PHASE-628【ただゲームするだけ】

「それにしても、発売から五年くらい経つゲームだけど、未だに息が長い」

 俺としては嬉しい限りだけどね。


 では早速、


「始めますか」

 初めて知ったけども、ポーチの中にちゃんとカナル型のゲーミングイヤホンマイクが入ってた事に今更ながら気付く。

 普段、使用する事がないからね。

 長年使用していてふと付属アクセサリーが有った事に気付くあるある。

 ――いや、ないかな。俺と少数の同志くらいか。

 イヤホンマイクを両耳につけてゲーム音を聴けば、重厚なサウンドを頭の中にまで響かせてくるダイナミックなもの。

 全包囲から聞こえてくるような圧倒的な音は、お高い7.1サラウンド――いや、最早9.1の世界なのではないのだろうかと驚かせてくれる。 

 買えば二十万以上するくらいのやつだな。

 ――……まあ俺が元の世界で使用していたヘッドセットは、三千円くらいのものだけどね。

 正直、高級なのがどのくらいの音を耳に届けてくれるかは分からんが、このカナル型は間違いなくいい代物だ。

 カルナ型なのにヘッドホンみたいな臨場感だった。


「よっしゃ!」

 パリッと気合いを入れる感じでポテチを咀嚼してスタート。


「おお! 素晴らしい!」

 クイックマッチだったけどもあっという間にインできた。

 待ち時間が数秒とはお見事だ。

 俺の平均キルレは1.05とへっぽこだけど、楽しければよかろうなのだ。

 1を切っていないから、味方さんには温かい目で見てもらいたい。

 CFは大人数でプレイするから、俺みたいな普通人がいても許されたりするのもこのFPSのよさでもある。

 

 ――兵科を設定。

 もちろん大規模コンクエストなので、サポートもこなせる工兵を選択。

 縁の下の力持ち系プレイヤーを目指す俺は、基本は工兵だ。

 SMGやPDWがメイン武器となるけど、ロケランも携行できるから楽しい。

 お気に入りはMP7。


「マップはForefrontフォアフロント Bawsharバウシャルか」

 このマップは市街地戦および海戦もある。高速戦闘艇の操舵が上手い人がいると制海権がとれるマップ。

 後は見通しのいい海岸ではスナイパーに気を付けつつ、市街地戦で熱い戦い繰り広げて拠点を得るマップ。

 俺が所属する分隊はDelta。

 四人一チーム。俺以外はアサルトライフル持ちの突撃兵だ。対歩兵は分隊長と分隊員に任せて、俺は味方戦車の掩護をしつつ拠点に旗を立てよう。

 旗を立てて相手のチケットを減らしていって勝利するのがこのゲーム。

 目指すはC旗。

 A~Eまである拠点の場合は基本、中心となるC旗を制した方が勝利を得るというのがこの系統のゲームだ。

 相手も同じことを当然考えるわけで、


「タリホー二時方向、敵性歩兵数ふた

 なんて、マイクのスイッチも入れてないただの独り言。

 でもこれが臨場感が出て楽しかったりする。

 上空からは敵輸送ヘリも接近。

 パラシュートが開いているのも確認できる。


「迎撃してやる」

 着地する背後から狙い撃てば余裕ってもんだ。

 物陰に身を潜めてタイミングを窺い――、


「もらった!」

 MP7にて相手の背中にエイムを合わせたところで、


「あれ?」

 なんで俺がやられてんですかね。

 相手が即、振り返れば、MP7と同レートクラスのP-90にてやられる。

 即応の振り返りから速攻でやられたので、ヘッドショットで倒されたようだ。

 その証拠に、画面にもヘッドショットで倒された事を意味する、髑髏が砕けたようなマークが表示されている


「まあまあ、いつもの事ですよ」

 開幕キルよりデスが多いのが俺だからな。

 気を取り直して分隊からリスポンし、C旗に入り込んだ敵を倒す。

 ――……倒す。

 ――…………倒す。

 ――………………倒す……。

 ――……ちょっと待て。なんでこんなにもヘッショでばかりやられるの?

 全てのキルで髑髏が砕けたマークが出て来るんだけど……。

 精密すぎるだろ。

 マウス? マウサーの集いなの?

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