PHASE-180【だから名前!】

 ハンターたちも反省。ゴロ太に謝っている。

 背後のベルにビクビクしていたけども……。

 倒れていたハンター二人も起こして、改心させた。


「にしても、その黒いの凄いな」

 シャルナの佩剣を指差す。

 拘束されていたケーニッヒス・ティーガーの鎖を容易く切って救い出したのはシャルナだ。


「刃毀れとかしないのか?」


「見て見なよ」


「わっと!?」

 投げるなよ! 投げるなら鞘ごとよこせ!

 ちょっと前に、俺はこの刃物で襲われそうになったんだよな。

 ゲッコーさんが手にした時に鉱物って言ってたが、


「鉱物って頑丈なんですか?」


「硬度はあっても、同じ質量と形状の金属に比べれば衝撃には脆いんだがな。俺もいいか?」

 と、ここでゲッコーさんがゆっくりと黒い剣身のショートソードを見る。


「――――鉱物は?」


「黒石英だよ」


「石英か。十五段階でのモース硬度は8。真ん中くらいの硬度だが。この世界の鉱物だし、普通の石英よりも硬度はあるのかもしれんが、そもそも鉱物を刀剣にする意味がな」


「黒石英はタリスマンでもあるんだ。その剣には魔法が封じられててね、その魔法効果で鉱物であるその剣は、金属の剣よりも頑丈で、切れ味もいいんだ」


「なるほど、ファンタジーの世界だな。俺たちの常識は通用しないわけだ」


「ファンタジー?」

 なにを言っているのかといった感じで、ゲッコーさんに向けて首を傾げるシャルナ。

 ゲッコーさんはハリウッディアンの髭で笑むだけで、黒剣をシャルナに返す。

 何なんだろうと、笑みの意味を見いだせないまま、樹皮を加工した鞘に黒剣を収める。


 そんなやり取りをしつつ、皆を伴って山道へと出ようとしている最中――――、


「見つけたぞ」

 あん?

 木々が少なく、視界が開けた場所。

 そこで突然の怒鳴り声。


「よくもアジトを破壊してくれたな! 仲間も返してもらうぞ!」

 なんだよ。まだいたのかよ。


「おいおい、俺たちがアジトを壊した証拠は?」

 俺が壊した張本人だけども。

 だが、あの時あそこにいた山賊は捕まえた。

 となれば、


「見ていたんだよ」

 となるよな。

 なので、「へっ」と、嘲笑。

 お怒りなのか、顔真っ赤。

 

 俺は相手を挑発するセンスが秀逸のようだな。


「馬鹿にしてんのか!」


「してるよ。その時に立ち向かってこないで逃げ出してたくせに、いまになって攻めてくるって事は、それ相応の準備をしてきました。って言ってるのと一緒だろ。こっちはそれに警戒させてはもらうけど」


「いい洞察力だ。いいぞ、もっとしたたかになるんだ」

 じゃないと戦場じゃ生き残れないですからね。

 俺の用心深さの成長に、ゲッコーさんは喜んでくれる。


「うるせー! アジトの代わりに村をいただく」


「結局はそれが目的なんだろうに。だったら俺らじゃなくて村を襲うことが正解だったぞ」


「正論だ」

 頷くゲッコーさん。

 俺とゲッコーさんのやり取りに、山賊は更に怒りで体を震わせる。

 

 正直、俺のこの強気は、ベルやゲッコーさんがいるからってのもあるが、最近では、俺自身が魔法を使えるってところからもきている。

 それに、相手の言動から、大したことない連中って分かっているからな。

 

 だが、念には念をいれる。それが俺という、根っこは臆病な存在。

 彼を知り己を知ればってやつだ。

 

 プレイギアのカメラを山賊の一人向けて――――っと。


【アラミアンス・クラウディネス】


【種族・人間】


【レベル・14】


【得手・――】


【不得手・――】


【属性・強欲】


【所持アイテム・スクロール×4】


 ――う、む……。


 レベル14か。大したことないな。

 とはいえ、低レベルの俺がホブとかマレンティを倒したから、油断は出来ない。


 得手と不得手がなんの表記もないから、端的にザコって事なんだろうが。問題は…………、名前! 無駄に格好いい感じの名前!!

 

 山賊は皆こうなのかよ。

 村のモブさんもそうだったけども。

 名前が格好良すぎるんだよ!


 名前も気になって仕方ないが、それよりも一番に警戒しないといけないのは、低レベルでありながら、スクロールを所持していることだ。


 中身が何かまでは、流石にプレイギアのアプリでも分からないが、西の塔でナブル将軍が、スクロールは起死回生の代物とも言っていたし、山賊たちが大したことなくても、スクロールは危険視しないといけないな。

 四つも持ってるし。

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