PHASE-658【デカくて速い】
「もういっちょ」
モロトフを投擲。
バフンッと爆ぜるも足止めにはならない。
今度のはタワーシールドに直撃。体に飛び火することはなかった。
炎を盾に纏わせたまま、スパイク部分を俺に向かって叩き付けてくる。打撃、刺突に加えて炎のダメージを俺が付与した形だな……。
ターゲットはモロトフ投擲の仕返しとばかりに俺。
壁のように迫る盾を横移動で避ければ、次はファルシオンによる下段からの斬り上げ。
手にした松明を顔に目がけて投げて牽制し、石棺の下に滑り込むようにして斬撃を躱すも、石棺を他愛なく両断する膂力は驚異だ。
「ゴォォォォォォ」
唸りのような呼気から、追撃の構えのディザスターナイト。
「なめんな」
力勝負なら最近の俺も自信はある。
両断された石棺の蓋部分を諸手でガッシリと掴んで、腰の回転を利用してから投擲。
ピリアにより強化された膂力による投擲だ。
「ヴァ!?」
タワーシールドで防ぐけども、質量を受けきることは出来ずによろける。
ここで追撃なんだが、俺以上にそこら辺の嗅覚が達者なのが仕掛けると信じていれば、
「ポップフレア」
ワンドの貴石が強い赤色に輝き、ファイヤーボールサイズの火球が勢いよくディザスターナイトの背中に直撃。
ボンッと小さくもしっかりとした爆発が背中に命中。
纏っている漆黒でボロボロのマントの一部が舞い散る。
「グァァァァァァ!」
「うるさいですね」
追撃の魔法をと考えるコクリコだけども、咆哮により魔力集中を阻害されたので追撃方法を変更。
ワンドを左手に持ち、右手にミスリルフライパン。
至近戦。
俺もそれに合わせる。
シャンと冷ややかな音と共に抜剣。
真鍮色の剣身からなるオリハルコンのロングソードが、タリスマンが発するファイアフライの白光の灯りと美しく混じり合う。
対するディザスターナイトが手にするファルシオンが鈍く輝けば、魔法の返しとばかりにコクリコに横薙ぎ。
「なんの!」
「――すげぇ」
ミスリルのフライパンで防ぎきる。
豪腕からなる横薙ぎだから防ぐ事は出来ても、軽量のコクリコは簡単に飛ばされてしまうけども、そこはあえて飛ばされたとばかりに宙を舞うコクリコの姿勢制御は見事だった。
体を空中でよじって姿勢を整えてから、とんぼ返りでの石棺への着地。
小馬鹿にしたような笑みを湛えるコクリコに、アンデッドが怒りを抱いているのか、さらなる一撃をと動く。
でかい図体で重そうなタワーシールドを持っているってのに、随分と俊敏。
「アクセル」
ま、俺の方が速いですけど。
コクリコへの迎撃を許してやらない俺は、直ぐさまディザスターナイトへと接近し、後ろ袈裟による一撃を入れた。
――……つもりだった。
「にゃろ!」
流れるような動きはパワー型の外見とは別物。
漆黒のボロマントが影を残したような錯覚を起こさせ、本体は俺の背後へと回り込んでいた。
敵ながら素晴らしい歩法。
コクリコから俺へとターゲットを変更しての大上段からのファルシオン。
両足をしっかりと開いて腰を落とし、剣身でしっかりと受ける。
ずっしりとした衝撃が、受けたロングソードから腕、背中、腰から足へと伝わってくる。
体中の骨が軋む音がしっかりと耳朶に届いた。
「くぅ……」
捌いて前方へと飛ぶように移動。即、反転して向かい合う。
流石は伝説に語られるアンデッド様。力も動きも一級品だ。
互いに間合い――。
地に向けていた切っ先を相対する方へと中段の構えにしてから挑もうとすれば、構える時間など与えるものかとばかりの、気概のシールドバッシュ。
「こなくそ!」
スパイクに触れないように心がけながら、構えを中断して右足を前方へと突き出す。
黒のカリスマばりのケンカキックをタワーシールドへと見舞ってやる。
トロールやオーガなどの大型亜人と比較すれば、俺とディザスターナイトの身長差はさして変わらない。
ピリア全開のケンカキックならば、助走のない盾の一撃を止める事は、さほど難しいことではなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます