PHASE-499【会話の内容は覚えておこう】
シャルナが唱えたカスケードは効果があった。ならば、俺が現在、唯一使用できる魔法ならもっとダメージを与える事が出来るはず。
なんたって聖龍の長である火龍の動きだって押さえこむことが出来たんだからな。
といっても、この室内の広さから考えれば、使用はひかえるべきとも考える。
そのまま使用してしまえば、確実に味方にも累が及ぶことになる。
だがしかし――だ。
「数だけは多いな」
と、ベル。
「ちょこまかと逃げてばかりの狐だな。使い魔みたいなのも鬱陶しい」
と、ゲッコーさん。
「逃げますけども、私達に自分を狙わせるように絶妙の嫌がらせをしてくるのがムカつきますね」
と、コクリコ。
「とにかく足を止めさせて倒すしかないよ」
「畏まりました」
と、シャルナとランシェル。
壁の向こう側では各々が相対する者達と戦っている。
どうも野狐は使い魔を使用して、俺への掩護に向かわせないために、パーティーに嫌がらせによる足止めを仕掛けているようだ。
パーティーの合流に時間がかかれば、打開策が見いだせない俺は、コイツに倒される。
そして、現状では合流は出来ないと判断しないといけない。
となれば、どのみち使用しないと突破は難しい。
でも、こいつには瞬間移動の縮地がある。一気に後退されて安全な場所に逃げられたら意味がない。
決定打にする為には――――。
「これしかねえ!」
左右は壁だけども、まだ前後は空いている。
俺は全速力で後方にダッシュ。
「逃がすわけがないだろう」
ちょこちょこと逃げ回っていると思われるデミタスに聞こえるような大音声で、デスベアラーが声を発する。
これを耳にしてデミタスがアクションを起こすだろう。
――はたして正にで、俺の逃走経路を断つように、床より壁がせり上がってくる。
「さてどうする? 跳躍してもいいぞ」
跳躍したら天井に頭をぶつけるくらいに壁は高い。
便利な魔法だ。簡易的な城壁を作るのと一緒だ。こんな魔法を使用出来る面子をギルドメンバーにも欲しいところ。
「なら、もう一方を使って逃げるさ」
「出来るとでも?」
鼻で笑ってくる。
自分が立ちふさがっているのにどうやって? と、何とも自信満々だ。
出来る事なら俺の発言に合わせて即座に壁を作って、俺を完全包囲してほしかったけども。そう簡単に事は上手く運ばない。
となれば――、
「イグニース」
炎の盾を展開。あとは正面に向かって突撃あるのみ。
驀地にてデスベアラーへと突き進む。
「窮したか? いいだろう。受けて立つ」
受け止めてやるとばかりに、大きく両腕を開いて大の字だ。
「真面目か!」
本当にコレだから脳筋タイプは嫌なんだ。
少しは躱すとか考えろよ。俺の考えている事と真逆の行動をするんじゃない。
「南無三」
なんて発しつつ、炎の盾で飛び込んでいく。
――流石はゴーレムだ。炎の盾を抱くようにしながら受け止める。
全くもって前に進まないし、ノーダメージだ。
炎で焼かれようがお構いなし。表面は赤々と色づくけど、全くもって余裕だ。
ならば、
「おおぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「よい気迫だな」
イグニースを更にイメージして火力を上げていく。
デスベアラーの体が赫々としたものになる。
なんか神々しくも見えてきた。
堂々と受け止める姿にそんな錯覚もしてしまう。
真っ直ぐな性格だから、案外ベルと相性がよさそうなタイプだな。
「敵だけど!」
びくともしないけども、俺の炎の盾が巨大化したことで、前面だけでなく側面まで高熱が伝わっている。
コイツを少しでも油断させたい。
全体を見渡して捕捉したのは――、今の俺は悪い笑みを湛えていることだろう。
「ほら、大切な
「むぅ!?」
お、ランシェルに聞いてて良かった。
絶対的忠誠を誇る護衛軍の中でも、種族に【ショゴスの子】とも記載されていたデスベアラーにとっては、我が身より大事な代物だろう。
その証拠に、漏れた声は慌てていた。
情報を得て、それを記憶しておくことは、やっぱり大事だな。
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