PHASE-200【帝王になりたい男の哄笑】

 ――――さて、第一段階は成功に終わった。

 これほどの高揚感を得たのは始めてかもしれない。

 俺の声を耳にし、野郎たちが励む。


 クエストを嬉々として受ける男達をぐるりと見渡し、一階の受付に背を向けて、俺はゆっくりとした足取りで踊り場より二階へと向かい上っていく。


「主――」

 二階へと上がれば、そこでは先生が待っていた。


「次なる一手です」


「はい。これも士気高揚の為ですね」


「ええ。ですが、いいんですか? 先生はこういうのは反対するかと」


「いえいえ、必要と考えています。なくてはならないのは古今変わらないものです」


「奥さんがこの世界にいなくてよかったですね」


「なぜです?」

 いや、なぜって、怒られそうだと思うんですが。

 表情を読み取ったようで。


「心配は無用です。私は妻だけを愛していますので。そもそも興味がありません。これは必要であるから実行せねばと考えているだけです」

 なるほど。

 しかし、サラッと言いましたね。

 

 普通のルックスの男が発せば、キモいという発言が方々ほうぼうから聞こえてきそうですが、先生が言うと黄色い声しか上がらないんでしょうね。

 尊敬しますよ。


「では――――、先生」


「はっ」


「――――よしなに」


「御意」

 通り過ぎる前、俺は顔を正面へ固定したまま目だけを動かし先生を見、すれ違いざまに先生の肩へポンと手を置いてから、再び階段を上がりはじめる。


 三階にある俺の部屋に戻るために――――。

 今は誰もいない俺の部屋に――――。


 ――――フフフフ――――――。


 ベルはゴロ太で籠絡。

 ちょろインの素質がある風紀委員長がああなってしまえば、残りの二人も少しは静かになるだろう。


 ――――ハハハハ――――――。


 物事は何事もエスカレートするもの。

 お酒を飲むだけのお店? 馬鹿馬鹿しい!


 俺が真に築き上げたいのは――――、エロいお店に決まってんだろうが!


 シャルナにコクリコが危惧していたとおりだよ。


 俺は端からおピンク街――――。いや、ショッキングピンク街を建設するつもりだったのさ!

 造ってやる絶対にな!

 

 俺は勇者で、会頭で、覗き魔ラインブレイカー


 そして第四の称号である、夜の帝王ザ・エンペラー・オブ・ザ・ナイトという称号を得るのだ!


 俺のために傅くがいい! 裸体まっぱの美人たちよ!

 童の貞である俺を喜ばせてくださいよ!

 周囲の女性陣は俺に優しくないから、その分まっぱの美人さん達が俺に優しくしてくださいよ。


「ハハハハハ――――ッ! ハッ―――――ハハハハハハハハハハハハハッ! ハハッ! ハハハハハハハハハハッ!!」

 誰もいない応接室の中央に立ち、手を大きく広げ、弓なりとなって哄笑。


 室内全体によく響き渡る、悪役然とした笑い声だった――――。


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