PHASE-182【山の王者である虎とは別の虎】

「あのさ、あんまり強い魔法を使用しないでくれる」

 俺なりの格好いいポーズをしている時に苦言とは、生意気だぞシャルナ。


「なんで?」

 こっちは綺麗に決まって、若干、悦に浸っているのに。


「森がめちゃくちゃになるからだよ!」

 色素の薄い金髪を揺らめかせて、碧眼で睨まれてしまう。

 

 確かに、大魔法は威力が高いからな。自然破壊にも繋がるってもんだ……。

 さっきは木々の多いところだったから、水の勢いも抑えられたようだが、ここは開けてるからな……。


「すんません」

 お怒りのエルフに綺麗に一礼。


「だけど見てくれ。ゴーレムを」

 大魔法の効果で、一体は完全に流しきったし、残った一体も崩れ落ちている。


「くそ! クリエイトのスクロールだ」

 おっと、クリエイトって聞けば、嫌な予感しかしないぞ。

 アラミアンスって山賊の指示に従って、一人の山賊が開いたスクロールに手を当てると、崩れ落ちたゴーレムがみるみる元通りだ。

 

 言葉通りのスクロール効果。


「にゃろ! 山賊の分際でどれだけスクロールを持ってるんだよ!」

 仕方ない。


「スプリームフォウッ!?」


「だからダメだって!」

 だからって、弓で俺の頭をどつくんじゃない!


「目の前の脅威も大事だろうが!」

 ゲッコーさんがロケランを撃てば、なんの問題もないのに。

 俺を試すように傍観だもの!


「お兄ちゃん」


「なんだい」

 声はあれだが、姿が愛らしいので、一応はあやすように話してみる。


「シャルナお姉ちゃんの言うように、森に被害が出るから、止めてほしいな」

 まん丸なお目々の、マヨネーズ容器体型からのお願い。

 可愛くはあるが、俺は乙女ではないので、


「でもな、脅威が迫ってるから」


「でも……」


「おい、ゴロ太が悲しんでいるじゃないか」

 えぇ……。

 ここで胸囲――じゃなかった、脅威の中佐が炯眼で俺を威圧してくる。

 俺は乙女ではないが、ベルは完全なる乙女だった。

 

 可愛いものの懇願を聞き入れなければ、絶対に許さないといったところか……。


「もっと別の方法を探せ」


「探すんじゃなくて、一緒に戦おうぜ」


「私はゴロ太の護衛で忙しい」

 愛くるしさが羨ましい!

 でも、ゴロ太は未だにベルを怖がってるみたいですが。

 ポイント稼ぐのも大変だな。

 

 俺がお前に気に入ってもらえるように、ポイントを必死になって稼いでる気分が少しは理解できましたか!

 

 いいさ、やってやるさ!


「お前等には悪いけども、ここからは完全なる八つ当たりを実行させてもらうからな!」

 ゴロ太に抱く、妬み嫉みの思いを山賊たちにぶつけてやる。


「やれるもんならやって見やがれ! こっちはまだクリエイトのスクロールは持ってんだ」


「知るか! そんなもん使い切るまで破壊してやりたいが、お前等の持ってるスクロールは欲しいので、素直に降伏するように」


「ふざけんな!」 

 うるせい! こちとらギルドの会頭なんだよ! メンバーの為に上等な報酬が得られるチャンスがあるなら、実行に移さないとな!

 

 物理、魔法に強くとも、火力の高いものなら破壊は可能だというのは、そこのゴーレムよりデカいシーゴーレムで理解している。


 スクロールは得たいから、迅速に対処させてもらうぞ。


「よぉぉし! 俺も見せてやろう! そっちが土と石の巨人なら、こっちは鋼鉄製だ」


「大魔法は駄目だからね。自然破壊は無しだよ」

 おっと、半信半疑のエルフよ、ここで俺の凄さを完全に理解させないとな。

 サージカルストライクで対処してやるから心配するな。 


 ミズーリでお世話になったゲーム、ワールド・バトルシップを持っているということは――、


「こいつも持ってんだよ! 出てこい第三帝国の凄いヤツ! ティーガーアインス!」

 プレイギアを前面に出して、輝きの中から現れる鋼鉄の塊。

 

 ワールドシリーズの陸版。ワールド・バトルタンクより、WW2ダブダブツー時の陸の王者と言っても過言ではない、皆大好きティーガー1だ。

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