PHASE-473【分類は合成獣】
「さて」
ゴロゴロと鳴き声をあげるマンティコア。
痛みもなくなったようで、俺たちには危害を加える気はないようだ。
むしろ強い者には従うといった感じだな。
直ぐさま従順になるところは、後ろで説教されているコクリコにも学んでほしいところ。
そう思っている間にも、二人の怒りには拍車がかかる。
仕方がないことだろう……。【厩舎でも言いましたよ。目だってなんぼの人生だと】なんて言い訳をするもんだからね。
すかさずベルから拳骨を見舞われて、もんどり打っているけど……。
さて、お馬鹿は放っておいて。
プレイギアにてマンティコアの情報をゲット。
ディスプレイに映されるデータは――、
【分類・合成獣】
【種族・マンティコア】
【レベル17】
【得手・毒】
【不得手・――】
【属性・従属】
レベルは17と、決して低くはない。まあ高くもないけど。
現状の俺だとさほど苦戦しないのも頷けた。
アジャイルセンチピードの成体はレベル41とかだったが、あれは主クラスだから比べる対象ではないな。
レベル17なら野生では低いというわけではないだろう。
普通に17あれば、一般的な野生の獣やモンスターからしたら脅威だし、冒険者だと、新米さん達が相手にすると難敵となる存在だ。
そんなのがこの辺り一帯に放たれているわけだ。
やっかいだよな。
まあ、並の存在にとってはだけど。
最早、俺たちクラスなら驚異ではない。
「ゴロゴロゴロ」
可愛いもんさ。
象サイズの巨大な動物を子猫のように手なずけるとは、随分と凄いことが出来るようになったじゃないか。俺!
マンティコアで気になるのは、
「分類が合成獣ってなっているけど。造物主は誰なんだろうか?」
「こちらの大陸には連れてこられた生物ですので」
さっきもランシェルはそう言ってたな。
てことは、マンティコアは人間サイドの大陸で誰かによって造られたってことか。
魔王軍が造り出したわけではないようだし。となると――、人間が造ったってことかな?
従属することはあっても、戦いにおいては逃げ出すことはしない。
なんとも造物主は都合のいい造り方をしているな。
逃げずに最後まで戦わせようとするために精神をいじっているのかもな。
でも、強者に従う時点で、負ければ敵側に従うようになるってのは、失敗した存在と捉えるべき生物だろうな。
「まっ」
生き物に対して失敗だのと考えるのはよくないよな。マッドなサイエンティストみたいな思考はよくない。
「なつかれているようだが、どうするんだ?」
説教を終えたベルからの質問。
「どうするって、連れては行かないぞ。こいつのレベルだと、連れて行ったら間違いなく殺される」
「うむ、その優しさ、流石は勇者だな」
生き物を大事にするとベルの好感度が上がります。
言うことを聞かないで、悪いことをするとベルに怒られます。
後方で泣きじゃくるまな板のように。
ガスマスク越しに泣いてると、声が籠もっていて不気味だな……。
「ここからは危険だから、ついてこないように」
「に゛ぁぁぁぁぁぁあ゛」
割れ鐘の鳴き声ではあるが、可愛くはある。
でもって、人の言葉を理解するあたり、やはり人間が造物した存在なのかな。
――――マンティコアと別れて先へと進む。
有りがたいことにコクリコが大人しくなっているのがいい。
先に進むにつれ、深い緑に覆われた地点でも分かるように、紫色からなる瘴気の色も濃くなってきた。
まだガスマスクでも対応できるくらいのレベルだから問題はないだろうけども……。
シャルナは呼吸と共に「う~……」って小さなうめき声を上げる。やはり独特なマスクの臭いが嫌なご様子。
久しぶりの着用だから臭いが辛いだろうけど、身を守れる物だから、慣れるまで頑張ってくれと、言い聞かせつつ励ます。
「トール。どうする」
主語が抜けていますよゲッコーさん。と、言いたかったけど。
木々の上からわずかに見える空は、藍色に染まっていく。
宵の明星が輝く時間帯。
木々の奥を見やれば闇である。
これに加えて空まで闇に染まれば、移動は難しい。
もちろん灯りをつけて移動してもいいだろうが、敵地でわざわざ目立つ行動をするのも愚策というもの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます