PHASE-201【崩壊の足音】
気分がいいな。物事が自分の思い通りになるのは、
「やあ、おはよう」
昨日は気分よく哄笑して、その後はバッチリと早寝をするっていうね。
最高に目覚めのよい朝だ。
「うむ、よい挨拶だな」
ゴロ太のスーツ姿が気に入ったのか、まったくもって離そうとしないな。
見た目はぬいぐるみを抱きしめた美人である。
俺もそこでギュッとしてもらいたいもんだ。
だが、ショッキングピンク街の落成がなった暁には、美人に囲まれるんだ。
ベルも大事だが、ハーレムも大事。
そこでおっぱいに囲まれるんだ♪
「なんだ? 気迫ある挨拶だったのにな」
おっと、欲望を感知されましたよ。
ギルドハウス一階は、現在、酒場ではなく食堂としての役割だ。
昨日の宣言でやる気に漲っているようで、ハウス内は閑散として静かなもの。
皆、クエストに励んでくれているようだ。
目立つのは野良の冒険者がソロだったりパーティーなんかで朝食をとっている風景である。
メンバーが励んでいるのはいい事だ。
こうやって士気が上がるから、版図の拡大も可能になるわけ。
魔王軍を押し返すことが出来るわけ。
だからこそ絶対に必要なのだ。戦意高揚の為のエッチなお店が!
「随分と高ぶっているな」
「やる気に漲っているからな。皆を触発したつもりだったけど、俺自身が触発されたぜ」
「励めよ。私もゴロ太と共に、お店の案を考えねばならんからな」
うむ。俺もだよ。
「おはようございます」
「おはよう」
おう、コクリコにシャルナの風紀委員のお出ましだ。
今となっては脅威では――――、
「主」
ん?
「先生、おはようございます」
「
ちょっと待って! なにを言おうとしているのでしょうか?
「やはり時間を要しますね。建物建設にはドワーフを中心とした職人たちに任せればなんの問題もないのですが」
「ならばいいじゃないですか!」
余計なことは言わなくていいです。まだ、この事はここにいる面子には言わないようにしないといけないのです。
落成式さえすめば後は押し通すので、そこまでは悟られたくないですからね。
先生はスーパーかしこじゃないですか。
俺がどうして衝突していたか分かっていますよね? だから、これ以上は二人の時に話しましょう。
「一番の問題は医療です」
「「「医療?」」」
風紀委員が声を揃えたよ。
「病院を建設するのですか?」
代表してベルが先生に問うてくる。
「その通りだよ!」
すかさず割って入る俺氏。
冗談ではない! ここで水泡に帰すなど断じて許されん!
ギルドメンバーは綺麗なお姉さん達とお酒を飲むためにしゃかりきになり、そこで満足できるんだろうが、童の貞である俺は、それ以上の未知の世界に踏み入りたいんだ!
「医療機関も重要です。そうでなければ性病が蔓延する可能性がありますからね。医療が一定の水準になるまでは時間を要さなければなりません。当分の間、建設は見送りたいと思っているのですが」
ああ……。
先生。医療機関とかは良かったけども、その後の言葉はいらなかった。
俺の理想郷が……。
まほろばが、頭内で音を立てて崩れていく……。
それに合わせて俺も力なく膝をついてしまう……。
「主、どうされました?」
え、この人マジで言ってんの?
なんで俺が風紀委員達とさんざっぱら話し合っていたのか理解してますよね。賢いんだからな……。
そもそもなんでここで言うの? あれか、俺、他言無用とか言ってなかったのかな? よしなにとは言ったけども。
言ってなかったとしても流れで分かるよね。賢いんだからか!
先生……、忖度……。
俺に対しての忖度!
「荀彧殿……、どいてください」
「あ……」
あ……、じゃないですよ。ねえ、わざとでしょ? これわざとやってますよね。
なんだかんだで、先生は反対派だったって事でしょうか!
「おい」
低く鋭い声と共に接近してくる足音は、死刑執行のカウントダウン……。
「性病とはどういうことだ? トール」
「どういうことなんでしょうね。トール」
「本当にどういうことかな? トール」
ハハ……。
エメラルドグリーンの瞳。琥珀の瞳。碧眼の瞳。
六つの瞳に共通するのは、雷光の如き激しい力を宿していると言ったところか。
――……終わった…………。
「聞いているのか? どういうことだ?」
怒気が含まれたベルの声。ゴロ太を床に立たせれば、同時に胸ぐらを掴まれる俺氏。
膝をついた状態から、無理矢理に引き起こされるわけです……。
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