PHASE-181【俺以外、召喚をするの禁止!】

「気をつけろ。手前のアラミアンスってのはスクロールを所持してるぞ」


「なに!? なぜ知っている」


「それは俺が勇者だからさ」

 格好つけてみる。

 以外と受けがよかったのか、シャルナからは、凄い! って、尊敬された。


「お兄ちゃん流石は勇者だね。だから相手のことも理解できるんだね。凄いや」

 って、ゴロ太からも可愛い顔で尊敬される。

 声はまったく可愛くないけども。

 むしろ勇者としては、その威厳ある声になりたい。

 

 でもって、ゴロ太に尊敬されたら、ベルから嫉妬の目で見られるっていうね……。

 その視線は俺の心をズンガズンガさせる……。

 俺が他の女にチヤホヤされてたら向けて欲しい視線なんだけどな……。


「とにかくだ。あいつから潰せばいいわけだな」

 麻酔銃を引き抜くゲッコーさんの動きは早いが、


「なめるな! いけゴーレム!」


「ふぁ!?」

 ゴーレムだと! シーゴーレムならばかすか沈めてきたが。

 スクロールを開いて、描かれた魔法陣に手を触れさせれば、スクロールが光の粒子となって霧散。


 強い光とともに大地が揺れて、地面が盛り上がり形を成していく。

 四メートルはありそうな、土と石で出来た巨人が現れた。


 樽のようなボディに、大木のような腕と足。筒型の頭には、赤く輝く一つ目。

 なんとも機械的な目である。

 グポーンという効果音が似合いそうだ。


「さあトール。どうする?」


「え!?」

 急にゲッコーさんが後ろに下がったよ。

 手にする麻酔銃はなんだったの?

 明らかに戦闘を俺にやらせようとしているよね。


「啖呵を切っていたからな。きっと勇者としての戦いを見せてくれるのだろう」

 追撃のベル。

 明らかにボス戦なんですけど。

 

 毎度このパターンに入るね。

 俺をそこまでして育てたいのか?

 この二人、スパルタもいいところ。

 

 ゴーレムへと目を向ける。

 ズンズンと地面を揺らし、やる気満々でこちらに接近。

 

 冗談ではない!


「いけ!」

 だめ押しとばかりに、山賊の中の一人が更にスクロールを手にして、発動。


 ――……なんてこったい。またもゴーレムが出てきた。


 山賊全員を調べなかった俺のミスだな。

 こうなると、他の連中もスクロールを所持していると考えるべきだろう。


「面倒な相手だね」

 シャルナが汗を垂らす。


「ゴーレムだからな。物理耐性に魔法にも強いんだっけ?」


「そうだよ。魔王軍に従ってたみたいだから、その時に与えられたのかも」


「魔王軍って太っ腹だな。あんな奴らにスクロールなんて」


「それだけ、潤沢にいろんな物が揃ってるって事だよ」

 こっちはWW2ダブダブツー時の金属類回収令みたいに、鉄扉を溶かして装備とかって言ってるのに、羨ましい限りだ。

 

 矢を番えて弓を構えてみても、シャルナも流石に理解しているのか、構えるだけで、矢を放つつもりはないようだ。

 

 ここはロケラン系のゲッコーさんの出番なんだが、当の本人は俺に任せてみようとしている。


「しかたね――――」


「ファイヤーボール」

 分かってた。

 絶対にお前が先手うつって分かってた。

 

 でもって――、

「ぐぬぬぬぬ……」

 通用しないのも分かってた。

 

 聞いてた? 俺とシャルナの会話。物理だけでなく、魔法にも耐性あるって話。

 ノービスじゃ通用しねえよ。


「どいてな、ぺったんこ」


「なにおぅ!」


「魔法ってのは、こういうのを言うのよ!」

 高圧的に言いつつ、


「スプリームフォール!」

 と、継ぐ。

 魔法耐性が高かろうとも、大魔法は効果あるだろう。

 なんたって土や石だからな。瀑布でもって麓まで流してやるぜ。


 宙空に突如と暗雲が立ち込めて、そこより滝が降り注ぐ。

 直下のゴーレム達はただでは済まないだろう。


 今の俺は――――、やはり格好いい。

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