PHASE-711【手早く確実なお仕事】

「よければその被り物を取ってくれないか」

 話をちゃんと聞くに辺り、王様はバラクラバの中の代表者だけでもいいので、ちゃんと素顔で向き合いたいと述べれば、先頭に立ち報告をする人物がゲッコーさんを見る。

 小さな頷きを確認し、


「では――」

 バラクラバを取れば、精悍な顔立ちで、無精髭を生やした金色短髪の壮年の男性。

 正直S級さんは集めたけども、名前までは見ていない。

 開発スタッフは、キャラ達の出身国や人物概要も記載していたけど、申し訳ないが俺は読んでいない。

 S級でしっかりと理解しているのは、隠しキャラのオジマさんだけ。


「ミュラー頼む」

 と、先頭に立つS級さんことミュラーさんにゲッコーさんが説明を求めれば、砦群攻略の話を始める。

 戦話となれば、この庭園に集まった各地の貴族豪族たちも内容が気になるのか、王様の側に寄る許可をもらえば、ミュラーさんの話に耳を傾ける。

 摩訶不思議な乗り物に乗った者達がどういった話をするのか興味津々のようだった。


 ――――S級さん達は、イリー指揮の下に行軍する兵達よりも早くに砦群へと到着。

 目的の砦群を遠くより監視。

 報告通り炊煙の上がり方からして砦内勢力が百程と判断したそうで、ここで炊煙の上がる各砦へと、部隊の一部がスリーマンセルにより隠密行動を開始。

 ストライカーやヘリはまず前面に出すことはせず、目視距離外にて待機。

 

 砦に潜入したS級さん達は、人間の賊が砦を占拠している事を確認。

 その後、揺さぶりをかけるため、二機のヘリと一両のストライカーによる強襲突撃を実行。

 見たこともない乗り物に慌てふためく賊達を潜入部隊が背後から仕留めていったそうだ。

 もちろん非殺傷。


 次から次へと気付かれることなくダウンさせれば、外側の奇怪な乗り物。内部からは突如としてバタバタと倒れていく味方達に恐れ戦く賊達。

 だが、そんな中でも奮い立ち、懸命に立ち向かおうとする姿勢を見せたそうだ。


「それは素晴らしいですね」

 不可思議な現象が目の前で起こっても立ち向かえるだけの胆力があり、冷静にも行動できる者達だと称賛すれば、ミュラーさんも俺に同調してくれる。


「あの。よろしいか」

 ここで地方豪族の方が恐る恐る手を挙げ、なぜ内部の者達は潜入した貴方方に気付かなかったのか? と説明を欲しがっていたので、ミュラーさんは言うよりもと、俺たちの目の前から瞬時にして姿を消した。

 これには目の前で話を聞いていた王様をはじめ、臣下の皆さんに質問した豪族の方も驚きの声を上げた。

 

 ノリの良い方々なのだろう。ミュラーさんが姿を消してからワンテンポ遅らせて、整列していたS級さん達も一斉に姿を消せば、更に驚きの声が上がった。

 地方から来てくれた兵士の方々からは驚きと一緒に悲鳴のような声も上がっていた。

 幽霊という単語も出たくらいだ。

 

「ミュラー」


「はい」

 ゲッコーさんが名を口にすれば直ぐさま姿を見せて、


「こういう事です」

 二の句を継ぐも、


「あ……はあ……」

 豪族さんは目の前の起こった現象に、ポカンと口を開きながら返答し、首を傾げるだけ。

 正直、至極簡素に答えられても分かんないよね。答えは言ってないんだから。

 自由自在に姿を消すことが出来ると無理矢理に理解してもらい、話を続けるミュラーさん。

 

 砦内部では、恐れ戦きながらも戦おうとする姿勢を見せる賊。

 外側では砦に接近してくる飛翔体に対し、砦に備わったバリスタにより飛翔体――つまりはリトルバードやキラーエッグに攻撃を加えようとも試みたようだけど、キラーエッグが装備した二門のGAU-19・12.7㎜ガトリングが間断のない火を噴けば、バリスタは他愛なく木っ端にされ、砦を守る固く閉ざした門もストライカーにより破壊。

 内と外からの驚異によって、賊がいた砦の全てを瞬く間に制圧する事に成功。


「ドム。どうされますか?」

 主語が抜けているものの、ミュラーさんの頭が着陸したリトルバードへと向けられれば、皆してそちらへと視線を向ける。

 

 視線の先にはリトルバード内で待たされる人物。

 視線が集まったところでリトルバードより降ろされる。

 ――――風体はよく分からない。

 理由は、頭に黒い袋を被らされているから。

 人物は、視界の自由を奪われる以外にも、フレックスカフなる樹脂製の手錠で拘束されていた。

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