PHASE-636【正解!】

「そんな注目を浴びるであろう奇跡の霊薬の材料なんて何処にあるんだ?」


「決まっています!」

 得意げに胸を反らすコクリコ。

 反らしたところで残念なくらい真っ平ら。

 う~ん。ランシェル


「なんかムカッとしたものを感じ取ったんですが」


「たぶん合ってるよ。格好良く言うとエサクタ。おまえも正解と言いたい時はエサクタって言えばいいから。それが通だから」


「エサクタ――ですか」

 ね、こうやって琴線に触れるような言葉を教えれば、直ぐに話題をずらせるからコクリコは単純でありがたい。

 さて――、コクリコの胸部分を内心で小馬鹿にもしたところで、


「決まっているって発言からして、なにか提案が有るのだねコクリコ君」


「エサクタ!」

 早速、使用するあたりコクリコだよな。

 小声でゲッコーさんもエサクタと言っていたのは聞こえなかったものとする。

 続きをと促せば、


「そこのアンデッドが言っていましたよね。エリクシールがどうたらって」

 ――……確か言っていたような……。

 姫の呪解をお願いした時に、エリクシールを使用すればいいじゃないかって言ってたような記憶がある。

 エリクシールの素材を探せ。とか、以前は持っていた。とか、


「――――うん! 確かに言ってた」


「言ったがなによ」


「以前は持っていた。素材を探せ。ここから考えるに、素材がなんなのか知っているし作れるって事だよな」


「作れるわよ」


「よっし! エリクシールの素材集めしようぜ」


「高難易度の採取になるわよ」


「お前と戦った時より大変か?」


「そう言われると下になるだろうけど」

 ならば何とかなるかもしれない。


「だったら楽ですね」

 ここでコクリコが調子に乗る。

 勝利者としての見下しである。あれだけの実力差を目の当たりにしているのにな。

 リンを擁護するような成長も見せたってのに、マウントを取りたがるところは変わらない。

 強気が変わらないのはいい事でもあるのかな。弱気よりはいいからな。 


「あのね。私は全くもって本気を出していないの。エルダーを貴女たちにぶつけていないでしょ。それ以上だって召喚していないのに」


「ハハハ――――」

 乾いた笑いだ。勝者として相手を侮辱する笑い方だ。

 戦闘中に散々と小馬鹿にされたからか、ここぞとばかりに有利ポジションに立ち続けたいコクリコは、


「いいですか。戦闘中に本気を出さないのは勝手ですがね、その慢心で敗北しているのですから、あの時は本気を出さなかったなどの発言は無様な弁解でしかありません。常にベストをつくす。それが出来ない者はどれだけ凄かろうとも、敗北の道を歩むというのが運命なのです。慢心で命を落とすのが戦いの運命。貴女は存在しているだけまだ運が良いのですよ」


「……い、言ってくれるわね……」

 ドヤったコクリコだけども、言っている事は正しいんだよな。

 大人気漫画に登場するキャラは、戦闘力と勝敗は別物って言ってるしな。

 どれだけ強くても、余裕が過信になった事で敗北するっていうのは、漫画やラノベなんかでもよくある光景だ。

 ジャイアントキリングってやつだな。俺も実際に強者たちと戦ってそれは経験している。

 まあ、リンの場合はベルやゲッコーさんを含めた状態の俺たちと戦っているから、総合面ではこっちがダントツの強者ポジションだったけどね。

 でもコクリコの台詞に対して言い返せない辺り、思うところもあるんだろう。


「私の発言が正しいと言うのを理解したようですので、さっさと私達をエリクシールの素材がある場所に案内していただきたい」


「……断ったら?」


「エサクタ! その発言で完全に場所を知っているというのを理解したので、絶対に案内させます」


「やるな。エサクタ!」

 コクリコの口八丁が上手い具合にリンを追い込んでいる。

 ゲッコーさんもこれには感心していた。

 というか二人とも、エサクタはかけ声じゃないぞ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る