PHASE-205【頑張って階級を上げましょう】

「あれだから、ベルやゲッコーさんは認識票を与える方だから。与える方は、首にぶら下げる必要はない」

 冠位十二階も紫が最高位だけど、それ以上の権力をもった存在が評価して色分けしてんだから。


「そうか」


「ベル! 私は紫ですよね!」

 しつこいやつだ。

 コクリコめ! ベルはコクリコにはそこそこあまいからな。それが分かっているからコクリコもベルに頼んでやがる。


「いや、こういうのは公平性を持ってやらねばならない。活躍が著しい者に相応の評価をしないといけないからな」


「私の活躍は!」


「以前パーティーに入る時、トールと約束していたが、クレトスではそれを破り、作戦思案中に大声を出し、山賊の小屋に攻撃を仕掛けた」


「う……」


「魔法を使用できることは凄いが、それでも戦闘となれば、連係に重きを置けないのはよくない」

 流石は帝国軍中佐。

 評価となれば公平無私だ。部下の兵達からの高い人気も頷ける。

 ベルに言われればぐうの音も出ないのか、拗ねたようにソファに座り直す。


「認識票はトールが言うように黒からだ。コクリコは実力がある。後は周囲との連係を大事にして評価を上げていくんだな」


「私は!」

 コクリコが座るのが合図だったかのように、今度はエルフがソファから立ち上がる。


「シャルナとはまだ日が浅いから何とも言えないが、森での動きは素晴らしかった」


「私より素早かった人に言われてもね……。エルフなのに落ち込まされたよ」

 勢いよく立って聞いてみたが、ゲッコーさんに言われればコクリコみたいに力なく座り込む。


「いや、そもそもシャルナはまだうちのギルドのメンバーじゃないぞ」


「そうなの!?」


「そうだよ。先生はいいって言ったけど、俺が許可してないもん」

 普段は先生が勝手に認可してるけど。


「じゃあ、許可してよ」


「お前は俺の障害になるからな~」

 風紀委員とか邪魔な組織だよ。


「え~。そんな小っさいことを言ってるから、彼女とか出来ないんじゃないの」


「うっさい! 二千年の間いないのよりましだ」


「なによ! どう言われようとも、私はこのギルドに入るから! 皆はどう?」

 チッ、ここで周りを取り込む気か。


「俺は構わんぞ。実力者は歓迎だ。それにシャルナは生物の保護活動をしているからな。人格も問題ない」


「トールと違ってゲッコーは融通が利くのね。さすが!」

 融通が利くとか言ってるけどな。その人は俺と違って、お前の裸をバッチリと見てるからな。


「人格は問題ないだろう。会頭は柔軟性がないと駄目だと思うぞ」

 と、ベル。

 言われなくても分かってるよ。


「正直、いいんだけどね」


「そうなの?」


「初対面の時、俺の事を勇者と信じなかったからな。その意趣返しをしているだけ」


「ちっさ!」


「うるせえ。実績はちゃんと目にしてないから、コクリコ同様に階級は黒からだ」


「了解! とりあえずは活躍すればいいんでしょ。クエストこなすよ」

 と、言って、先生に続いて退出。

 流石はエルフだ。俊敏で音も無く部屋から出て行った。

 

 シャルナが黒を簡単に受け入れたからか、コクリコも、


「仕方ないですね。黒から頑張りますよ。まあ私の実力なら、一週間もしないうちに階級は紫になるでしょうが」


「ガンバリナヨ」


「抑揚のない言い方は頭にきますよ!」

 なんだよ。応援してあげたのに。

 

 無音だったシャルナとは対照的に、黄色と黒のツートンカラーからなるローブを大きく揺らすように、ズカズカと足音を立てて退出。

 あいつもクエストに励むようだな。

 

 初期だと王都の復興作業の手伝いや開拓。害獣や害虫駆除ってところか。

 頑張りなよ。


 泥まみれ、汗まみれになって頑張る者が成り上がっていけるギルドにしていきたい。

 それが会頭としての俺の勤めである。

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