PHASE-626【ゲームよりデート】

 ピローン♪

 相も変わらず返信が神速である。流石は死神。神である。


{長い間、連絡を取らなくても普段からこういうやり取りをするのが俺って人間だから。ってのを装っているメールを送るという手法ね}

 ――……チッ、ばれてやがる。


{ごめんて。忙しかったの。最近、本当に忙しかったの。レベルの上がり方で分かるだろ}

 なんでコイツとやり取りする時って、遠距離の恋人に言い訳しているようなメールみたいになるんだろうな。

 童貞だぞ俺。


{忙しくてもちょっとくらいの連絡は取れるでしょ}

 ――…………うぜっ。セラ、うぜぇ。

 恋人気取りかよ。むしろ美人が恋人なら嬉しいけどな。鬱陶しくない美人に限るけども。


{こっちは魔王討伐のために色々と努力してんだよ。そもそもなんで連絡を一々せにゃならんのだ}

 お前がこの異世界に送り込んだのは魔王を倒してって事だったからだろ。

 こっちの世界で頑張ってる人間がメールをしないからって、病みかかったメールをよこしてさ。本当に暇神じゃねえかよ。


{私達はフレンドでしょ。フレンドなら毎日でもメールでやり取りしないと駄目でしょ}

 フレンドってそんな面倒くさい関係じゃないと思う……。

 自分と同じゲームやってる連中と協力してからゲームするって事だし、今度いつ集まるとかの連絡だけをすればいいだけの関係じゃないの? 

 俺のフレンドの場合はリアフレがそのままゲームフレンドだからそこら辺はよく分かってないけども、フレンドってそんなに重い関係ではないと思う。

 にしても面倒くさい死神だな。

 コミュ障をこじらせるとこういったのになるんだな。間違いなくセラはストーカー予備軍だね。


{まあ、たまには報告をさせてもらうよ}

 妥協はここまでだ。まじで毎日なんて無理。

 そもそも俺はそういった連絡とかのやり取りをめんどくさがるタイプですから。 どういった内容で返信するかを考えて、結果、やる気がなくなって返信をしない男ですから。


{仕方ないわね。でもちゃんと連絡をいれるように}

 ああ入れるよ。入れないと怖いメールが連続で来そうだからな……。

 しかし、偉そうな書き方だな。まじでなんなのこの死神。

 お前のいる世界で、お前を相手にしてくれる神様とかいないのかよ。

 ルックスもスタイルもいいのに、性格がアレだと近づかれなくなるっていう典型だな。


{それで、これからの計画は?}


{ああ、数日はゆっくりするよ。その後は王都に戻って侯爵の助力を得た事を伝えるさ}


{着実に進んでいるようね}

 これがチートさんだったらサクサク進むんだろうけどな。

 俺はこの辺の進み具合が遅いのはしかたがないよね。

 なんでもかんでも剣を一振り、魔法一つ発動で終わらせられるって力は持ってないから。

 俺のパーティーにはいるけど。

 でもスパルタだから基本は俺が解決しないといけないからな。


{数日は休みでやる事ないなら、たまにはプレイギアを本来の使い方でもしてみたら?}

 本来の使い方ね~。

 まあ、たまにはいいかもな。

 肯定的な返事をすれば、直ぐさま何時くらいにインするのか聞いてくる辺り、絶対にフレンド参加しようとしているな。


 ――――なんとか重度の病みに発展させずにメールのやり取りを終える事が出来た。

 メールさえ来なかったら、本当だったらベルと買い物とかでもと、勇気を出して誘うつもりだったんだけどな。

 ――――いや、まだそのチャンスはある!

 ゲームもいいが、ベルとドヌクトスの盛り場で楽しくデートってルートの方が良い。

 最近は怒られる事も少なくなったし、距離感が縮まっているとも思うんですよ。

 戦闘中でも短いやりとりでの以心伝心みたいな事も出来ているし。


「まだだ。まだ終わらんよ」

 夜風で酔いを覚ましたのは良くなかったな。

 酒の力を借りて、その勢いで誘う事も出来ただろう。

 齢十六にして酒の力を借りるというパワーワードは、異世界だからこそ許されるものだろう。

 ま、夜風で酔いが覚める以前に、セラの恐怖メールで一気に酔いは覚めてしまったけどね。

 覚めてしまったが俺は勇者。勇気のある者だ。なのでしらふでも誘う事なのど容易だ。

 と、暗示をかける。

 ずっとバトルだったからな。たまにはラブコメ路線でもいいじゃない。

 早鐘を打つ鼓動と共に俺は歩む。

 バルコニーから大広間へと戻る。

 進む足は緊張から鈍く感じるが、一歩一歩の足取りは強いものだ。

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