PHASE-289【リベンジ開始じゃい!】

「さて――」

 ぐっぐっと、柔軟を行ってから、


「やろうか!」

 快活に継ぐ。


「よき覇気だ。お前の新たな力を私に示せ」

 力のこもった笑みを俺に向けてくる。

 やはり戦う気概を有した存在にはいい表情を見せてくれるね。

 おかげでこっちは動悸が高まるけども。

 戦う前から緊張じゃなく、美人様の笑みで心臓バクバクですわ。


「リベンジマッチじゃい!」

 高らかに両拳を掲げて、顔も空に向けて咆哮する。

 アバカンコールに混じり、「「「「おおおおぉぉぉぉぉおおおお!!!!」」」」と、王都全体に轟いたであろう、空気を振動させる野郎達の轟雷の如き咆哮。

 ドンドンとした声の衝撃が俺の体を叩き、突き抜けていく感覚。

 嫌なものではない。

 衝撃が走る度に、俺の体が滾ってくる。

 これこそ固有結界ホームの力。


「会頭ぉぉぉぉぉぉぉ!」

 仇を討ってくれとばかりに、カイルは声を張り上げる。


「刮目せよカイル! お前達に教わった俺の力を!」


「はい! しっかりと見ておきます! 勝利を得てください」


「任せてくれ!」

 まあ、勝てないだろうが、それでも俺のがんばりを見てくれ皆!


「ほお、流石に奇跡の存在だな。皆の期待が大きい。落胆だけはさせるなよ」

 ヒョイと手にした木刀を俺へと投げ渡しながら、余裕の中佐殿は、モデルのように片手を腰に当てて佇んでいらっしゃる。

 ただ立っているだけで眼福ですわ。


「いい勝負にしようぜ」


「強気なのは私が炎を使えないところから来ているのか? それとも、新たな力からか」


「後者だよ。そもそも炎を使おうが使えなかろうが、ベルはベルだからな。強者は強者のままだ」


「そうか。中々に嬉しいことを言ってくれる」

 イエーイ! 好感度アップ。

 ゲーム内だと、ベルの炎のみに頼る奴らもいるみたいだけど、俺はベル個人を頼ってますから。

 こういう発言をすると、素直に喜んでくれるのが嬉しい。

 俺にもっと女性を喜ばせるトーク力があれば尚いいんだろうけどな。


「では後者の力を見せてもらおう」

 手にした木剣を俺に向けつつ誘ってくる。


「言われなくても! インクリーズ! ラピッド! タフネス!」

 口にして直ぐに、体の中から力が湧き出てくる。

 熱い物や辛い物を食べた時に、体がポカポカしてくる感じが徐々に大きくなっていく感覚だ。

 初歩ピリアの三連コンボ。

 相変わらずビジョンの使いどころがないが、体内から湧き出るピリアの力は、自信にも変換してくれる。


「ほう――――」

 感知タイプでもあるベルは何かを感じ取ったようだな。


「余裕ぶってていいのか? 中佐殿」

 いつまで腰に手を当てて佇んでいるんだ。

 今の俺なら一足で行けるぜ。


「余裕ぶってはいない」

 お! なんだかんだで俺の事を一目置いてくれているって事かな。

 心なしか誇らしくなるぜ。

 なんて喜びを抱きつつ、


「じゃあ、何なんだよ?」

 って、聞いてしまう俺。


「余裕なのだ。ぶっているのではなく、余裕そのものなのだ」

 ――……言ってくれるじゃないか……。

 俺のちょっとした喜びを物の見事に粉々にしてくれたな!


「その余裕を粉々にしてやる」

 俺の思いと同じようにな!

 この固有結界、凄く尊き理想胸アバカンの空間で俺が負けるわけがない! ――――と、信じたいだけ。

 ホームなんだ。野郎達が俺の思いを口にしてくれている以上、俺は無様には負けられない!


「今度こそ勝利を得るぜ!」

 野郎達を煽るように発せば、


「「「「おお!」」」」

 コールの中で応えてくれた。

 三種の神器装着を拒み、俺のエロエロな出店を阻もうとする風紀委員長。

 ここで評価を高くし、俺は同じ志を持った野郎達の為に、大人のお店アルカディアを建設するんだ。

 

 壊れステータスである相手であろうとも、純粋な膂力だけなら俺は負ける気はない。


「さあ、全力で来い。そのぎらついた感覚は不快だが」

 だろうな。俺はショッキングピンク街建設を諦めない思いも、ピリアと共に体から迸らせているからな! 

 乙女はやはり受け付けないか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る