PHASE-143【納刀】
「で、話は戻るが、後の三柱とは苛烈な戦いになる」
「なんで?」
「「「はぁ……」」」
え!? なんで皆で揃って、ため息なんてついてんだよ。
これまた疎外感ですよ。
「いいか、抵抗する力を御身は有していた。長として力があるからだ。だが、残りの三柱は御身より力が劣る。つまりは――――」
「火龍よりも瘴気に抵抗出来ないから、瘴気の支配下にある三柱は、強烈な力を俺たちに見舞ってくるって事か?」
返せばベルは首肯。
「我は抗っていたからな。だからこそ、お前達は楽だったんだぞ」
あ~はいはい。
言い訳っぽくて、世界の調律ポジションが霞んでくるよ。
ど派手な大魔法とか使ってたくせに。
弁解は罪悪と知りたまえ。って名言を知らんのですかね~。
とは言え……、
心底で抗いはするが、火龍ほどじゃない。
そうなると、火龍以上の火力を普通に使ってくるって事か……。
やべえな。
堅牢な防衛を魔王軍が構築し、加えて、事象を司る聖龍との戦闘。
こっちも仲間やら召喚に力を入れないといけないな。
それ以上に、俺個人の底上げが大事だな。
これが一番の問題でもあるよな……。
魔法を覚えたが、まだまだ自分自身を強くしないと。
ここいらの瘴気が消え去れば、有能な人材が活動しやすくなって、王都に集結する事も考えられるから、そんな人達に師事を受けられる事もあるだろう。
悲観的なことばかりではないな。
行動範囲が広がり、拠点の構築。
魔王軍に対して、戦いを有利に進めていくことで、徐々に戦況を覆していく。
魔王軍も、人間サイドの行動範囲が広がれば、それだけ対処に兵数を割かないといけなくなるだろう。
残りの聖龍をガチガチに守ろうとすれば、そこでも兵力は割かれる。
人類サイドの反撃もやりやすくなるだろう。
反面、聖龍を救い出すための俺たちは大変なんだけども……。
頑張るしかないよな。
俺には頼れる仲間がいるし。
「二人に比べればまだまだだが、大魔法であるスプリームフォールを扱えるとは、しかも
でしょ。急に使えるようになったからな。いろんな作品に出て来る、チート主人公みたいでしょ。
現状、それだけしか使えないけども。
しかし、俺って才能あるのかも。いきなり大魔法だからな。
コクリコのやつ、めちゃくちゃ落ち込むかもな。
落ち込んだら、俺が考えたスペシャルな台詞を言ってやらないとな♪
「では、早速だが仕事に取りかかろう」
火龍はやおら瞳を閉じると、ほのかに体が赤く輝く。
暴走していた時のような荒々しさはなく、優しい色味だ。
まるで、たき火の前にいるみたいな安らぎを得られる。
体を覆う柔らかな光が、波紋のように広がっていく。
「見ろ」
柔らかな赤い光の波紋が通過していくと、黒い霧の瘴気が消滅していく事をベルが確認。
「おお! これで、ここいらの海から瘴気が浄化されていくのか」
「解放されてまだ本調子ではないが、付近の陸地までは浄化できているはずだ。本調子になってから更に浄化に力を入れていこう」
それを聞いて、俺は笑みを湛える。
港町から王都までの街道が瘴気から解放されて、遠回りで危険な森をわざわざ通る事をしなくていい。
王都から派遣されるギルドメンバーのレゾン到着も、早くなりそうだな。
「元々の力を取り戻すのには時を要する。勇者よ、魔王の事は頼むぞ」
おう、頼まれたよ。
お願いだから、最終戦間近になったら、格好良く登場してね。
ベタベタの展開だろうが、こっちはそれがありがたいから。
「それに、すまなかった」
「ん、なにが? 解放のお礼はもういいよ」
「ではなく、業物だったのだろうに。折れたとはいえ、魔王が作りだした瘴気のクリスタルにヒビを入れたのだからな」
「ああ、こっちね」
ヒビを入れたのは刀じゃなく、ベルの炎だろうけども。
とは言え、この刀との付き合いは短いけど、何度も命を救われてるからな。
見回して、目立つ折れた部分を見つけ、拾って、鞘へと入れて、残りのナイフサイズと一緒に納刀。
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