PHASE-478【多種多様の亜人たち】
「うん? そのマントは!? そうか、貴様がバロニアを倒したという勇者か。勇者であるならこの大陸まで来る事も可能か」
「ホブゴブリンに対して呼び捨てでもいいんだな。殿もさんも付けないなんて」
「我々とは管轄が違う。主である魔王様と、護衛軍各隊長以外には恭しくするつもりはない。それが例え
「我々ってことは――」
複数形で語る意味。悟った時には不気味な笑みを俺へと見せてくるゴブリン。
「イグニース」
即座に炎の盾を展開すれば、
「おっと。やるね~」
飄々とした語り口の存在が炎の盾に一撃を加えて後退。
両手持ちの戦斧を手にし、ゴブリン同様の装備からなるオークだった。
「ようこそ勇者御一行さ~ん」
ズンズンとした体重のある足音とは裏腹に、語り口は軽い。
赤い瞳はイッてるから、軽口も相まって、危ない感じがビンビン伝わってくる。
「さあ、まだまだだ」
大仰に両手を広げるゴブリンの発言を待っていたとばかりに、
「「「「キェェェェェェェェェェェェェェェエ!!!!」」」」
要塞方向から狂ったような声が上がる。
でもなんか親近感。
「猿叫のようだ」
ゲッコーさんが俺を見つつ言う。
全くもってその通り。俺がなんちゃって示現流を王都でやり始めると、いつしかそれが流行しているわけだけども。
こんな感じで狂った声が、王都の――主に西門付近で、毎日のように上がっているわけだ。
「来るぞ!」
ベルが気を引き締めろとばかりに鋭い声を発せば、
「うお!?」
側面からの手斧の一撃。
抜刀して残火で横薙ぎすれば、迫る手斧の刃の部分を両断。
魔法付与はないようだ。
「なんだと!?」
不意打ちを狙った新たなゴブリンが驚きの顔。ようやく不敵さ以外の表情を俺に見せてくれたな。
更に背後に気配を感じれば、背後には羽を広げたゴブリンサイズの悪魔らしき存在。
斧ではなく鎌を諸手で握っている。
「キィヤァァァァ!」
気迫と共に鎌の先端が俺の顔へと接近。
「なめんな!」
ここでも残火で迎撃すれば、鎌を容易く斬り落とす。
「なんなんだ?」
コイツも驚いてくれる。
「シャルナ」
名を出すだけで理解してくれるのは付き合いの長い証拠。
俺に鎌を向けてきたのはインプという低級の悪魔。
コウモリのような羽に、先端が鉤状になった尻尾が生えている。
黒い肌だが、顔立ちはゴブリンに似た感じだ。
「でもって、シャルナ後ろ」
「分かってる!」
デカいのが突如として現れ、刃渡りだけでも二メートルはある鉈を振り下ろす。
咄嗟に回避したシャルナだが、地面に触れる鉈の衝撃は俺たちの足元まで揺らした。
それどころか触れた箇所を中心として、放射状に広がる蜘蛛の巣状の地割れも出来ている。
「今度はなんだ?」
「あれはオーガだね」
オーガか。鬼だな。
確かに頭に二本の角がある。角の生えた額と被っているとんがり帽子のアンバランスさは、レッドキャップスでも抜きん出ているんじゃないだろうか。
トロールやゴーレムと同じくらいの大きさ。四、五メートルくらいか。
力士スタイルのトロールと違って、引き締まった体だというのは、鎖帷子状の装備の上からでも分かるくらいに、胸部が筋肉で隆起している。
ナイスカットと言ってやりたいね。バック・ダブル・バイセップスをしようものなら、背中の筋肉鬼瓦とも言ってやりたい。鬼だけに。
にしても……、
「なんか強そうなのが次から次へとポンポン出て来るな……」
「まだ来るぞ」
一番最初に現れたゴブリンが不気味に笑んで発せば、発言に合わせてサハギンが現れ、次なる巨体枠としてトロールが登場。
体格ととんがり帽子、鎖帷子状の装備のせいで、サンタクロースの闇堕ちみたいな姿のトロールだ。
だがしかし、統一性のない連中が一瞬にして俺達の前に現れる。
陸海空の亜人のオンパレードだな。
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