PHASE-232【ゴム】
「ミスリルはやっぱり希少だよね」
「まあの、最近は瘴気も邪魔して中々にミスリル採集もできん。
「アポイタカラ?」
「おう、
「ヒヒイロカネまであるんだ」
「あるさ。
流石はファンタジーだな。でも、ミスリルと
「といっても、会頭が持つ火龍の鱗に比べれば霞んじまうがな。人知の及ぶ範囲じゃあ
俺自身はチートじゃないが、装備はチートになるわけだな。
「けどいいよな。ミスリル装備とか」
「会頭はわかっとるの!」
ミスリル愛が溢れているギムロンの急接近。
伝説級とはいかなくても、ミスリルで装備一式を揃えれば、伝説を残せる英雄にはなれるだろうと、ギムロンは髭をしごきつつ豪快に笑う。
この先にコボルトがいるかもしれないのに大胆に笑う。
気付かれてもいいと思っているのは、自身の膂力に自信がある証拠だろうが、この辺はゲッコーさんとは違うな。
出来るだけ戦闘を避けるように、あの人なら物音を立てずに進んで行くだろう。
ファンタジー世界の二枚看板と言ってもいいエルフとドワーフ。
エルフと違って気位とか気にしない分、ドワーフは接しやすくていいが、場所を選ばない豪快さが玉に瑕だな。
――――洞窟内を進めども、コボルトのコの字もありゃしない。
出会ったのは、俺の
そう言えば――、
「ギムロンはゴムって知ってるか」
「ごむ? いや知らん」
ドワーフが知らないといことで、他の二人も知らないご様子。
「そのゴムってのがどうしたんだい」
「いやさ、入り口にいたコボルトの持ってたのがね。スリングに似てて」
「そうかい? スリングっていえば――コイツだろう?」
ギムロンが腰にぶら下げた雑嚢に手を突っ込んで、ゴソゴソと動かして取り出したのは一本の紐。
中央が幅広い。
テレビなんかで見たことがある。幅広の部分に石を包んでから紐を回して投石するってやつだ。
「それじゃないんだ。スリングショットっていうんだけど」
「確かに変わってました。枝分かれした木に、弓弦のような物がありましたが、弓弦と違って張っておらず、垂れてました」
と、クラックリック。そうなんだよ。明らかにアレはゴムなんだよな。
コボルトはゴムを製造できるのだろうか?
「で、そのゴムってのが欲しいのかい?」
未知の物質に興味があるのか、ギムロンがここでも俺にズイッと接近。
小柄だが、樽のような体は迫力がある。
「まあな。コボルトが製造法を知るなら聞き出したい」
「討伐じゃなくてか」
「元々、人と一緒に生活していたなら、話し合いも出来そうだけどな。この世界では人が亜人を蔑んでいるってホブゴブリンが言ってたけど、俺としてはその垣根を壊したいね」
宗教観や肌の色なんかで争うのは元の世界で十分だ。
「そうかいそうかい!」
俺の発言にギムロンがたいそう喜んでいる。
上機嫌でスキップしながら先頭を歩いてるよ。
「発想がやはり違いますね」
聞き手だったタチアナが笑顔を俺に見せてくれる。
俺の考えはこの世界では奇抜なようだ。
エルフやドワーフは風体が人間に似ているし、協力関係でもある。
また長命で、人間にミスリルを代表するような鉱物の加工技術を教え広めた立場から、この二種属に対して、人間サイドは賢者として敬ってもいるそうだ。
だがオークやゴブリンなんかは、人間の美的センスからすれば醜悪。
また、行動も野蛮ということから蔑み、敵対的な考えが根強い。
だからこそ、そこに怨嗟が生まれるわけだよな~。
そこを取り除いていけば、以外と戦わずにすんだりしそうなんだけど。その為には人間サイドの意識改革だけでなく、相手側の意識も変えていかないとな~。
すげー難しいそうだな……。
――……いま出来る事は、目の前の一つ一つをコツコツと対処していく。だな。
そうすればいずれは難題にも立ち向かえる経験を得ているだろう。
「にしても長いなこの洞窟」
「駆け出しが卒業する通過儀礼のような洞窟だ」
この洞窟の経験者がいるからこっちはありがたいけどね。
「こんな洞窟が狭く思えるくらいに、世界には、古代の遺跡からなるダンジョンが多々あります」
ギムロンに続くクラックリック。
ダンジョンとか浪漫だな。いずれは俺も挑むことになるんだろうね。
俺も駆け出しみたいなもんだし、ここで洞窟の冒険ってのも経験しとかないとな。
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