PHASE-144【鱗ゲット】

「何をしている?」

 俺が不可思議な行動をしているからか、ベルが質問。


「頑張ってくれたからな。どこかで供養してもらおうかと」

 寺院や神社があればいいんだけどな。


「供養?」

 ますます不可思議と思われているようだ。

 日本だと供養するんだぞ。他の国は知らんが。

 説明すれば――、


「物に対してそういう考えを持つとはな」

 珍しい行為だとしながらも、理解してくれた。


「それが日本の美徳だ」

 横からゲッコーさん。


「物を大切にする精神は良い事だ。代わりと言ってはなんだが――――」

 火龍がおもむろに、自らの鱗を一つ、ペキリと折り取る。

 痛くないのだろうか?

 

 で、それを俺へと渡そうとする。

 渡すのはありがたいけども、鱗の大きさが畳一畳くらいあるんだけど……。

 

 両手を挙げて受け取る姿勢。

 踏ん張るように足を広げて腰を落とす。いつでも来いとばかりに。

 

 ――だが、そんな気概は無用だった。

 驚くほどに軽い。発泡スチロールで出来てるのかって思えるほどに軽い。


「これをくれてやろう」

 一狩いくゲームだと装備になるんだよな。


「加工はしてくれないの?」

 飲み込みが早いと評価をもらった。


「加工は我よりも、人間やドワーフが秀でた技巧を持つ。その者を探して加工してもらえ。この鱗には我の恩恵も封じてある。それを引き出せるだけの巧者に頼むのだ」

 おっと、RPG要素が出てきたな。


 それにドワーフもいるんだな。


 目的が増えると、時間を割かないといけないから面倒だが、やりがいはあるな。

 コントローラー握って画面を見るんじゃなくて、自分自身の足で動き回らないといけないけど。


「勇者よ、期待しているぞ。この世界を浄化するためにも、我が鱗の力を遺憾なく振るってくれ」

 と、言い残して火龍は飛び去っていった……。

 要塞の天井を派手に破壊しながら……。


 あのおっさんドラゴン! 下手したら俺らは瓦礫の下敷きになるところだったぞ!


「なにわともあれ、一体は救い出したな」


「一柱だ」

 訂正してくるベルの声は重い。

 辛そうだ。心配になってくる。


「いったん、王都に帰るか。どこまで街が発展しているのかも気になるし」

 ベルだけでなく、俺たちにも少しは休息が必要だ。

 

 それに、この鱗を加工してもらえないと、俺の武器は銃だけになってしまう。

 

 先生の事だ。わずかな期間でもかなりの事をしてくれているはずだ。

 身分など関係なく、有能な人材であれば、最優先で登用しているだろう。

 

 期待を抱きながら、火龍のいた広間から出て、帰る道すがら、炎の壁が眼界に現れる。

 ベルがフィンガースナップを一つ。

 炎の壁が消え去れば、岩に縛り付けられたコクリコ……。

 不憫に思えてしまうな。


 俺たちを目にした途端に――――、


「んー! んー!」

 じたばたとしだした。


「お疲れ。待ってろ、今ほどいてやるからな」

 コイツの事を思って実行したとはいえ、流石にこんななんも無いところに縛るのも可哀想だ。

 ――……ベルの奴、抜け出せないように、かなりきつめに縛ってるな……。

 

 懸命に俺がほどいている動作が伝わったのか、じたばたしてたのが嘘みたいに、コクリコは静かに待ってくれる。

 可愛いとこあるじゃないか。


 普段からしおらしくしていれば、可愛いんだからモテるだろうに。


「そうだ、このマスクはもうとっていいぞ。一帯の瘴気は浄化されてるからな」

 縄をほどいてやれば、素直にガスマスクを外すが、うつむいている。


「どうした?」


「…………うう……」

 なんだ?


「ああぁぁぁぁぁぁ!!!!」


「ひょん!?」

 こ、この小娘……。

 あろう事か、またも俺の子孫繁栄を司る、玉々様を殴りやがった…………。

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