PHASE-393【夢ではメロンを実らせる】

 ――…………。

 

 ――……。


『起きてください』

 来たよ! やはり来ましたよ。待ってました!

 夢の中でやおら目を開く俺氏。


「あれ?」


『起きましたか』

 うん。敬語であった時点で違和感はあったけどね。

 俺の寝るベッドで横にちょこんと座っているのは――、ベルではなくランシェルちゃん。

 可愛らしい笑みを湛えている。

 その笑みを見るだけで、ランシェルちゃんでもいいかなと、節操のない考えに至ってしまう。

 夢だからいいよね。という言い訳を、夢の中で巡らせる俺。


『トール様。何をなさいますか』

 紅潮する表情での笑みは可愛いの一言。

 モジモジしながらの発言はたまらんものがある。

 本当はベルにパフパフの続きをお願いしたかった。

 でもって、そこからピリオドの向こうまで行ってみたかったが、ランシェルちゃんだとパフパフは――――む!? むむむ?


「……ランシェルちゃん。メロンでも入れているのかい?」


『何を言っているんですか。これは元々がこうですよ』

 腕組みをすれば、今まで無かった部分に撓わに実ったものがあり、それを持ち上げて見せる。

 ベルが夢の中で見せたような仕草だ。

 重力に逆らったベルのモノとは違い、ナチュラルに巨乳である。

 コクリコ並みに無いはずのランシェルちゃんに立派なモノがある。正に夢だからこその世界だな。


『好きにしてもいいんですよ』

 言えば、黄色い瞳が妖艶に煌めく。

 普段の愛らしい表情と違って、別物に見えてくる。

 大人っぽく色気もあるが、湛える笑みから覗かせる八重歯は、獲物を狙う捕食者のようでもあり、ゾクリとする。

 Mだとその目と笑みでコロッと落ちちゃうんだろうな。

 

 妖艶さを漂わせながらも、透き通る肌が紅潮しているのは、やはり恥ずかしさもあるからだろう。

 婀娜っぽいのに、恥ずかしさも混ざるこのギャップは、最高と言わざるを得ない。

 ナイチチが巨乳になる夢は浪漫である。

 お言葉と仕草に甘えて、堪能しようと手を伸ばす――――が。


『どうされました?』

 笑みが不安に変わった。


「いや、流石に――――ね」

 節操がないとはいえ、ランシェルちゃんとは日が浅い付き合いだ。

 夢とはいえ、これを触るとなると申し訳がない。

 こんな事をベルに言えば、私のはなぜいいと思うのだ。付き合いが長ければ触っていいというものではない! って、激怒してボコボコにされるだろうな。

 夢のベルは真逆でエロエロなのが素晴らしい。少しくらい夢のベルが、現実のベルに反映されてほしいくらいだ。


『いいんですよ?』


「う~ん」


『私は魅力がないのでしょうか……』

 凄いよ。凄いし素晴らしい巨乳だけど。それは偽乳だ。

 夢の中で作られた偽りの胸だ。

 別に無いなら無いでいいんだ。

 ビバ、シンデレラバスト! でも俺はいいんだよ。無くてもランシェルちゃんは可愛いからな。

 有ろうが無かろうが、やはり触ってはいけないと思ってしま――――、


『えい!』


「ほわ!?」

 なんて大胆!

 撓わな胸を押しつけてくるなんて。

 寝ている俺に、上から覆い被さるようにして俺の顔に胸を押しつけてくる。

 なんたる暴力的な胸だ。

 それになんて甘い香りなんだろう……。ベルの時と同じ、甘い香り……。

 夢のベルと同じ香りだ……。

 

『気持ちいいですか』


「うん……気持ちいい……」

 恥じらいながらも問うてくるランシェルちゃんに、思考が溶かされていくようだ……。


『ですよね! もっと私で満足してください』

 何を躍起になっているのだろう……。


『癒やしてあげます。今までの疲労を――――!?』

 最近はやけに疲れるからな。思考が色欲で支配されそうになっている俺は、お言葉に甘えて、癒やしてもらおうと思ったところで――――、ランシェルちゃんが俺から離れる。

 離れると、体が浮遊して、そのまま遠のいていった…………。


「おい、起きて――――いるようだな」


「おはようベル。最近は俺を起こす担当だな」


「お前が規則正しくしていれば、こんな苦労はしない」

 それを聞けば、もっと苦労してもらいたいな。

 美人に毎朝、起こしてもらえるサービスとか、最高でしかない。

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