PHASE-611【意地の見せどころ】
「悪い冗談!」
俺の大上段からの気概に気圧されるように、二人してエビルプラントからイジェクトとばかりに飛び退く。
それに続いて俺も花弁から離れるように、天井に届く勢いで跳躍。
次の一手が想像できたからな。
二人が飛び退いても動くエビルプラントに対して、
「本当は術者がいいんだろうが、お前で勘弁してやる」
シャルナの思いを乗せたかのように、ゲッコーさんの低い声とレールガンの劈き音が響けば、二発目の弾体はエビルプラントの花弁部分に直撃。
「ギギギッ……」
鳴き声なのか軋み音なのかは分からんが、弾体が容易に花弁を貫けば、初弾同様に力の間の壁にぶつかって爆ぜる。
爆ぜるのと同時に、茎が力なくぐしゃりと曲がり、エビルプラントは沈黙。
脅威が一つ減った事を確認したところで、
「コクリコ!」
「お任せを!」
さんざっぱら馬鹿にされていたオムニガルが慌てふためいて飛び退いたところを見計らったかのように、琥珀の瞳が猛禽のように鋭く輝き、うなだれる蔓から跳躍しての、
「捉えましたよ」
「お姉ちゃんじゃ無理だよ」
「無理をしてでも行動するというのが内のパーティーの掟と述べたでしょう」
そんな掟はない。
俺たちみたいな普通人が、チートさん達に必死に付いていくための決死の思いでしかないんだよな。
ま、そういった気概は嫌いじゃない。
などと内心で格好つけつつ。
「いけコクリコ。無理を見せてやれ!」
「見せて上げましょう。我が新魔法!」
え!? そんなのあるの?
――――ああ! 確か、アスタ・ラ・ビスタ、ベイビーを覚えようとしている時に、我が新たなる力がどうとか言ってた様な気がするけど、あれって本当だったのか。
跳躍してオムニガルまで接近すれば、ワンドの貴石の色が赤色に輝く。
ファイヤーボールでも、
「くらうがいいポルターガイスト! 我が新術――ポップフレア!」
「ええ、中位じゃない」
初めて耳にする魔法は中位魔法だそうだ。
呆れているオムニガルだったが、
「え、ちょっと待って! 近い近い!」
「知りませんね! 我が怒りを受けるがいい! アスタ・ラ・ビスタ、ベイビー!」
「あ、ちゃんと言えてる」
零距離。ワンドがオムニガルに触れる位置まで届けば、ボカンと大きな音と小規模爆発が発生。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
幼い子供の叫び声が耳朶に届く。
「この私を怒らせるからこうなるのですよぉぉぉぉぉぉ!」
って……。
「お前もボロボロじゃねえか!」
ウシャンカは吹き飛び、コートもボロボロ。
体から煙を上げながら落下していくコクリコ。
ただ、傷つきながらも吹っ切れたような笑みを湛えていたのが一瞬だったけど見えた。
とはいえその高さから受け身なく落ちるのは……、
「プロテクション」
空中でコクリコが大の字で留まる。
ゲッコーさんに背負われたシャルナのプロテクションが台の役目をしてくれたようだ。
「嘘でしょ。オムニガル」
コクリコと違って吹き飛び落下していく少女を見て驚くリン。
レベル70超えが中位魔法一発でダウンってのが信じられないようだ。
クリティカルってのがあるからな。
焦って飛び出してしまい、ノーガードの状態で決死の一撃を決められた事が、敗北という結果に繋がったわけだ。
「内のコクリコを小者と思って油断したからああなるんだよ。油断ではなく余裕と言っていいのは、ベルと全身包帯の弱肉強食さんだけだ」
「最後のは誰の事? マミーマンのことかしら」
「余裕があるように返しているつもりか? 表情は引きつってるぞ」
「うるさいわね!」
オムニガルがやられたことで浮き足立ってるな。
それを見逃すほど俺はヌーブではない。
空中で姿勢を整えつつブレイズを解いて、刀を反転させて峰をリンへと向ける。
「峰打ちとは生意気な!」
剣を作りだして手にするリン。
煌びやかに輝く光の剣。
アローンクリエイトによる武器製造は便利だな。
空中にて光の剣を振ってくるリンに対して俺は落下するだけ。
でも信じている。
落下が始まると直ぐに足の底に感じる地面のような感触。姿勢を整えたのは着地が上手くいくようにだ。
内の美人エルフがプロテクションにて、空中に床を作ってくれる。
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