ダンジョン何階まで潜れる?
PHASE-627【日本での休日のように】
俺の戦場へと赴くような姿勢に、周囲の皆さんは威圧されている。真剣な表情で強い足取りだからしかたない。
何かしらの覚悟を皆さん俺から感じ取ったようで、道をあけてくれる。
向かうは美しい白銀の長い髪。
とても目立つので直ぐに捕捉する事が出来る。
後は声をかけて言うんだ。明日、用事はあるのかと。
「ベル」
目標の前で足を止めて名を口にする。
緊張していたが、声が上擦ったり裏返ったりしたものにはならなかった。まあ、文字にして二文字を口にするだけだったからな。
「どうした?」
長い呼気を行い肩を弛緩させてから。
「明日、暇か」
言った! 言ってやった。これで暇と返ってくれば、後はノリと勢いで一気に誘う。
「暇ではないな。明日はこの子たちが生活を営む集落の手伝いをしなければならないからな」
――……ほくほくの表情は帝国軍中佐のソレではなく、乙女のソレ……。
足元に目を移せば――、ガルム氏の子供たち。つまりはヴィルコラクキッズ達。
モフモフの子供たちの為に集落で料理を作るって事だった。
侯爵が中心になって集落建設をしてくれているからいいんじゃないだろうか。とは言えない俺…………。
――…………。
「よ~し。お菓子OK。飲み物もOK」
侯爵に頼み、料理人に無理を言ってポテトチップを作ってもらう。
この世界では未知の物だったが、俺の知る知識を伝えて、ジャガイモを薄切りにし、水気を取って油で揚げてもらい、塩を振ったシンプルなポテチを作ってもらった。
白磁に細かい金の装飾が入った大きいサラダボウルに、ザッとポテチを山盛りにしてもらえば、袋から食べる物より高級感が漂ってくる。
興味のあった料理人たちも口に運べば、これは流行るかもしれないと言ってくれたので、王都に戻ったらポテチを活用して、ギルドの為に一財産を稼ぐのもいいかもしれないな。
――――用意してもらったポテトチップを寝室のナイトテーブルに置く。
更に手を汚さなくていいように、サラダなんかで使用するトングも借りる。
これに加えてオレンジエードも準備。
オレンジジュースより味は薄いけど、蜂蜜たっぷりで甘みは十分。
これをビッチャーにいれてもらい、リンに氷の魔法を頼む。
氷結魔法は細かな成形も可能なようで、ビッチャーを囲うようなデザインの氷を作ってくれた。
氷に囲まれたビッチャーを洗面器にのせ、これまたナイトテーブルに置く。
これで常にキンキンに冷えてやがる! といった状態が楽しめる。
「さて」
早速トングでポテチを一枚つかんで口に運ぶ。
「うむ」
パリパリとした食感が懐かしい。スライサーではなく料理人が包丁で薄切りにしているから厚切りではあるが、これはこれで強い食感を楽しめてよい。
しかしトングでポテチを口に運ぶとかメチャクチャ懐かしい感じがする。
この世界に来る前は夏休みだったし、徹夜でゲームをしながらこうやって食べてたよな~。
熟れたもんでヒョイヒョイと口に入れる事が出来る。
バランスのいい塩加減は、流石は侯爵の料理番といったところ。
結構な枚数を食べても喉は渇かない程度の塩加減だ。
でも油は当然あるので、ここでオレンジエードをグラスに注いで一気に呷るように――――飲む!
「くぅぅぅぅぅぅ! 最高だ!」
いいぞ。怠惰な夏休みを過ごしていた時の俺が戻ってきたぞ。
世界は違うけども、ポテチとエードを口にする度に、自堕落な俺が復活しようとしている。
ベルが見たら間違いなく怒るだろうが、休日の一日くらいは自堕落でもいいだろう。
それに……、今日はいないしな……。
今ごろはモフモフ達と楽しんでいるんだろうし……。
いまは昼食くらいの時間帯かな~。
「……ま、まあいいや……。俺にはこれがある!」
セラがメールで伝えてたように、プレイギアを本来の使い方で楽しもうじゃないか。
起動するのはCFことコンバットフィールド。
大規模で楽しめるFPSである。
といってもオフラインのキャンペーンしか楽しめないだろうけど。この世界に来てからゲームプレイとして起動するのは初めての試みだからな。
――――いやまてよ。セラとメールが出来る時点でオンラインも可能って考えるべきか。
そう考えると凄いな。光回線もWi-Fiも無い世界でオンラインがプレイ出来るなんて。
ものは試しにオンラインマルチプレイを選択すれば――、
「おお! 普通に繋がってるじゃないか! しかも人いる」
各サーバーには人数が表示されている。
最大で四十人が参加できるゲームだけど、表示されるサーバーの殆どが満員御礼だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます