PHASE-68【四大聖龍】
「おはようございます。主」
「おはようございます。先生」
「城へ行きますよ。馬車を用意してます。本日はゲッコー殿とベル殿もです。お二人は準備がすんでおります」
起きて早々に即行動とは。
ギルド名も決まり、本格始動。
ギルドメンバーの主な仕事は、修復作業と、兵士たちに対しての師事。
で、俺が経過報告を先生から聞かされる。基本は先生が全て対処するので問題なし。
問題はないが、勇者とギルドの会頭としての二足のわらじは結構しんどい。
そんなしんどい俺を呼び出すなんて。また宴か? バロニアを倒してからは連日それだな。
そろそろ浮かれるな! と、言いたいね。
――馬車での移動中にどんな用件なのかと先生に聞いてみても、到着したら分かりますと、内容を教えてくれない。
どうやら宴じゃないようだ。うむ、嫌な予感しかしない…………。
「本日もよく来てくれた。城で寝食をしてくれてもいいんだぞ」
本日も元気はつらつだな。
城住まいも悪くはないだろうけど、豪華絢爛な城になったら考えよう。
現状の質素で温もりのない壁に囲まれて寝るくらいなら、おんぼろ小屋でもかわらないからな。
快活な王様が玉座に座り、なぜかその横には先生が立っている。
唯一の忠誠心MAXな存在が、俺の横ではなく、この国の権力者の横に立っていると、心が寂しくなってしまう……。
「――――勇者よ! 旅立ちの時だ」
は? いきなり何を言っているんだ、この王様は?
元気になったと思ったら、何ともほがらかに笑みを湛えて、わけの分からんことを口にする。
頭の中にお花畑でも出来たかな? また
「とりあえず、主語を言ってもらっていいですかね」
俺、主語がないと、イラッとしちゃうんです。
「主たちにはこの世界が終わる前に、実行していただきたいことがあります」
先生が王様の代弁。
王様は自分が言いたいのか、口をもごもごさせている。が、先生ってば、両手を重ねて王様に一礼。
それに首肯で返した時点で、王様は自分で述べることが出来なくなってしまった。
「私がこの世界に呼ばれてから、様々な事を調べました。この世界には
横文字が完璧ですね。
「――――この四体の聖龍は、現在、魔王の支配下にあるとのことで、これらを救い出してほしいのです」
――――先生が説明する。
火、水、地、風と、ゲームなんかではお馴染みの四大元素。
このドラゴン達を救い出すことで、瘴気が支配する世界を浄化する事が可能になるとのこと。
この辺はまだそうでもないそうだが、各地で反抗していた冒険者たちの情報だと、確実に人々が住めなくなる範囲が広がってきているそうだ。
瘴気を呼吸で体に取り込んでしまえば、毒に犯されて死に至る――――。という事ではないようだ。
初期段階は脱力に見舞われ、動けなくなる。
長期にわたって取り込めば凶暴化し、人間とは思えない怪力を発揮。
魔王軍と共に行動するようになるそうで、箍が外れたように、残忍な行為に至るらしい。
まともな人間がいなくなる事で、人の世は終わるって事だ。
魔法で結界を展開できる冒険者なんかは、瘴気の中で活動し、情報収集を行うという奇特な活動をしているそうだ。
だがマナを維持する精神力にも限界はある。
そのため、敵陣深くまで進行出来ないから、瘴気が充満する地に囚われたドラゴンを救うことは不可能な状況だそうだ。
「そんな中を俺たちが行くの?」
「はい。主たちが侵入するのです」
簡単に言ってくれますよね先生。
しかも主たちがって言い様から察するに、先生は含まれてませんよね。
おかしいですよね。今しがた説明したじゃないですか。人が進行するのが難しい、瘴気が充満した地に、ドラゴンが捕らわれてるって。
俺たちは立派な人間なので、瘴気を吸うと、えらいことになるんじゃないんですかね?
それに、魔王軍だって馬鹿じゃないだろう。
この世界の万象を司るような存在を捕らえているなら、その地に要塞を建設して、難攻不落な拠点を構えているはず。
「お三方。こちらへ」
手招きしてくる先生。
それに合わせて兵士が、ボストンバッグサイズの革袋を持ってくる。
持つ顔は引きつっていた。なんかおっかない物を手にしているのは理解できた。
現に王様をはじめ、家臣団が革袋から距離とる。先生だけが満面の笑顔だ。
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