PHASE-221【新パーティー(仮)】

「コクリコを追いかけるんだよ」


「追えばいいだろう」


「お前も来ないと」


「私は忙しい」


「いや、忙しいって……」


「私は女性に喜んでもらえるお店をゴロ太と考えなければならない」

 オウ……イェー……。

 帝国軍の中佐殿は、ファンシーなお店を作ることに楽しみを覚えたようだ。

 それを理由として、ゴロ太からも離れたくないんだろう……。


 言い返したいが、俺のショッキングピンク街が露見してしまっているから、強気には出られない……。


「ゴロ太もそっちにいないで私と出店アイデアを出し合おう」

 愛玩動物が俺から離れないもんだから、些か焦りを見せている帝国軍中佐。

 別に取りはしないよ。そもそも、ワックさんのペットだけどな!


「まあいい。じゃあ、ゲッコーさんは?」

 位階とかのことも問いただしたいし。


「ゲッコー殿は自ら酒造りに参加している。お前の考える、いかがわしい方じゃないお店のためにな」

 いかがわしい方じゃないとか言うな。しかもこんな大勢のいるところで!

 そもそも俺の為じゃねえよ。あの人、自分がビール飲みたい一心で頑張ってるんだよ。


「ええい!」

 なんと気ままな召喚キャラ達だ! 好き勝手やりやがって。

 単独行動スキルとか、揃いも揃ってアーチャークラスかよ!


「仕方ない。単身で行くか」

 コクリコを退治するだけだ。コボルトってのがゴブリン程度の力だとするなら、俺が到着する頃には終わっているだろ。

 

 洞窟内でゴブリンとなると、無茶苦茶される作品もあるけども、今回はコボルトだし、なんだかんだでコクリコの生命力はG並だからな。

 俺があいつの今回のクエストにおける、ボスという立ち位置だな。

 しかも勝てない存在として君臨してやる! 何たって四つのピリアを習得したからな。


「いけませんよ主!」

 下が騒がしかったからか、先生が一階まで下りてきた。

 しかも俺の単身発言に相当に慌てていらっしゃる。流石は忠誠心MAXだ。

 他の二人とはわけが違う。さらっと抉ることを言うこともあるが……。


「何を考えているのですか、単身などと!」


「ベルはついてこないし、ゲッコーさんは酒造りだし。もしなんかあっても召喚で対処しますから。見せましょうか? 第三帝国の凄いヤツ」

 すっごく圧を受ける程のまくし立ててくる。それだけ俺の事を本気で心配してくれているんだろう。

 正直、嬉しいです。ベルにも見習ってもらいたいもんだ。


「例え主が神の如き力を持っていたとしても、単独行動など承認できません。瘴気が晴れても、いまだこの大陸は魔王軍が多くを占めています。供回りを編制します」


「あ、はい」

 気圧されてしまったので、俺は首を縦に振るしか出来ない。


「じゃったらワシを連れて行ってくだされい」


「ん?」

 声のする方に二人して目を向ければ、受付の隣にある簡素な道具屋の奥からだった。

 ギルドメンバーが出立の時に、手早く準備を調える為にアイテムを! という意見から、受付の隣に街商規模の道具屋を開いている。

 単純に受付のカウンターを一つ潰して、そこにアイテムを置いてるだけなんだけども。


 声の主がカウンターの奥から自在扉を開いて、のしのしとした歩で姿を見せる。

 子供くらいの背格好で、樽のような体格に、頑健そうな肢体。

 ドワーフである。


「ギムロン殿」

 そういう名のドワーフらしい。

 団子っ鼻に灰色の髪と髭。髭は腹部くらいまで伸びた立派なものだ。


 遊び心があるのか、釣り糸につけるアンカーブイみたいな光沢のある赤い玉で、髭の先端をまとめている。

 そんな自慢の髭を見ろとばかりにしごきつつ、どっしりと佇む。


「会頭の刀を打っているのはワシですからの。数打ちとはいえ、大事に使ってくださっておるのがようわかる。そんな方の活躍を直接この目にしたい。それに、火龍戦では折られた刀を大切に埋葬したとか。作り手を喜ばせる行為。そのような素晴らしい御仁の供回りが出来るのは誉れですわい」

 褒めてくれるのは嬉しいが、正直な話、この刀を使用したのは山賊に峰打ちで使ったくらいだ。

 大事にっていうより、ほぼほぼ使用していないってのが正解。


「だったら俺も連れて行ってください」

 ここで更に、一階にある長テーブルの方からおっさんが登場。

 外見は無精髭で短髪ツンツンの金髪金眼……。

 金属製の胸当てに、弦の張っていない装飾の入った弓を手にしている。


「あれ? どこかで見たような――――」

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