PHASE-196【無敵の風紀委員長、誕生?】
「なにかな?」
「内容は男の事ばかりが考えられてて、女のことは考えられていない」
「そこは、男が反対に酒を注ぐんだよ」
「は? 男にそんなことされても嬉しくないと思うけど」
「お前は分かってねえ!」
俺の世界ではホストという職種があってだな。そこでは夜な夜な女たちが湯水の如く金を使うとか。
田舎だし、十六の俺には未知の世界だけども。
「女だって、いい男にチヤホヤされたいんだよ!」
「私は思わない」
「お前が思わなくても他がそうなの! まったく、二千年近くも生きといて、なんでそんなところは疎いんだよ。男と恋愛関係になった事もないおぼ!?」
ちゃんとおぼこと言わせてもらいたかった……。
ベルほどではないが、鋭い拳が俺の顔面に直撃。
ソファー事、倒れる俺。
目を開けば天井が見えら……。
「主!」
直ぐさま先生が起こしてくれる。
「駄目じゃないか、ギルドの会頭を殴るなんて!」
と、ワックさんがシャルナをお叱りだ。
まったくなんてエルフだ。俺が嫌な悪代官なら、殴られた時点で、出合え出合えと大音声だよ。
そしたら、外で待機している精鋭をはじめ、ギルドメンバーがここへとなだれ込んでくるんだぞ。
「こいつが私を侮辱するのが悪いんだ!」
頬を紅潮させて大激怒。
――……まさか!?
「シャルナって、二千年近くも生きてるのに、男と付き合ったことないの?」
「……くっ……」
おう図星。
二千年もの間、恋愛経験ないとかどんだけ奥手だよ。
「そら男にチヤホヤされる店なんかが出来たら、免疫ない二千歳エルフちゃんは、緊張でガチガチになっちまいますわな」
ケラケラと、殴られた恨みを晴らすかのように嘲り笑ってやる。
「うるさい! 大体、私は千九百四歳だ!」
「人間目線だと大して変わらねえよ! 十万五十歳とか言ってる閣下かお前は!」
「訳の分からない事を言って! とにかく私は反対に投票するからね」
「いやいや、なんで? お前はギルドメンバーじゃないだろう。そもそもそんな権限はない! ここにいる権利もないのだ! 立ち去りたまえ!」
「私はこのギルドに入るから!」
「俺が許可しないとダメ!」
「いいよね? 先生って人」
「はい、かまいません」
え~……。
実力があればOKなんですか……。
「私は反対するから。ベルにも言いつけてやる」
「マジで……。そこで風紀委員長を投入してくるんじゃねえ!」
「風紀委員長? 風紀委員――――。いいわね。私達はベルを中心に、ギルドの風紀を正すよ」
――…………………………。
「冗談じゃねえぞ!」
くわっと目を見開いて大反対。
興奮で殴られた痛みも吹っ飛んでいる。
無敵の風紀委員長なんて絶対に投入させないぞ。
「明日もう一回ベルを交えて話し合うからね。行こうコクリコ」
「あ、はい……」
全くもって、活躍できないままに退席しないといけないからか、コクリコは無念そうに退席していった。
「――――で、どうするんだ? このままだと無敵の風紀委員長様に、我らが会頭兼勇者殿が、モータルにのされるわけだが」
何を悠長に煙草を吸いながら言いますかね。
ここを禁煙スペースにしてあげましょうか!
「ゲッコー殿の言うとおりです。主、ベル殿が参戦したら、主の考えは泡沫の如く消えるでしょう」
先生に言われると、間違いなく確定しそうだな……。
俺の周囲の女たちはお堅いんだよ。もうすこし柔軟になってくれないとな。
コクリコはともかく、残りの二人は柔らかい物を二つずつ持ってるんだからさ。
モテない男が、ピンクなお店で美人たちにチヤホヤされたっていいじゃない。
俺はね、異世界に転生してますけども、漫画、小説の同じ立場の主人公と違って、強くもなければ、可愛い女の子達が甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるわけでもないの!
基本、俺の周囲の女性陣は、俺を殴る蹴るのサンドバックあつかいですよ。
だからそんなお店が欲しいんだよ!
いいじゃんよ、雇用が増えることは王都の復興にも繋がるんだから。
――ってな事を理路整然と語ったとしても、ベルのことだ、何処ぞの元新選組三番隊組長の如く、【阿呆が】の一言と共に、世界を狙える右ストレートを見舞ってくるに違いない……。
まいった……。
いや、分かってはいたんだ。どうやったってベルの耳には入るからな。
そうなれば、俺の考えを真っ向から反対してくる事は……、分かっているんだ。
結局は正面からやり合わないといけないことも……。
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