PHASE-219【こだわりが大爆発】
「とにかくあいつは何処だ!」
「興奮しすぎだぞ」
ゴロ太の踊る姿に興奮しているお前に言われたくはない。
だが、俺が本気だというのは伝わったようで、
「コクリコなら――――」
と、途中で言葉をやめると、視線が受付に立つ一人の受付嬢へと向けられる。
「なにか知っているのかな? そこな女の子!」
ビシリと指さし問えば、
「あ、ええっと……」
受付にまだ慣れていないといった感じで、あたふたと羊皮紙の束をめくり始める。
その間にも俺はズカズカと足音を立てて受付へと近づいていく。
やはりゴロ太は俺の足取りが楽しいのか、ニコニコしながら真似してついてくる。
怒りが浄化されそうなのでこれ以上は見るまい。
チラリとベルを見れば、やはりゴロ太の一挙手一投足に夢中。
ゴロ太は俺の足取りを楽しんでいるが、その他はちゃんと俺の怒りが伝わっている。
本来なら受付嬢からクエストを受けるはずだったであろうギルドメンバーが、俺の為に列を譲ってくれる。
「どうも」
「あ、いえ……」
今の俺は周囲を畏怖する存在のようだな。
ここにいる面子と普通に正面から戦えば、俺は勝てないと思うんだけどね。
様々な功績によって、とてつもなく強い存在だと思われているな。
「――あ、ありました!」
羊皮紙をめくる手がピタリと止まる。
「うむ! で、あの垂直落下式ナイチチは!」
「……えっと、クエストに出ています」
「…………は?」
「泊まり込みのクエストですね。王都は南にあるリオスの町の近くでコボルトが悪さをしているそうでして」
「コボルト――」
ファンタジーで言うところの犬の頭をしたゴブリンみたいな獣人だよな。
RPGだとスライム、ゴブリンに並ぶザコ敵。しかも最初の二種類に比べるとマイナーにカテゴライズされるだろう。
魔法が使えるコクリコなら難しくはないだろうが、
「クエスト?」
「はい。三人で行っています」
「三人?」
あの王都では内弁慶のまな板が、いったい誰と?
問うてみれば、
「認識票がドゥブの二名を連れて出立しています」
「ん? ん? ん? ど、どどぅぶ?」
「あ、はい。コクリコ様も含めるとドゥブ三名です」
コクリコの認識票は黒色だ。
つまりドゥブなる単語はそれを指しているのだろう。
だが全く聞き覚えのない単語なので、
「何色?」
と、一応は質問。
「第六位階の黒です」
う~ん。
うん?
なんだ? 俺の知らないところで変な呼び方になってる。
第六位階は分かる。一番下だから、六番目って事でそう呼ばれているんだろう。
でも黒色級がどぅぶってなによ。
疑問符を浮かべていたら、ふくらはぎ辺りをちょんちょんとする存在。
そんな所をちょんちょんするのはあの子しかいない。
「なんだいゴロ太」
「勇者様。ゲッコーさんが考えてたよ。位階とかの呼び方」
「ああ。ありがとう」
あの人が原因か……。
軍関係だからね。
ゲーム内では組織のトップだから、そういうのも考えてたんだね。
位階の説明をゴロ太と受付嬢に教わるのは――――、認識票、階級制度を考えたはずの――――俺だ。
――――説明を受けてます――――。
「……OK……とりあえずは理解した……」
第一位階、
第二位階、
第三位階、
第四位階、
第五位階、
第六位階、
――と、ゲッコーさんは勝手に考えて、勝手にそれを受付やらメンバーに覚えさせたそうだ。
形から入りたがるのかな?
俺やコクリコと同じで、ゲッコーさんって案外、中二病なのかな?
と、いうより……。
何処の言葉だよ! コルクラだゴルムだ。聞いたことねえよ!
なのかな? じゃねえわ! 中二病が大爆発じゃねえか!
これは後で問い詰めないとな。
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