PHASE-682【リッチというより好々爺】
「ボクって言うから男だと思ってたんだけどな」
まさかのボクッ子とはね。
美少女のボクッ子はレベル高いですよ。
「顔がだらけていますね」
「そうですか? 普段から引き締まってはいないと思うんだけど」
「なぜ開き直るのか……」
コクリコからの呆れ声にはこう返答すれば、やれやれと肩を竦める。
しかし擬人化できるとはね。
という事はだよ。
「高位のドラゴンって事は、火龍や地龍も擬人化できるって事だよな? リン」
「出来て当然でしょう。
だったらなぜに地龍は馬小屋なんかで待ってたんだよ……。
馬小屋に繋がれたからそのままいるもんだとでも思ったのだろうか?
――……くそ真面目だからな。あり得るな。
でもこの世界では神にも近い存在なんだろう。人の姿になって俺たちと行動すればよかったものを。
まあいいか。過ぎた事だ。
「じゃあ、これから宜しく頼むよイルマイユ」
視線を合わせるように膝を曲げて話しかければ、オドオドとしながらも遮蔽物にしていたリンから出てきて手を伸ばしてくるので、握手にて応対。
ビクリと緊張からの震えがしっかりと伝わってきたが、その後はギュッと握り返してきてくれる。
玉肌の肌は柔らかくて温かい。
俺いま幸せ。
「完全に変態になってますね」
「ええ、変態ね」
オイオイお二人さん。俺まだ十六だぜ。
見た目だけならイルマイユはコクリコと同じくらいだぞ。
十六歳が三歳年下の十三歳と並んで歩いても違和感ないでしょうよ。
例えるなら高校男子と女子中学生だぞ。
高校一年が中学女子と仲良くなるのっておかしいのか?
俺の周囲にはそんな奴らがいなかったから分からないけども、やはりロリコンあつかいになるのだろうか?
――……十六で十三の恋人か…………。うん。中々の歌舞伎者だな。
二十三で二十歳だとまったく問題ないのにな。
別に恋人ってわけでもないけどね。
ただ手を繋いだだけで恋人と想定として、ここまで想像を膨らませることが出来る俺は、心底童貞なんだなって再確認したよ……。
「これからよろしくお願いします」
「もちろん。俺たちが守ってやるよ」
言ってあげれば純粋な笑みが返ってきた。
さっきまで変な事を考えていた自分を全力で殴ってやりたい。
――――。
「戻られましたか」
「戻りました」
典雅な挨拶を眼前の対象におこなう。
「そこまで畏まらずとも。ダンジョンへと足を踏み入れる前は普通に会話をした仲ではありませんか」
「そうですね」
「本当にどうされました?」
ディザスターナイトを十体くらい同時に相手しても問題ないというのを知ってしまえば、平身低頭な姿になってしまう俺が勇者なのです。コリンズ氏。
「地底湖から出る決心がついたようだね」
「はい。いままでありがとうございました。コリンズさん」
うんうんと好々爺みたいに頷くコリンズ氏。
髑髏に皮だけがへばりついてるリッチの笑みは……、人間である俺の主観だと怖い。
イルマイユはコリンズ氏の笑みに、幸せそうな笑みで返しているけどね。
「勇者殿――」
「もちろん。イルマイユに危害が加えられないように、我がギルドにて全力で面倒を見させていただきます!」
凄みによるお願いをされる前に、先にコリンズ氏の言いたい事であったろう台詞を先手で述べれば、大きくゆっくりとした首肯が返ってくる。
擬人化が出来て、しかも美少女の姿。
コリンズ氏が孫娘激Loveな立ち位置に見えてしまう。
もし孫娘になにかあろうものなら、エンレージMAXで俺の直上に大魔法でもぶちこんできそうだからな。
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