PHASE-220【遁、ずらかりやがったな!】
「話の腰をおって申し訳ないが、そのド、
「ライ・ミライスと、クオン・ホウカですね」
結成当初からいた存在ではないな。
同じ位階だからって、コクリコのヤツ調子に乗って先輩風でもふかせたか?
「どんな経緯でその三人はパーティーを組んだの?」
受付嬢に問えば、
「それなら俺が見てましたよ」
と、背中から声を受ける。
肩越しに目を向ければ、受付カウンターを譲ってくれたギルドメンバーの一人だった。
その時の事を目にしていたそうで、丁寧に教えてくれた。
見たというメンバーは、風体からしてハンター職かスカウト職。
人の外見を記憶するのはお手の物といった職種だ。
ライなる新人君は、コクリコと同じくらいの年齢の男の子。
うちのクランメンバーであるドワーフが鍛えた、数打ちのブロードソードを佩剣。
剣は柄も鍔も傷が無く新品そのもの。
体を守る装備は、馴染んでいない真新しい革鎧に、これまた真新しい革製のバックラーを左腕で固定していたそうだ。
もう一人はクオンというヒーラー職の女の子。
剣士のライ君と同じ村の出身で、村を出た時から一緒に組んでいるとの事。
――……幼馴染みと冒険ですか……。
異世界でもリア充を目にすることになるんだな……。
この子の凄いところは、
初歩の回復ではあるらしいが、大したものである。
無駄にばかばかファイヤーボールだのランページボールなんかを使う、頭のおかしなまな板とトレードしたいくらいだ。
というか、集まり始めた人材は、普通に魔法が使えるのがいるんだな。
主人公が力を付けてくると、それに合わせて周囲のレベルも上がっていくっていう漫画みたいな状況だな。
それだけ周囲も努力してるって事なんだよな。
いい事である。俺達のギルドは、着実に力をつけてきている。
そんな有望な新米コンビがクエストを受けていた所に、コクリコが参加してあげようと、自ら言ってきたそうだ。
言動は相当に慌てていたらしい。
「――――なるほど」
あの
俺を痛めつけたのが、自身の今までの意趣返しと、愉悦に浸りたかったってだけなのがばれそうになったから逃げたな!
泊まり込みのクエストってのがいい証拠だ。
目撃していたメンバーの説明からして、内弁慶の分際で、新米たちには剛気に立ち振る舞った様子。
で、何を勘違いしたのか、コクリコが参加してくれると知った二人は、大層に驚いて喜んだそうだ。
勇者兼会頭である俺のパーティーメンバーだから、コクリコは凄い人物だと思われているようだ。
王都だと人見知りが激しいからな。人との会話が少ない分、メッキが剥がれていないんだろう。
尊敬の眼差しを受けたまな板は、勘違いでさぞ調子に乗ったんだろうというのは、容易に想像が出来る。
よし、決めた! その伸びに伸びた鼻っ柱をへし折って、メッキを剥がしてやろうじゃないか!
「王都南のリオスの町だね」
「はい」
再度、受付嬢に確認を取ってから、
「あのまな板を――――泣かす!」
思いの丈を大音声。
どうせまだ火龍の装備は出来ないし、時間つぶしにコボルト退治ではなく、コクリコ退治としゃれ込むかね。
新たに得た力で拳骨グリグリコンボからのお尻ペンペンをしてやる。ついでになで回してやる!
股間を殴られた時とは違うからな。今の俺は――、
「ベル行くぞ。支度をするんだ」
「なぜ?」
「え!? なぜ?」
オウム返しだよ。
なぜって発言になぜだよ。
お前は俺が召喚しているんだから、一緒に行動するのは当然だろうが。
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