PHASE-108【復讐するは我にあり】

「撃ち続けてくれ」

 ゲーム使用のミズーリは、俺たちが砲弾を装填しなくても勝手に装填してくれる。

 これも十分なチート能力だよな。しかも弾は無限。

 

 このミズーリは、この世界の制海権におけるミリタリーバランスを完全に崩壊させる存在だな。

 

 後方の海賊たちはさぞ肝を冷やしているだろう――――。


「うん。この島に海賊の塒など無かった」

 双眼鏡から目を離すと、開口一番でゲッコーさんが俺にそう言ってくる。

 途中からは、コクリコは見飽きたようで、どこぞに行ったようだ。

 

 ゲッコーさんの発言に、コクリコが飽きた――。つまりは、砲撃はやめていいということだろう。

 

 やはり砲艦外交が一番手っ取り早いだろうな。

 今後はこの方法を真剣に取り込もうと思う。

 まあ、人質がいなければの話だが――――。




「あの……」


「どうした?」

 なんかコクリコがモジモジしてる。

 どこに行ってたんだろうか。俺を見て頬を紅潮させてる。

 

 なんで? なんで紅潮。

 あれか、自分が唱える魔法なんかよりも、凄いものを召喚できる俺の凄さにようやく気付いて、惚れやすい年頃が、俺に惚れちゃったかな。

 

 どうしよう。俺まで緊張してきたんだけど。


「で、なんだ?」

 男前な声で応対する。


「ベルなんですが」

 ん? ベル? 告白じゃないの? まあ、十三歳の発展途上胸に告白されても断るつもり――――、とは言いきれないか……。

 

 童貞は女の子に告白されたら、簡単に首を縦に振る自信があるからな。

 告白じゃない事に、残念な気持ちになってしまうが、ここはポーカーフェイスですよ。


「ベルがどうした?」

 冷静に聞いてみる。声が震えてなかったかが心配だ。


「私も潮に触れたので、お風呂を借りようとしたんです」


「あったろ?」


「はい、でも、ベルが困ったと言ってまして」

 うん。なんだろうか。

 ――などと思う俺は腹黒い。

 続けて。と、手をコクリコに向ければ、


「服がないとのことで」

 ――うん。


「替えの服などがないか、聞いてきてほしいと言われました」

 ――――うん!


「なんで鼻の穴が膨らんでいるんですか?」

 それはね――――。浪漫が待っているからさ!

 この展開は、俺の中では予想範囲内だったよ。

 

 現在のベルは、シャワー室から出られない。

 まっぱで、ロケットおっぱいが露わな状況。

 

 クラーケンの触手プレイで、軍服がエロエロな感じで粘液まみれだったものな。

 シャワーを浴びた後に、それを着るってのは考えられないものな!

 

 ようやったクラーケン! ようやったぞ!

 おっと、戦国武将みたいな語調が口から漏れそうになったよ。

 

 急なモジモジ姿に、コクリコからの告白イベントが発生すると思っていたが、そんなのは些末なことだ。

 ド本命がピンチなんだから! そう! ピンチなんだ。既成事実をゲットしたわけではないぞ。ピンチだからね!

 

 走れ亨! 音速を超えるかのように、限界を見せてみろ! 早くシャワールームに行くんだよ! 出来る! お前なら!


「――――おいベル。大丈夫か」

 テンションとは恐ろしいものだ。あれだけの全力疾走だったのに、俺は息を弾ませてはいないのだから。


「おい! カーテン越しでも失礼だろう。女性が入っているんだぞ! 少しは距離をとれ! カーテンの前に立つんじゃない」

 お断りだ! 分かってんのか! カーテン越しのシルエットがご褒美すぎるんだよ!


「服がないって話だな」


「どうにかしてくれ。後、離れろ」


「ふむん」


「なぜその場で考え込む。これだけの船だ。服くらいあるだろう」

 それは知らんな。高確率で軍服はあるだろうけども。

 

 だがしかし、こここそ! さんざっぱら俺の剣舞やら猿叫を鼻で笑っていた事への、ペイバックタイムが幕を上げる時だと、俺は思っているわけだ。


 フハハハハハハ――――。

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