PHASE-204【チートを評価なんか出来るわけがない】

 反応を見る為に集った皆をぐるりと見る。


「いいのではないでしょうか。少ない方が覚えやすいですからね。私の時代の将軍号はそれはそれは――――」

 賛成第一号は先生。

 ね~。多いですもんね。

 

 ゲーム内で漢王室の為に尽力すると得られる将軍位。

 牙門将軍とか鎮南将軍。車騎しゃき将軍に驃騎ひょうき将軍だのと、三公なんかもふくめると、四十を超えてまあ多い。

 

 どれだけ頑張れば将軍号の上にある役職につけるのか。

 丞相までどんだけ長い道のりなんだよ! と、漢王室に代わって俺が操作する曹操が皇帝になるように、皇帝に禅譲を促したいくらいだったよ。


「俺たちはギルドですからね。将軍位なんてかたっ苦しい役職ではなく、階級を与える事で、高レベルのクエストを受けてもらったり、簡単なクエストを与えたりと、適正レベルを図るための指標と考えてくれればいいです」

 一目で分かるようになれば、新米に対してベテランが師事もしてくれるようになるし、受付の仕事も円滑になる。

 

 この案には皆さん納得だ。

 

 ベルやゲッコーさんに先生は、戦争に身を投じている人物なので、こういうのはあって当然と考えているようだ。


「で、肝心の認識票はどんなデザインにするんだ? ドッグタグみたいに簡単な物をと言っていたが、そうなると簡単にいかないこともあるぞ」

 階級も分かるように作るとなると、見た目を変えないと直ぐに判別は出来ない。

 となれば、結局は階級章のような様々なデザインを用意する事になるのか? と、ゲッコーさん。

 

 六段階と少なめの階級とはいえ、階級一つ一つの為に鋳型のデザイン製作を考えるとなると、無駄に時間と物資を浪費する愚行に繋がるのは俺も理解している。

 なので――――、


「デザインはドッグタグみたいに楕円にして、階級は色にします」


「分かりやすい」

 ベルが賛同してくれる。


「で――、色はどの様に考えている」

 継いで口を開くベルに、


「上から紫、青、赤、黄、白、黒にしようと思っている」


「六色か。その順序からするに本来は十二の階級だな」


「流石はゲッコーさん。日本の歴史にも精通してますね」


「まあな」

 と、ドヤ顔。


 俺の学力が確かなら、603年に聖徳太子が制定したのが冠位十二階。

 聖徳太子から知的財産を拝借させてもらう。

 冠位十二階の濃薄区別を無しにしたものをギルドの階級とした。

 

 本来、紫なら濃紫と薄紫の二色に分けるように、各六色を濃薄二色に分けた全十二色だけど、階級が十を超えるのは面倒。

 階級の数が多いのは正規兵だけでいい。

 ただでさえ縛られるのが嫌いな冒険者を多くの階級で区別したら、嫌気がさしてしまうからな。


 問題は――、


「色づけとかって大丈夫ですかね?」

 紫色とかってあるのかな? ローマだと皇帝の色だったよな。

 塗料となる貝で染めるのは、もの凄く高価だったと聞いたことがある。

 この世界でも高価となれば、階級を色で分けるって案は無しだな。


「問題ありません。冶金において他種族を凌駕するドワーフの者たちがギルドにはおります。彼等は独自の技術で様々な色合いの武具を生産しております」


「へ~」


「なので、彼等にドッグタグなる階級認識票の鋳型製作と共に、色づけもお願いします」


「それは助かります」


「では早速」

 ここからの先生の動きは迅速。

 直ぐさま応接室より退出。

 きっと次の日にはサンプルを持ってきてくれることだろう。


「私達は何色なんだろうね」


「なにを言ってるんですシャルナ。私達は紫に決まってますよ」

 面白いことを言うね~。


「シャルナはともかくとして、コクリコ――――お前は黒だよ」


「は、何ですか? 変態」


「変態じゃねえよ。会頭としてお前が紫なんて認める分けねえだろう。支給しねえっての。黒から始めろ。大魔法の一つでも使えるようになれば、白に階級を上げてやる」

 変態と言われて内心ではイラッとしたが、声を荒げることなく冷静に返せば、「くっ」と、悔しそうだった。


 そりゃそうだ。俺は大魔法が使えますから。使えない人はその辺では言い返せないだろうし、変態発言でも冷静さを保っていた俺からの発言だから、余計に反論できなかったようだな。


 変態という単語に俺が激高すれば、付け入る隙もあったんだろうけどな。


「では、私やゲッコー殿は何色だ?」


「は? ベルとゲッコーさん。んなもんあるわけないじゃん」


「なぜだ? せめて赤くらいは欲しいものだ」


「なに言ってんの? ベルが赤なら、ギルドメンバーは全員黒だよ。永遠に変わることのない黒の認識票だよ」

 貴方方はチートクラスなんだから、そもそもが認識票で評価できないんだよ。

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