PHASE-184【アストラルサイドにクリティカルヒット】
――――程なくして村から派遣された屈強な男達。
来た当初は、やはりというべきか、ティーガー1を目にしてギョッとしていたが、安全と分かれば山賊たちを連行していく。
「終わった。あっけなかった。流石はティーガー1だぜ」
などと、気取ってティーガーから降りる。
「凄いねトール!」
「お、おう」
初対面の時とは打って変わって、俺に尊敬の眼差しを向けてくるシャルナ。
テンションが上がってるのか、長い耳を上下に揺らして、ティーガーに触れている。
「全部が鉄だなんて!」
と、鉄の塊が動いているのが不思議なようで、更に耳を激しく動かしながら、全体をペタペタと触りながら見ていく。
「いやしかし」
ここで更に目を輝かせた人物が、コン、カンとノックしつつティーガーを見物。
「鋼鉄の箱はどういう原理で動いているんだろう?」
言葉を継いでのワックさん。
「勇者殿、これは解体してもいいですか?」
「ダメです」
速攻で断ってやる。
オーバーテクノロジーを探求できないのは残念そうであるが、一歩離れてから全体を見つつ、「なるほど。帯状の走行装置なら普通の車輪と違って、悪路も――――」と、呟き、初見で無限軌道の特性を理解する姿を目にすれば、王様が天才と言っていたのも頷ける。
流石はワック・ワックさんだぜ。
間違いなくこの人が、火龍の鱗で装備を作ってくださる方に違いない。
――だが、ここはそれよりも先に実行しなければならない事もある。
「ワックさんとゴロ太の無事を祝おう。ワックさんは泥で汚れてしまっているし、ゴロ太も小さな体で森の中を走り回って疲れただろう。クレトスは湯治場って事だし、温泉に入らせてもらおうぜ。瘴気だってはねのける湯気なんだ。温泉には更なる効能もあるだろうさ」
「そうだな」
ここで真っ先に賛同したのは風呂好きのベル。
混浴ってのは無理だが、仕切りの向こう側には、浪漫イベントが発生してもらいたいところだ。
仕切りと言う名の境界線を俺は攻略したい。
そう! 浪漫イベント・NOZOKI。
俺は称号を得たいのだ!
フフフ――――、ん?
愛玩生物がトコトコとベルへと近づき、
「お姉さん、お風呂が好きなんだね」
「あ、ああ! 大好きだ!」
「ゆっくりと楽しんでね」
見た目とはかけ離れた声だが、首を傾げながら可愛さを前面に出してやがる。
その姿にベルは後退りだ。
怖がられていたのに、急な接近をしてきた事も、浮き足だった要因の一つだろう。
「ゴロ太、いつもみたいに背中流して~」
「わかった~」
「「な!?」」
ここで、ベルと声を合わせてしまう。
ゲッコーさんとなら分かるが、ベルとシンクロ。
ベルは慌てた感じで、
「シャルナはゴロ太と入るのか?」
「たまにね。背中を流すのが上手なのよ。この子」
「わ、私も是非!」
これがシンクロの原因ですわ。
心の中で舌打ちだよ。
俺が見たことのない興奮した乙女がおりますわ……。
とにかく、可愛いものに目がないようで、ファンシーな喋る子グマと温泉に入るという、ファンタジーな世界がたまらんらしい。
「う~ん……」
なぜに子グマは熟考するようなポーズを取る。
頤に手――、前足を当てるんじゃない! 俺だったら即OKなのにさ!
ロケットおっぱいを拝めるんだぞ! 何を考える必要があるか!
「駄目……だろうか?」
ベルの弱々しい語気よ……。
「えっとね。お姉ちゃん、怖いもん」
言い方は可愛いが、声と内容は可愛くなかった。ベルにとっては――、可愛くない内容だった。
「なん……だと…………」
まるで鈍器で頭部をクリティカルヒットって感じで、ベルの足がふらついている。
本当に、真新しい光景がよく見られる一日だ。
子グマにとって、興奮している姿や、いいところを見せようとして、ハンター達や俺に凄む姿が怖かったようだ。
立ってるのもやっとなほどのショックを受けているな。
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