PHASE-345【鎧と刀】
「あとは勇者殿のイメージで炎の盾も形状が具現化するので、慣れと共に様々な効果を試してみてください」
なるほど。ビームシールドも形状を変えて武器になるもんな。
機動戦士からアイディアをイメージしていこう。
「分かりました」
素晴らしい物を作ってもらった。満面の笑みで返答すればワックさんも喜んでくれる。
炎の盾をやぶるような攻撃があったとしても、籠手の強度で防ぐという二段構え。俺の防御力が一気に上がった。
即ち生存率が高まるという事だ。ワックさんとゴロ太には感謝しかない。
更に、生存率アップを可能とする、俺の体に沿うように作られた胸部と胴部を守るための鎧はブリガンダイン。
ベストに打ち付けた火龍の鱗からなる鎧は、籠手同様に赤と黒からなるデザイン。
ぱっと見、ただのベストに見えるから、普段着として利用しても問題ないくらいに日常に溶け込んだ作りだ。
俺が普段から着ていた、日本にてリーズナブルな価格で購入した服をイメージして仕立ててくれたようだ。
だがこっちは圧倒的な高級感が漂ってるぜ。
でもって軽い。今までの革製の胸当てよりも軽い。
平服と同レベルの重量だ。これで強度はこの世界に置いて最高峰なんだからな。最高だぜ。
鎧にも効果があって、タフネスのような耐性強化のピリアを発動させれば、同時に鱗の効果が発動する仕組みらしい。
従来のタフネス以上の耐性強化と、追加で状態異常回避も備わる。
火龍の加護は体全体に及ぶそうで、兜がないのはその為との事。
不可視のオーラによって体全体を守ってくれるそうだ。
――――さて、籠手に鎧とくれば、
「こちらが刀になります」
「おお!」
待ってましたよ。ワックさんが諸手で大事そうに持ち、恭しく俺に差し出してくる。
やはり鞘、柄の色は赤と黒だ。
装備全てが
柄紐は赤と黒が交差していて、鍔部分は黒。鞘は光沢のある真紅。
こだわりもあるようで、鞘には金細工も施されている。
六花のマントをイメージしたのか、雪の結晶のマークが鞘の
それらを繋げるのが不規則なギザギザの線。
いくつかに枝分かれしているそれは、稲妻をイメージしているのだろう。
六花のマークが勇者の印なら、金槌と雷はギルドを表現していると思われる。
栗形には白銀の
赤と黒に、金細工と白銀が栄えるデザインだ。
差し出した刀を両手で受け取りしっかりと持てば、やはり――――、
「軽いですね」
鞘も含めて重さを感じない。
竹刀くらいの重さだ。鞘から抜いたら更に軽くなるわけだ。
鞘ももちろん鱗で出来ている。でも鉄鞘よりも軽くて丈夫。命を奪う必要の無い相手と対峙した時は、鞘のまま戦わせてもらおう。
その事を口にすれば――、
「その点も抜かりは無いです」
と、得意げな笑みをワックさんが見せてくれる。
栗形にデザインされた金槌の部分にあるボタンを押してみて欲しいと言われる。
金槌を彩る宝石かと思ったが、どうやら違うようで、デザインを重視したボタンのようだ。
言われるままに緑色の宝石のようなボタンを押せば、カシャンと小気味のいい音が鞘の中から聞こえて、鍔が開花のように六方向に展開。
花びらのような鍔の形状は六花。
展開と同時に刀が鞘からちょっとだけせり上がった。
「格好いい」
ロック式のようだ。抜けば鱗から作られたはずなのに、他の鱗装備とは違い、刀身は美しい白刃。
鎬ぶぶんを眺めれば、刀身は鏡ようで、俺の上半身がはっきりと映し出されている。
後ろにいるベルの姿もはっきりだ。
磨けば磨くほど、鱗は美しい白銀に変わったとワックさん。
魅了されるのは良くないが、これは魅了される。なんと言っても火龍の鱗だ。神話級の刀ってことだからな。美しさに魅入ってしまっても勘弁してもらいたい。
鞘に戻せば、先ほどと同様に鞘からカシャンと音がし、鍔がつぼみのように閉じて、鞘を噛むようにしてホールド。鞘から抜こうとしても刀は抜けない。
柄を揺らしてみても刀身と鞘の間には隙間がないと思えるほどにズレる感覚も無く、ぴったりとしたものだ。
これなら違和感を感じることなく鞘のままに刀を振れる。
試しに振ってみればはたして正にだ。
鞘の内部で刃が当たるような感覚も無い。だから違和感を感じること無く竹刀の感覚で振ることが出来た。
違和感が無いのは本当にありがたい。そんな些細な事でも、振る時には集中が削がれてしまうからな。
「どうです。無駄な殺生を好まない勇者殿のために考えた仕掛けです」
本当にありがたい使用ですよ。
流石は大陸一の職人ですね。ワック・ワックさんの名はダテじゃない。
俺が子供の時に憧れた人物と似た名前なだけはある。
無から有を作り出せる天才の名だ。
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