PHASE-203【階級制】

「と、言うことで、真面目にギルドのことを考えよう」


「昨日は真面目ではなかったんだな」


「真面目じゃい!」


「ほう、あの考えはやはり真面目なんだな」

 一日すぎて応接室。

 ソファに座るベルは腕組みで俺を睨んでくるが、腕組みで強調されたアバカンに目がいく。


「真面目に娼館を考えている証拠はその視線――――か!」


「でゅ!」

 昨日に引き続き、コースターチャクラムが俺の額にダイレクトアタック。


「お前はエロいことに関しては、学習能力がないな」

 俺のめげないエロの探究心にはゲッコーさんも呆れ口調。

 仕方ないよ。童貞だもん。

 年中、頭の中は女体で占められているから。


「まあまあ、その話は今後ということで」

 先生が間に入ってくれた事で、振り上げられた第二のコースターチャクラムを見舞われる心配はなくなった。


「では、主。皆をここに集めた理由を」

 新しく幹部として迎えいれたワックさんにも列席してもらい、俺、ベル、ゲッコーさん、先生、コクリコ、シャルナの七人で話し合う。

 正直、なぜにコクリコとシャルナがいるのかが分からない。

 確かにコクリコはパーティーメンバーだが、幹部という立ち位置ではない。


 シャルナに至っては、いまだ正式にギルドの人間ですらないからね。

 ――――俺が許可してないから。先生は許可してるけども。俺は許可してない!


「二人は風紀委員としてここにいる」

 俺の表情を読み取ってのベル。

 

 そもそも風紀委員なんて組織も俺は認めてないけども。

 意見が食い違えば最終的には戦争になるとか脅してくるから、仕方なく黙認してやってるけどな。


「ここに列席するのは七人――――。どうでしょう、英傑七士というのは!」


「建安七子のようなものですね」

 妙案とばかりに自信を持って、無い胸を反らしながら発言するコクリコに、先生が相槌。


「却下。そもそも六士でいいよ。ノービスお断り」


「なにおう!」


「おやおや、誰もコクリコさんの事をノービスとは言っていませんよ。自覚してるんだね~」


「ぬう!」


「ギルド名を決めるんじゃないんだ。そんなもんは自分たちで組織するもんじゃない。認めてくれた人達が名付け親になってくれればいいんだ。お前も本気で自伝を記して歴史に名を残したいなら、周囲に認められるようになるんだな」


「うぐ……」

 決まった。


「お前は、どうして含蓄深いことを言えるのに、色事ばかりを考える」


「仕方ないだろうベル――――」

 演技まる出しでソファから立ち上がり、背中を見せつつ、数歩歩いて振り返ってからの、


「男の子だからね」

 格好つけてみれば、女性陣からはため息だ。


「主の言は素晴らしいです」


「荀彧殿。いくらトールに心酔しているからといって、なんでも賛同するのは……」

 天才に対して呆れ口調のベル。


「色事を考えるのは年相応。些末な考えを巡らすのが主の限界。そこはいいのです。その前の発言はベル殿同様どうように感銘を受けました」

 ――…………ん? 今サラッともの凄く抉ることを言ったよね?

 忠誠心MAXが嘘なくらいに、些末とか言い放ったよ!


「……てなわけで、認められるように頑張ってもらうのと、一目で力量が分かるように、ギルドに階級を作ろうと思っております」


「どうしました? 急に暗い声音になりましたが」

 先生って、もしかして天然なところもあるのかな……。

 知らず知らずに人を傷つけるタイプ?


「階級を作るとして、一目で分かるようにするには、階級章でもつくるのか?」


「もっと簡単に、且つ、その人物の名前なんかも記入したいね」


「ドッグタグだな」

 ベルへと返せば、ゲッコーさんも参加。

 冒険者である。最悪なことも考えないといけない。

 顔が分からないって事もあるだろう。

 

 そんな時に、ドッグタグがあればその人物が特定できる。実際のドッグタグもそういう意味であるわけだし。


「白金や金。アダマンタイトにオリハルコンとか、そういうので階級を決めてる所もあるんだよね」

 俺が好んで読んでるファンタジー作品からアイディアを拝借。

 

 ただ、階級を多くすれば分かりづらいこともあると判断して――、


「階級は六段階にしようと考えております」

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