PHASE-511【地龍パルメニデス】
「ベル。一体お願い」
「分かった」
言えば俺が何を言わんとしているか理解してくれる美人様が、炎を纏ったレイピアで斬撃。
容易く一体を霧散させた。
「やっぱり強さは変わらないな」
相手の力を理解するための一撃を目にして、前回と一緒でいいと判断。
「おら!」
しかも今回は残火を所持している。以前の刀とは別次元の刀。
ブレイズにより、炎を刀身に纏わせる事が可能になった現在、俺の動作は斬ればいいだけ。
スリップダメージで一体をあっという間に倒した。ベルのような瞬殺ではないけど、それでも十分に素速く倒せる。
マッチョ体系だから前回のよりも強そうに見えたが、見かけ倒しだった。
「ファイヤーボール」
が、爆発すれば、
「確かにライトニングスネークよりもダメージが見込めますね」
「じゃあ、私も。バーストフレア」
炸裂する魔法をシャルナが使用すれば、コクリコのファイヤーボールをくらった存在が、連続爆発によって体の半分ほどを欠損。
ある意味、あれをくらって動けるわけだから、内のギルドだと、
――――ま、俺たちには問題はなかったけど。というか、ほぼ俺の残火だけで大丈夫だった。
今回ゲッコーさんはエアバーストの使用はなく、俺一人で十分と分かった時点で、本番前の最後の一服を楽しむくらいだ。
この黒い奴らと、俺の残火の相性は抜群にいいな。圧倒的マウントで勝てる。
「よし――、コイツで終わりだ」
最後の一体を霧散させ、完全に黒いのがいなくなった事を確認してから、ゴウゴウと音を立て逆巻く炎を残火より消す。
これでショゴスの結界も解かれることになる。
つまりは、地龍が自由になるわけだ。
リズベッドの結界で解放された瘴気とは違い、未だ地龍を隠すほどに立ち込める瘴気が、クリスタルが変化した黒い存在を全て倒した事で薄れていく。
いよいよ姿を見せてくれるわけだな。
「来るぞ!」
ご対面といきたかったがそうもいかない。
一服を楽しんだゲッコーさんの警告。
ウルクが使用したマッドメンヒルのサイズからなる無数のマッドボルトが迫ってくる。
使用者の足元から始まっていると思われるその攻撃は、広範囲にわたっての槍衾だ。
跳躍で飛び越えて、着地点の鋭角な土の柱を残火でなぎ倒し、足を床につけ、
「無事か」
見れば、チート二人は問題なし。
コクリコもシャルナと共に回避しており、ランシェルがリズベッドを担いで回避し、難を逃れていた。
初めての挨拶が範囲攻撃とか、火龍の時よりもやんちゃじゃないか。
「グロロロロロロロ――――」
うなり声を上げての威嚇。攻撃を仕掛けてくるのは分かっていたが、こちらに対して敵対心まる出しだな。
継いで――――、
「ガロロロロロロロロ!!」
耳を塞ぎたくなるバインドボイス。
咆哮による音の衝撃によって、渦巻く瘴気が一気に引きはがされ、大音声の主が、俺達の前へと姿を現す。
「……馬……トナカイ? あれが地龍か?」
「その通りですトール様。あの御方こそ、地龍パルメニデス様です」
首肯して応えてくれるリズベッド。
渦巻いていた瘴気の範囲から、体躯は小さいとは思っていたが、農耕馬サイズだった。
火龍と違って背中に翼はなく、馬のような形状をしており、土色の鱗が全身を覆っている。
尻尾はトカゲのような形状。蹄と違って鋭利な爪先。
鼻先に短い角があり、頭頂部には鹿のように枝分かれした立派な角が二本。
騎乗すれば衆目を集めること間違いなしの格好いい存在。
問題は、鬣部分から背に渡ってトゲが生えているから、鞍は必須ってところかな。
大きさは違うけど、火龍と共通するのは、額部分に埋め込まれた瘴気が封じられたクリスタル。
ショゴスの力が封じてあり、それで聖龍を支配している。
「ブロロロロロ――――」
いまから攻撃を仕掛けるとばかりに、闘牛のように前脚で床を引っ掻き始める。
蹄なら大した事はないのだろうけども、鋭利な爪先で行えば、床を容易く抉る。
本当に簡単に抉る。まるで石で出来た床をバターのように――――。
ふと、手に握った残火と籠手に目を落とす。
火龍と同様に、
強靱な鱗と爪、牙を持っているのは当たり前。魔法付与などなくても、残火の刃を止めるだけの鱗だろう。
だが、倒すわけじゃないからな。解放するだけだ。
以前のクリスタルに対抗した時は、業物の刀とベルの力による終の秘剣もどきで、ヒビを入れる事が出来た。
ショゴスのクリスタルに対して、残火や火龍装備ならば、単身でも破壊は可能なはずだ。
心配事があるとするなら、地龍が小型のドラゴンだということ。
頭部に埋め込まれたクリスタルが、頭部に合わせて小さいということだ。
動きを封じてピンポイントで狙うのは、火龍の時よりも難しくなりそうだな。
なので今回は、ゲッコーさんが所持するアンチ・マテリアル・ライフル、バレットが活躍するって事はない。
俺がクリスタルを叩き壊す役目を担うことになるだろう。
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