PHASE-609【普通組の力を見せて上げよう】

「最善の手は、相手に力を使わせないようにすることだ」

 レールガンから離れているゲッコーさんはRPG-7を担って即座にエビルプラントに発射。


「威力は大したものだけど無駄よ」

 得意げに言うだけあって、エビルプラントの前で障壁によって防がれる。


「じゃあ、数で押すだけだ」

 と、矢継ぎ早にRPG-7を発射するという光景。

 撃っては弾頭を装填して撃つを繰り返す。


「爆音がうるさいし、爆炎で視界を遮らないで……!? って、だから斬らないの!」

 RPG-7の攻撃を防いでいる間にベルがオベリスクの一本切り倒す。

 三本目は青色。これで水系の上位以上のクラスは威力減だな。

 ベルを阻害するために蔓での払いや、トゲの射出による攻撃を仕掛けてくるけども、それらは俺が防いでいく。


「邪魔ね!」

 明らかに苛立ちが窺える。そこを隙と見定めて、今度はこちらから迫る。

 即死系は怖いけども、今となっては障害物はない。

 スケルトン兵は先ほどの大魔法でいなくなっているから、接近するにはエビルプラントの攻撃を躱せばいいだけだ。


「コクリコ」


「いいですとも!」

 こっちとも以心伝心。

 二人してエビルプラントに迫れば、相手の攻撃は分断される。


「ちっちゃいお姉ちゃん。無茶しちゃ駄目だよ」

 挑発をしてくるオムニガルは小馬鹿にしたような笑みを湛えている。


「無茶をしないと前には進めないのですよ。この戦闘も、人生もね。分かりますか? おチビさん」


「むっ!」


「貴女方に侮辱されようとも、私には私を信頼してくれている味方がいます。どれだけ馬鹿にされても味方が信頼してくれるなら何とも思いませんよ。あり得ないと発する探求者とそのお供」

 と、ここでベルが発した事を真似て言い返すコクリコ。

 ベルの発言がよっぽど嬉しかったようだ。


「生意気なお姉ちゃんだね」


「生意気なのはお返ししましょう」

 オムニガルもエビルプラントを操れるようで、手を前に出せば蔓が束となってコクリコの頭上から落ちてくる。

 魔法はまだまだ発展途上だが、こと身体能力となれば話は別。


「はっ!」

 快活良く跳躍して蔓の束に自ら接近すれば、逆上がりの要領で蔓の上部へと飛び移り、身を低くしながら蔓の上を駆け出す。

 この香港映画並みの軽業には毎度、感心する。


「振り落としてあげる」


「ハッハッハッハ! 無理、無駄、無謀ってヤツですよ!」

 小馬鹿にした笑い方をオムニガルに向ける姿。

 立場が逆転したようだ。

 おもしろくなさそうにオムニガルの口がへの字を書いてる。

 俺とコクリコが翻弄している最中に、ベルが更に一本を切り倒す。

 今度は黒色。これで上位以上の重力魔法の威力減と思っていいだろう。

 黒色からイメージすれば、もしかしたら即死系を封じたとも思いたい。


「あぁぁぁぁぁっ! もう!!」

 切り倒される事が相当に嫌なようで、美人なアンデッドは頭を掻きむしっている。

 アンデッドでなくても綺麗な女性が取り乱す姿はホラー。

 でも取り乱すからヘイローシャインの詠唱が耳朶に届くことはない。


「なんでアンブレイカブルを紙のように斬れるのよ!」


「それはベルだからさ」


「答えになってないわね。ライトニングボア!」


「おや? それはさっき俺に断ち切られたのにな」

 驚異としてはサーペントよりは低いけども油断していい威力ではない。


「しっかりと今回も斬ってやる」

 上位魔法であるライトニングボアは、サーペントに比べれば小型だけども、それでも巨木のような帯がうねりながら俺に向かってくる姿は、視覚的驚異としては十分だ。


「ふんす!」


「さっきもそうだったけど、無茶がすぎるわね」


「さっきコクリコも言ったけども、うちの普通組は無茶しないと周囲のチートさん達に付いていけないからな」

 ボアに対して再び残火を振るう。

 ストレンクスンとインクリーズによる筋力強化で右手一本で挑む俺。

 同時に左手ではイグニースを展開。スクトゥムサイズを縮小させてからの――、


「烈火!」

 をボアの側面に叩き込めば大爆発。

 腰を落として爆発に耐えつつ、残火を横に一閃。

 電撃による痺れを残しつつも、それ以上に自分が原因の炎が体に纏わり付く。

 まあ、火龍装備だから炎によるスリップダメージは皆無。

 左腕をダイナミックに動かし、マントを大仰に翻させながら、体に纏わり付く炎を振り払う。

 ついついその仕草が格好いいと思ってしまう俺がいる。

 自分自身に酔いしれたいところだが、そうなるとベルに注意を受けるので、ナルシシズムな自分を律する。

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