PHASE-838【纏い系】

「ますます欲しくなる面子だ」


「俺の自慢の仲間だからな。それにそっちに行くことになったら座を奪われるって言ってんだろ」


「構わん。我らが傭兵団は力こそが正道」


「ほう。ならば内部からあんたらを一掃するのも一興だな」


「ならばその力を示してみせろ」


「マスリリース」


「!? プロテクション」

 驚いたけどもしっかりと防いでくるな。


「なんですトール!? 今のはなんなのですぅぅぅぅ!?」

 ――…………コクリコさん。相手より驚いてどうするのよ……。


「見たかコクリコ。俺も単身で遠くにいる相手を攻撃できるようになったのだ。この要塞において、単独での戦いを経て習得したのだよ」

 ――うん。嘘は言っていない。

 戦いを経て――だからな。

 戦闘中に習得したなんて言ってない。

 ここに来るまでの間にスケルトンルインからインスタントで習得したけども、嘘は言っていない。

 習得のところを割愛させてもらっただけ。

 本当はその部分の説明が大事なんだけど、いかんせん今は戦闘中ですから。

 なのでいずれその時が来たら割愛部分も話してあげよう。その時が――――来ればな。


「なあ! ガリオン」


「なにが、なあ! なのかは分からんが、やってくれるな」


「マスリリース」


「鬱陶しい」

 ハハハ――これは便利だ。

 離れた相手に対して銃やモロトフカクテルを使用しないで攻撃できるのがこうも便利だとはね。

 ますますアンクルホルスターのチーフスペシャルが可哀想になってきたけども。

 おでこにある魔法の眼鏡にデコデコ、デコリ~ンって魔法の言葉を使用したら、間違いなくグレたチーフスペシャルが俺に睨みを利かせて話しかけてくるんだろうな。


「俺に集中すべきだな」


「おお!」

 鋭い拳打。

 アクセルからの拳打は、速さが今までの傭兵団に比べて段違い。

 これなら二枚看板の連携攻撃をやぶるのも頷ける。

 ガーズが薬物使用時に、豪腕より発した空を切った音も凄かったけど、これは更にその上をいく。

 薬物強化なんかしなくても十分に強い。

 油断すれば首から上が持って行かれそうだ。

 そんな強力な攻撃へと繋げるフットワークもいい。アクセルに目が行きがちだけど、単純な歩法も征北の四男坊より速い。

 

「マスリリース」


「会話からして覚え立てのようだな。だから多用するんだ」

 まあね。反論できないよ。


「はぁぁぁぁ! ファースン」

 いったん距離を取るガリオンは、力を蓄えるように中腰の姿勢となり、声に出したと同時に右拳がオレンジ色に光りだす。

 体に留めて顕現しているからピリアと見ていいだろう。


 次には――、


「アンリッシュ・ワンショット!」

 発しつつ正拳突きの姿勢。

 拳に留めたオレンジ色のピリアが気弾となって放たれ、俺のマスリリースとぶつかり合えば爆煙へと変わる。

 衝突による衝撃が体の芯まで伝わってくる。


「はあ!」

 爆煙を突っ切ってのアクセルで俺へと正拳突き。

 籠手でガードするけども、先ほど以上の衝撃が体全体に伝わってくる。


「いってぇ!」


「せいっ!」

 次には蹴撃。刃物を思わせる鋭い蹴りが俺の上半身を狙うが、これはバックステップで回避。

 ――したかに思えたけども、つぅぅぅ――っと鼻の部分から口端にそって生暖かい感覚がする。

 拭えば鼻血。

 流血とか久しぶりだな。


「かすっちまった」


「かする程度ですませるか。流石は勇者だな」

 見ればブーツの爪先部分がオレンジ色の光に輝いていた。

 ――拳だけでなく足にも留めることが出来るんだな。

 となれば、体全体にあのオレンジ色を留めることも可能と判断して対応するべきだな。

 でもって、拳だけでなく蹴撃なんかでも気弾を飛ばしてくるだろうから、それも警戒しないといけない。

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