PHASE-532【最後まで面倒を見ましょう】

「お前、俺についてきたいのか?」


「に゛ぁぁぁぁぁぁぁぁあ゛」


「二つ返事だ」


「分かるんだ」


「当然である」

 ゴロ太も生き物と会話が出来るからな。神のような存在である四大聖龍リゾーマタドラゴンの一柱なら当然か。


「飼いましょう!」


「簡単に言うな」

 どうしても餌代がネックになる。

 象くらいデカい肉食獣ってどんだけ食べるんだろうか? 俺の手持ちの金で養えるとは思えない。

 飼いたがってるコクリコは普段から散財が凄いから、自分の生活費だけで終わりそうだし、餌代は俺が出さないといけなくなるよな。

 まあミズーリ出せば問題はないけど。

 でも可能ならばこの世界でのものが理想的なんだよな。

 依存は堕落に繋がるから。そうなると、チート二人が俺を怒るからな。


 コイツのレベルは17。俺が尻尾を斬り落としたから本来のマンティコアより戦闘力は落ちているだろうけど、一般的な魔王軍よりは十分に強い。

 

 餌代を消費するだけで白色級バーン黄色級ブィに含まれそうな実力を得られると考えても、費用対効果としてのうま味は……ないよな……。


「これだけ懐いているのだ。さっさと決めたらどうだ。野生で生きていくとしても、お前が尻尾を断ち切ったことで不利になっているのだから、責任を取ることも考えるべきじゃないか」

 痛いところを突いてくるね。

 さっきからだけど、腹を撫でながら真顔で発言しても、まったくもって説得力が無いぞベル。


「う~ん。先生がヒッポグリフを飼っているから、その流れでギルドの戦力として飼えば大丈夫かな~」

 個人では出せなくても、ギルドの運営費で賄えば問題は解決。

 身銭を切らないところが政治屋みたいだな。

 騎乗用戦力として獲得とすれば、融通も利きそうだな。

 よし、そうしよう。一度、王都に戻らないといけないけども、その辺は先生がうまくやってくれるだろう。 

 困った時の荀文若。イケメンの天才様に丸投げすれば全て上手くいく。

 甘えまくっている俺は、駄目駄目な代表のよい見本だな。

 でも、才能がある人材をちゃんと扱う事が出来れば、お馬鹿でも許されるんだよね。

 優柔不断で、有能な人の発言に耳を貸せない者は滅びる。お馬鹿でも俺はちゃんと聞けるので大丈夫。

 でもって、甘えまくっているけども、その分、前線に出ているので甘えは帳消しでお願いします。

 前線というか、現在は魔大陸なわけだから、甘えてもお釣りが来るくらいだ。


「よし、ギルドで飼うことにしよう。当面は侯爵にお願いすることになるだろうけど」


「そうすれば身銭を切らなくていいもんな」


「うわ~、トールはケチだね」

 ゲッコーさんは俺の心を読まない様に。

 でもって、シャルナは追撃の発言をしないように。


「トールがケチなのは万人の知るところですよ」


「お前みたいな散財馬鹿には言われたくないね! 困窮しても絶対に貸さない。でもって、周囲もコクリコには貸さないように! ちゃんとそこは突き放すように! 甘えるだけだからな」


「それは同意だな。コクリコは無駄な買い物が多い。それに質素倹約はいいことだし、個人で賄えないからこそ組織というものは存在する。必要な費用ならば組織が工面すべきだ」


「まさかここで、ベルがトールを擁護するとは……」

 俺も驚いているよ。

 ずっと撫でながらの言動だから、響いてはこないけど。

 でも最近のベルは、本当に俺に優しい気がする。ようやくヒロインとしての自覚が芽生えてきたのかと思いたいです。はい。

 大方、モフモフを近くに侍らせたいってのが、ベルを動かす理由なんだろうけどさ……。

 まあいい。擁護してくれたことが進展と思おう。ポジティブに考えていこう。


「よっしゃ! まずは集落に戻ろう。ガルム氏たちと合流しないとな」


「賛成だが、慎重な行動でな」

 すでに追っ手が先回りをしている可能性があるとゲッコーさん。

 リズベッドの脱出を許したのだから、前魔王派閥のところには必ず手が回る。

 魔法による監視は、リズベッドが妨害をしてくれるので問題はないと言ってくれた。

 直接的な視認に対して警戒を厳にして、俺たちは集落まで行動すればいい。

 大型である地龍とマンティコアが一緒に行動するのはちょっと目立つけど……。

 マンティコアはこの大陸で活動しているからいいとして、地龍はどうするのかと問えば、


「私は地龍だ。大地に潜み移動する事も容易だ。本来の力があれば、地下を利用して君たちを移動させる事も可能なのだがな」

 現在、十全ってわけじゃないからね。

 本当なら地下に大きなトンネルを掘って、集団での地中移動も可能らしいけど、今は自分だけを大地に溶け込ませて移動するのが精一杯だそうだ。

 

 全快までは無理はさせられないからな。

 地龍は火龍と同様に、大陸に蔓延している瘴気の浄化をしないといけないわけだし。

 浄化が進めば、人類サイドの活動域も広がる。


「さて、のろのろと平原を徒歩で歩くのと、車両を使用して素早く移動するのはどっちがいい?」

 ゲッコーさんが皆に問う。

 前者は、ゆったりと時間をかけて行動すれば見つかりにくいというもの。

 欠点は行動の鈍化によって、魔大陸全土に包囲を敷かれることになり、逃げ果せるのが難しくなる。

 後者は、平原を走る車両は視認される可能性が高いが、移動が速いということ。

 包囲が構築される前に魔大陸から脱するには、迅速な行動も大事。

 

 ――――皆で話し合った結果、後者になった。


「兵は拙速を尊ぶともいうしな。トール、ハンヴィーを出してくれ」

 と、ゲッコーさんに従い直ぐに召喚。 

 ハンヴィーで集落近くまで素早く移動して、後は徒歩での隠密行動。

 

 集落まで続く道のりでは、敵に見つからないように祈りつつ、もし発見された時は、見敵必殺の気概で対応するしかない。

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