PHASE-114【甲板談話】
「話題を変えますが、町の者たちの柔和な表情からして、随分とご活躍をされたようですね」
「昨日はちゃんと話せませんでしたからね」
宴の後は爆睡だったからな。
――――一通り説明をし、港町の今後に危惧している人達が多いと、最後に付け加えた。
「ふむふむ。心配はいりません」
「頼りになる語気です」
「有り難うございます」
問題は物流だ。この港町の特産である乾物と、人が生きるために必要な塩。
生産が滞っているが、これから再開される事になる。
だが、肝心の物流ルートが、瘴気によって塞がれているのが致命的。
コクリコみたいに瘴気を避けながらとなると、隊商だと時間を要するし、魔王軍に襲われるだろう。
「商圏の基盤としても、港町は不可欠。流通は、まずは王都とレゾンの間で行いましょう。塩に乾物は入り用です。最低限からになりますが、王都からは、実ればすぐに、稗や粟をレゾンへと運びましょう」
塩も不可欠だが、穀物も人間にとっては重要だからね。
「最初は物々交換。更に他の町村との交流も広げていき、いまでは存在している意味が無い貨幣ですが、追々、貨幣を利用しての売買へと変更しましょう」
「お願いします」
この辺は全て先生に丸投げしよう。
俺なんかじゃ役に立てないからな。
「しかし、先生はなぜここに来られたんです?」
「いや~主達のことですから、このくらいの時宜で、この辺りの脅威を排除していると思ってましたので」
――……本当に、この人は怖いよ。
どれだけ先を見通せるんだよ……。
「主達の負担を軽減させるために、私とは別に、このレゾンへと向かって、十人からなるギルドメンバーを派遣しております。瘴気を避けての移動ですので、ここに到着するのは二週間後くらいでしょうね」
その手腕が時として怖いです。
十人の特徴は、戦いでは攻めよりも守戦に特化した者たちで編制。
町の復興のために、壊された家屋の修復や、町の周囲に防壁を築くなどにも精通しているそうだ。
十人の指示の元、レゾンの住人の自衛能力も高めていく。
自警団を結成させて、町の脅威となる敵性に対する抵抗力も強めつつ、一定の治安維持が出来るようになれば、そこにギルドの支所を作り、土地土地でのクエストも増やしていくという流れ。
「俺たちの負担を軽減と言ってくれますけども、まずは俺たちが矢面に立たないと。ですね」
瘴気を避けながらってのは、物流においては致命的。
その為にも、ここいらで囚われている四龍の一柱を救い出さないとな。
「依存はしないけども、こいつに頼らないとですね」
手すりを擦りつつ述べる。
「頼みますよミズーリ殿」
と、先生も真似て手すりを擦る。
「使っていたはずが、使われていた。って、事だけは回避ですね」
「その通りです」
力に溺れないための、再確認だ。
「間違った判断をしたら、私たちが矯正してやります」
「これは情欲をそそる姿で――――」
何とも珍しい。
先生、ベルのバニースーツ姿に、目のやり場に困っているようだ。
ベルは捨て鉢なのか、それとも慣れたのか、マントは俺に返して、この恰好はもう気にしてない。といった感じである。
まったく! けしからんおっぱ――、
「い゛だい!?」
ローキックはもう勘弁だ……。
「このバカが、コレしか用意できないと言いましてね」
「くそぉぉ」
装備解除してまっぱにしてやろうか!
「ん?」
「あ、いや……、何でも無いです……」
蹴りばっかり! その度に俺の外側広筋が悲鳴をあげて、生まれたての子馬みたいになるんだぞ。
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