PHASE-462【スカートの中に興味はないよ】

 ミズーリとゾディアックをプレイギアへと戻し、


「じゃあ、どう進みます?」

 入り江には到着したけども、ここから先が問題だ。

 見回してみたが――、道がない。

 入り江といっても砂浜じゃない。石がゴロゴロとして足場は決していいものではない。

 未開の地という表現が似合う風景だ。


「登るだけだ」

 なんとも簡単にゲッコーさんは言ってくれる。

 貴男は楽だろうけども、俺たちは結構大変だと思うんだよね。

 上へと続く岸壁を踏破するのか……。

 側によって見上げれば、傾斜にして七十度はありそうだ。


「梯子が欲しい……」

 むしろタケ○プターが欲しい。


「お! ヘリを召喚しましょうか」


「このくらいは登れ」

 楽と甘えを許してくれない伝説の兵士……。

 でもってそれにベルも賛同する。

 チートさん達にゆとり教育の概念はない。詰め込むだけ詰め込む教育方法を是と考えているようだ。

 二人の目が怖かったので、渋々と傾斜が七十度はあるところを命綱もなしに登る。


 俺が思うに、ゲッコーさんが一人登って、ロープを下に投げてくれればいいと思うんだけど、それを口にすると怒られそうだから黙って登る。

 まあ、ピリアは使用するけどね。

 これでもし手を滑らせて落ちても、問題ないと信じたい。

 信じるだけ。三十メートルの高さから落ちれば、無事ではすまないのが現実。

 四肢の一つ一つの動作に全身全霊だ。

 ――肉体強化のインクリーズのおかげで、指でしっかりと岩の出っ張りを掴むことが出来るし、ラピッドでひょいひょいと登っていける。


「やるな」


「だろ」

 ベルに褒められるのは嬉しいが、俺としては、ヒールの高いブーツでなんで登れるのかが不思議でならない。


「あ、あのトール様」


「なんだ?」

 案内役として俺よりも上をいくランシェルが、照れくさそうに俺を呼ぶ。


「可能ならば上は見ないで――――」


「絶対に見ないよ!」

 くい気味に返答してやった。

 メイド服だからね。スカートだもんな。でも見ないよ。

 本来メイド服が俺よりも上を登っているなら、視線上方九十度固定凝視するよ。 ビジョンでズームだって実行するよ。

 でもお前……、男じゃん!

 男のスカートなんて覗きませんよ。

 だから照れた顔を俺に見せつつ、スカートをおさえるんじゃない!

 おさえる手で岩肌を掴んで、しっかりと登ってくれ。絶対に見る心配はないから。

 ちなみにランシェルの表情は見たけど、スカートの奥は見てないから!


「――おっし到着」

 流石はピリア、楽だった。最初は不安だったけど、いつの間にか傾斜がきつい場所でも、登れるだけの体力がついていた俺。

 ちゃんと体を鍛えている成果が出ている。


「皆、登り切りましたね」

 最後尾であったコクリコも到着。

 流石と言うべきか。息切れなんて無縁だ。


「付近に敵はいない」

 一番最初に登り終えたゲッコーさんが周辺警戒。

 MASADA片手に双眼鏡で周囲を見渡し、付近にも気配を感じ取れないということで、紫煙を燻らせる。

 煙草のにおいがしても問題ないって事なんだろう。

 とりあえずここは安全って事だ。


「さて、ここからどうすればいい」

 俺たちにとっては未開の地。まあ、転生した俺と、召喚された二人にとっては、人間サイドの大陸も未開の地ではあるんだけどね。

 魔大陸出身であるランシェルにゲッコーさんが問えば、


「ここは大陸の北東に位置します。ここより西に進めば集落もあります」


「集落って、大丈夫なのか?」


「問題ありません」

 魔大陸。つまりは敵の巣窟みたいな場所。その集落に行けば、俺たちは襲われそうな気がする。

 とはいえ、土地勘がない以上、胸を張って心配ないと言うランシェルの発言を信用するしかない。

 俺の心配が杞憂に終わることを祈るよ。


「現魔王に抵抗はしなくても、従わない連中もいるんだろうさ」

 一服を楽しみ、携帯灰皿に吸い殻をしまうと、俺にハンヴィーを出してくれと言ってくる。

 抵抗したら勝てないけども、メイドさん達みたいに不快感を宿して、現魔王に非協力を貫いている存在もいるという事なんだろう。

 現魔王の支配下でその気概。相当に気骨ある存在なんだろうな。

 

 ハンヴィーへと乗車するところで。


「本当に何度見ても凄いですね」

 俺の召喚する力に感嘆するランシェルは、俺に明るい笑みを見せてくれる。

 表情が可愛い…………って! 違う! コイツは男なんだよ!


「トール様!?」


「大丈夫だ。問題ない」

 意識をしっかりさせようと、近場の岩にゴスゴスと頭突き見舞う。

 岩にダメージは無く。俺にしっかりとダメージがあるっていうね……。

  

 もちろんそんな行動を実行する俺を皆は可哀想な目で見るからね。精神的にもダメージを受けるっていうね……。

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