PHASE-644【C・S「解せぬ……」】
「ちなみにダンジョン攻略の評価で俺たちの実力ってどのあたり?」
願わくばベテラン以上がいいな。
「間違いなくトールは強者ね」
「おお」
ベテラン以上の高評価だった。
「聞かずとも理解はしてますが――私は?」
「そうね。総合評価だとベテランかな」
「おっと、トールよりも下だと? しかも総合評価ってなんですか」
「魔法だけだとノービス脱却。格闘センスをいれると飛躍的に向上してベテランってとこ」
「当てにならない評価のようですね」
「そうかしら」
俺としてはド正解だと思うけどな。
流石はアルトラリッチ。長い時を過ごしているだけあって見る目は確かだ。
ちなみにシャルナは俺と同じ位置。
ベルやゲッコーさんの評価を聞けば、偉大なるアルトラリッチは顔を引きつらせると、あの二人は強者どうこうというより、自分なんかが推し量れる存在ではないとの事だった。
特にベルは異質すぎるとの事。
極位の障壁魔法であるアンブレイカブルを紙のように斬るという理を無視した一閃は、この世界の存在じゃないと強い衝撃を受けたそうだ。
まあ、それは正解なんだけどな。
もしかしたらベルの浄化の炎は、この世界の理を完全に無視できるだけの力を持っているのかもしれない。
うん、チートだな。分かってはいたけどチートだと再確認。
ベルとゲッコーさんの評価になると、瓜実顔を引きつらせながらも、その力には魅了されているのか、自然と弁に熱が入るリン。
自分を評価する時とは別人のようなリンに、コクリコは何ともおもしろくなさそうだった。
「それよりもこの休日の間に作ってくれましたか?」
無理矢理にとばかりに、熱を帯びたリンの弁を止めるコクリコ。
「え? なにを?」
「決まっているでしょう。タリスマンですよ。私専用のタリスマン!」
リンに作ってもらおうという欲望を口に出してたっけ。
当の本人は作ってないとすげなく返していたけど。
コクリコのプランでは、このダンジョンにてタリスマンを使用すると目論んでいたようだ。
「まったく! 私は貴女のタリスマン製作に期待していたのですがね」
「まあそう怒らないで。このダンジョンには魔力を高める装身具もあるから、それを手に入れればいいんじゃないかしら」
「おお! ならば我が物としてやりましょう!」
現金なヤツである。
というか、あるからって発言はどうよ。
あるかも? じゃないんだな。
階層も理解しているし、上のログハウスには監視役もいるわけだから、リン達はこのダンジョンを攻略しているって事だな。
「さて」
腰のホルスターから抜いて弾を確認。
「また新しい物ですか。なんだか以前、使用していた物に似てますね。今回のは短いですが」
「ああ、FN-57だとアンデッドを倒すのに時間がかかったからな。マテバのウニカと同じ設計者たちが作った、チアッパ・ライノの4インチモデルだ。原点回帰の.357マグナム弾だからな。これならスケルトンの頭部も一発だろうさ」
「長々と嬉々として武器の話をする人は、危険な思想を持っていると思われますよ」
「お、おう……」
「しかも結局は同じような武器に戻るんですからね。だったら最初ので良いでしょうに」
「コンパクトサイズが……格好いいだろう」
「ゲッコーも大変ですよ。コロコロと新しいのを要求してくる現金なトールには」
「ぬ、うぅ……」
内心でコクリコの事を現金なヤツと思っていた矢先に、その本人からカウンターを喰らってしまうとは……。
いいじゃんよ。見てよこのライノのイノベイトなデザインを。
ルックスだけなら俺はマテバのウニカより好きなんだぜ。
銃のフロントサイト部分が犀の頭部に似てるからライノって名前なんだよ。
銃上部の肉抜きによる軽量もさることながら、見た目も格好良くしているだろ?
表面処理のブラックによる仕立てが、壮麗な外見にしてくれているし。
設計者のアントニオとエミリオの二人は天才だと思わんかね?
「なんか入り込んでるわね。この子の言うように、ちょっと危険な感じがするわよ」
リンまでどん引き。
「たまには足首に備えたのも思い出してあげてくださいね」
と言いつつ、コクリコがランタン片手に前へと進む。
その後をリンが続く。
ランタンの弱い光源により向けられるリンの顔は、可哀想な男を見るような表情だった……。
せっかく、いい男発言をもらったのに、そんな表情を向けないでくれよ……。
「ま、まってくれよう……」
前衛を置いていくなよ。
ちゃんと活躍するから。アンクルホルスターのチーフスペシャルも使用するように心がけるから。頑張るから。
頑張るようなエンカウントが発生しない事が一番だけども。
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