PHASE-805【脆い】
「ウォーターカーテン」
襲い来る雷系中位魔法に、基礎魔法であるウォーターカーテンで何処まで防げるかと心配もあったけど、普通に相殺してくれる。
「フロックエフェクト」
と四男坊が発せば、周囲が「「「「おお!」」」」と、声を上げる。
リアクションからして練度がないと使用出来ない魔法のようだけども、
「ライトニングスネーク!」
継げば二匹の蛇がノコギリ刃のような軌道を描きながら俺へと向かってくる。
「イグニース」
で、容易く防御。
フロックエフェクトはヴァンパイアのゼノやオムニガルも使用しているからな。申し訳ないけど新鮮味のある魔法ではない。
「流石は勇者様。少しは驚嘆してくださってもよかったんですがね」
「なに言ってんの? 俺の周囲を見て言ってる?」
「う……」
視線はリンとシャルナに動く。
コクリコに向けられないのは……、まあ当の本人が四男坊の視線に気付いてないのが救いだな。
ともあれ、
「空虚だろ」
「確か――に!」
いい踏み込みだ。真っ直ぐと素早い。
一足であっという間に剣の間合いまで踏み込めるのは素晴らしいもんだ。
――けども、
「よっと」
上段からの斬撃は目で追える。
少し体をずらしてやるだけで躱せる一撃。そのまま下段から斬り上げるのかと思ったけど、
「おお!」
これは驚き。今までに目にしないような斬撃だった。
振り下ろした勢いを利用して体を一回転させ、二度目の上段。初太刀よりも勢いがついているから斬撃が速い。
でもまあ、
「ぐぅ……」
鈍い声のまま四男坊が地面に転がる。
確かに驚かされたけど、両足が地面から離れているからね。斬撃を躱して横っ腹に蹴りを入れるだけで勢いよく転がってくれる。
「まだまだ」
素早く立ち上がり挑む姿を目にすれば、征北や兵達が一斉に四男坊の名を発して歓声を上げる。
――……なんか、主人公してませんか?
俺が悪役みたいな立ち位置じゃないか。
立ち上がる主人公の前に立ちふさがる悪役という場面になっているような気がしてならない。
「さあ、行きますよ勇者様。なので抜刀を」
「序盤でも言ったけど、抜刀させたいなら驚異と思わせるくらいに俺を追い込んでもらわないと」
うん――、言ってる台詞も嫌味な悪役みたいに思えてしまう……。
「ならば!」
四男坊の目の前で赤々と輝く球体が顕現。
何度か見ているから分かる。
「バーストフレア!」
「アクセル」
バーストフレアのバーの部分で四男坊の側面に移動。
発して放たれるのは俺が元々いた場所。
「読んでますよその超速移動」
「でしょうね。一回見せてるからな」
ロングソードの輝く白刃がしっかりと俺へと向かってくる。
俺の動きを読んでの一振りは素晴らしいけども、
「見切ったようだけど、こっちも見切ってる」
がっしりと剣身を握ってやる。籠手と一体化している黒色の手袋も勿論、火龍製。
金属の刃では俺の皮膚には届かない。
「なんという無茶を」
驚いてくれて何より。
そこまで凄い芸当ではないけどね。
「しょら!」
剣を受け止めた事に驚き、隙が生じたので、裂帛の気迫を発して先ほど蹴りを見舞った箇所に拳による追加の一撃。
綺麗に入ったレバーブローは会心の一撃だった。
もちろん二撃目を考えたり、一度、距離を取ってから次の一手をとも考えていたんだけど、四男坊は一発のレバーブローで膝から崩れ落ちてしまう。
うん……。
弱くはないはずだ。コクリコ以上の魔法を使用出来ている時点でやり手ではあるとは思うんだけど、あっさりすぎた。
魔法習得の練度の高さに、斬撃もいいものではあったけど、今までの相手が魔王軍がメインって事もあったからか、まったく驚異に感じなかった。
でもって魔王軍の面子に比べて打たれ弱い。
これが人間って事なんだろうか。
以前にも賊や珍妙団とは戦ったこともあるけど、そんな連中が太刀打ち出来ないのがいま俺と戦っていた男だ。
鍛えている騎士であっても、ピリアを発動した拳が綺麗に決まれば一撃で倒れる。
魔王軍の亜人やモンスターなどと比べると、人間がいかに脆い種族なのかというのが対峙する事で再認識させられるし、痛感もする。
下手を打って綺麗な一撃をもらえば、俺も現在の四男坊と同じ姿になるわけだ。
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