PHASE-99【フハハハハ――――。こいつぁ最高だぁ!】
「主砲回頭」
なんて言いつつ、R1トリガーを押せば、船首側三連装砲塔二基。船尾側三連装砲塔一基からなる、九門の長砲身がシーゴーレムへと向く。
奇しくも相手は三体と例えるべきか、三隻と例えるべきか。
――――船と判断し、隻だな。体だと命が有るものと考えてしまう。
とにかく三である。
こちらも三基の砲塔だ。
一隻に対して一基だ。
「照準、シーゴーレム」
L2トリガーを押せば、素晴らしきかなオートエイムが発動。
ディスプレイでは、赤色の円からなる照準が絞り込まれていき、赤色が緑色へと変わる。
ロックオン完了の合図だ。
大きく吸気を行い、
「――――主砲、斉射!!」
ドンドンドン――――!
九度、音が轟けば、体に響く強烈な振動。
砲煙の灰色の中に、赤が混じったような光景が、長砲身先端部から発生すれば――――、
『弾着――――今!』
露天艦橋に移動しているゲッコーさんからの通信が入る。
それを聞いて、俺も肉眼で見るために、状況を確認できる所へと移動する。
――――岩で出来たシーゴーレム三隻は、一度の斉射で他愛なく砕けた。
上半身部分は消え去り、船の原形も留めておらず、海へと沈んでいく。
斉射後、港には大きな波がぶつかる。砲撃の衝撃によって生まれた波だ。
『全弾命中。敵轟沈』
見れば分かるけども、ゲッコーさんからの連絡が入る。
「素晴らしい……。何という力だ。これぞアメリカの力」
ここまで凄いとは……。いや、この中世レベルでミズーリはオーバーテクノロジーだけども。
本当に凄い。
「魔王軍など恐るるに足らず!」
そう! それだよコクリコ! 俺が言いたかったけどな!
これからはミズーリによる砲艦外交が可能だ。
シーゴーレムの投擲攻撃を魔王軍の有する射程として指標とすれば、魔王軍のアウトレンジからやりたい放題だな。
それにミズーリには、
余裕じゃないか。ヘヘヘ――――。
「気にいらん顔だな」
グサリと刺さってくる声音。
口だけでなく、エメラルドグリーンの炯眼でも俺を刺してくる。
最近はこんな侮蔑するような視線は送ってこなかったから、俺は気圧されてしまっている。
「な、なんだよ。これで海賊たちを黙らせることが出来るだろ」
「その通りだ。お前が口にしたように、まだ戦いは終わっていない。余裕を抱くな。足をすくわれるぞ。だが、それ以上に――」
えぇ……。まだお説教が続くのか……。
「なんだその表情は! 自信からくる感情が表れているのではないぞ! お前のは、弱い者が力を得て勘違いをし、愉悦に浸る。愚者の笑みだ」
言ってくれるなベル。
まるで俺が、ゲームでグリッチやチートを使って勘違いしてるプレイヤーみたいじゃないか。
ここはゲームの世界じゃない。
使っていい物なら使うべきだ。
この力があれば、これからの戦いだって楽になる。核の使用は俺も避けるけど、これなら問題ないだろう。
制海権を得ることが出来れば、港町の人達だって安心して漁に出られるんだ。
魔王軍を黙らせて、海洋に人間が進出することだって大事だろ。
なのに、なんでそんな気に入らないって顔なんだよ! だんだんと腹が立ってきた!
「不快感まる出しだな。得心がいかないか? 確かにこの艦は絶大な力を有している。だが、力の恩恵は毒にも変わる。お前は力を行使する。最初は正義のため。だが毒が回り、考えかたに濁りが生じれば、自分の考えに合わない者に対しても力を行使するようになるだろう。魔王に代わり、お前が人々に恐怖を与える。その先に待っているのは、孤独な一人の世界だ」
なんだよ……。俺が悪者になるみたいに言いやがって。
力のコントロールが出来る――と思い込めば、それが驕りになるのか……。
炯眼だったベルの瞳が、見たことない悲しいものに変わってしまって、俺は反論も出来なくなった。
ベル自身の絶大な力が関係しているのかな?
ベルの力を利用しようとする者達もいたって、設定集にも載ってたもんな。
力に驕りそうな人間には、嫌悪感を抱くのかもしれない。
以前にゲッコーさんが、俺が何の感慨も湧かずに命を奪う存在なら、自分たちの敵として現れる。って、言ってたっけ。
ミズーリの力に溺れたら、ゲッコーさんに先生。そして、目の前のベルは俺から離れていくんだろうな……。
ヘヘヘ――――。と、確かに俺は、愉悦の笑みを浮かべていた…………。
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