考えておこうかな。
それくらいの時間なら、ストレンクスン、インクリーズ、タフネスを併用したこの体なら耐えることが出来る――と、思う。
仲間がいる状態じゃないとこれ以上の冒険は出来ない。
もし一対一という状況におかれて使用するとしても、十秒以内としておこう。
短期的に決めることが出来るなら今回みたいに五秒以内だろう。
――――うん。やっぱり安牌をきるためにも十秒以内じゃなく、五秒にしておこう。
五秒ルールとしよう。
床に落としても五秒以内に食べればいいっていうルールと同じだな。
床に落ちて転がった食べ物は、五秒経過したら食べられない。
五秒以上ブーステッドを使用したら、床に転がるのは脱力に襲われる俺。
発動は五秒以内に留めるようにしておこう。
「お、おのれ! おのれぇぇぇぇぇえ!!」
「あら! 動けるのか」
流石ガチガチにピリアとネイコスで固めた防御力と、ドープによる底上げ。
加えて烈火の練りが足りなかった。ブーステッドに意識を集中してたからな。
もし俺が脱力に襲われていたら負けてたな。
「こんな事があっていいものか……。俺は鋼鬼のガリオン・バフマンだぞ!」
「俺は龍鱗鬼の遠坂 亨だぞ」
「ふざけるな!」
「声は強いけど、足がガクガクじゃねえか。降参しろよ」
「次こそは全力だ」
「いやいや……虚勢を張るなよ。さっきのが全力。今度のは出涸らしだ」
もうブーステッドを使用する必要もない。
連続使用が可能なのかも試してはみたいけど、この後の馬鹿息子の事も考えるとリスキーな行動はひかえるべきだな。
「勇者ぁぁぁぁぁぁあ!」
「くどい」
涼やかであり、鋭さも刻んでくる風が、身の引き締まる声と共に俺の横を通る。
「がぁ……」
――……お見事。そして俺、背筋を真っ直ぐにする。
美しく長いおみ足がガリオンの側頭部に見舞われれば、ぐるんと白目になって崩れ落ちる。
今度こそ戦闘不能だな。
「全力を出し、且つ外道な肉体強化をしたあげくに一撃で倒される。その時点で貴様は終わっている」
結構、前から見てたのね。
参加もせずに見てたんだな。
相変わらずベルは俺に対してはスパルタだね。
掩護をすることもなく見てんだから。
でもね――、今回は言わせてもらうよ。
「手伝ってくれよ」
「自分で対応できただろう」
「違う。コクリコがいたからそこまでの心配もなかったけど、ラルゴ達は戦士としての素養はあるけど、なんだかんだで素人に近いんだ。そいつらのサポートをしてくれてもいいだろう。たとえ実力が勝っているとはいえ、犠牲を出す確率を下げるためには見てないで参加すべきだね」
些かだが声を強め、喋々と述べる俺。
いつまでもスパルタ思考で行動されても困る。それだと戦争なんていつまでたっても終わりにならない。と、付け加えれば、
「……確かにその通りだ。すまない。トールの発言は正しい」
流石は真面目なベルだ。
自分の対応に間違いがあったと思えばしっかりと頭を下げる素直美人。
そういうところ嫌いじゃない。元々、全部好きだけど。
しっかりと反省してくれる素直さ最高。
たまには男としての強さも見てもらわないとな。
加えるなら、俺が単独行動という名の迷子になってしまった事も、このまま怒られる事なくお流れになるように上手く運びたいところ。
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